ハリー・ウィンストン 入神の構築美

FEATURE本誌記事
2019.10.07

 軽量で高い硬度を誇るハリー・ウィンストンが独自に採用する「ザリウム」による「プロジェクト Z」シリーズも13作目へ突入し、さらなる進化を遂げた「プロジェクト Z13」。2019年最新作は、同シリーズ誕生当初からアイコンを演じる手裏剣型モチーフを月に見立てた独創的なムーンフェイズを初めて搭載。オフセンターダイアルを配した力強いデザインに表現されたドラマティックな構築美と、コンプリケーションの精緻なメカニズムに一段と磨きがかかる。

  • プロジェクト Z10

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プロジェクト Z13
ニューヨークのマンハッタン・ブリッジからインスパイアされた「プロジェクト Z10」以来のオープンワークによる構築的な文字盤デザインを継承しながら、シリーズ初のムーンフェイズ表示を搭載。軽快なブルーを多用した鮮烈なカラーリングも初の試みだ。自動巻き(Cal.HW3202)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約68時間。ザリウム(直径42.2mm、厚さ11.27mm)。10気圧防水。世界限定300本。270万円。
奥山栄一:写真 Photographs by Eiichi Okuyama
菅原 茂:文 Text by Shigeru Sugawara

熟達を極める文字盤のアーキテクト

 シリーズとしての一貫したスタイルを保ちながら、一作ごとに斬新なクリエイションを展開するのが「プロジェクト Z」ならではの特色だ。「Z」が意味するのは、宇宙工学で使用されるアルミニウムとジルコニウムによる特殊合金「ザリウム」。このハイテク素材で造形されたパワフルでモダンなケースは、3時位置にブランドのシンボリックなモチーフを配した共通の意匠を踏襲する一方で、ダイアルやコンプリケーションは毎回異なるという凝った手法を用い、諸作のそれぞれが〝シリーズ生産のユニークピース〞と呼ぶにふさわしい逸品に仕上げられている。このような唯一無二の世界を追求するのは、宝石と同様に高級時計もひとつひとつが稀少で特別な価値を持ったものでなくてはならないという、ジュエラーの信念や矜持が背景にあるからだ。それを実際に製作する熟達の時計技術を擁するところがハリー・ウィンストンの最大の強みなのである。

HW オーシャン・レトログラード オートマティック42mm

HW オーシャン・レトログラード オートマティック42mm
構築美を極める斬新な3Dダイアルとサプライズを秘めたレトログラード式の時・分表示が特色の「プロジェクト Z12」のデザインとムーブメントを用い、ゴールド素材で再現した最新作。変身の妙技もまたハリー・ウィンストンならでは。自動巻き(Cal.HW3306)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。直径42.2mm、厚さ11.27mm。10気圧防水。18KWG+バゲットカットダイヤモンド91個。世界限定20本。1280万円。

 2019年発表の「プロジェクト Z13」もこの流れを汲む最新作。多層構造で立体感を強調したフェイスは、12時位置に最近の諸作に共通する放射状のオープンワークを施したオフセンターダイアルを配し、その真下にムーンフェイズ表示、そして約180度のダイナミックな弧を描くレトログラード式の日付表示というまたしても新たな構成。とりわけ注目すべきは、シリーズでは初となるムーンフェイズ表示である。今回はシリーズ第1作からおなじみの手裏剣型モチーフを月に見立てているが、通常の丸ではなく12角形という異例のデザインを採用し、月を載せたディスクがムーンカバーの下を移動しながら月相を表現するという仕組み。さらにこのムーンカバーを支える4本のアームとオフセンターダイアルのチャプターリングの外側にカーボンファイバーを用いるという素材の妙も見逃せない。仕上げの彩りは、ムーンフェイズの背景やレトログラード日付表示、針、外周部などに用いられたブランドのシンボルカラー。美しいブルーの色彩効果によってこの時計のラグジュアリースポーツウォッチとしての個性が引き立ち、加えてアクティブで若々しい印象も生み出す。徹底して計算の行き届いた神業とも言うべき構築美こそが、他では得難い特質なのだとあらためて認識させられる。

HW オーシャン・レトログラード オートマティック42mm
自動巻き(Cal.HW3306)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。直径42.2mm、厚さ11.27mm。10気圧防水。18KRG。485万円。


Contact info: ハリー・ウィンストン クライアントインフォメーション TEL:0120-346-376