「リチウムイオン電池の父」、ノーベル化学賞受賞の吉野彰氏が選ぶ腕時計は?/セレブウォッチ・ハンティング

一流のセレブたちは一体どんな腕時計を選ぶのか? 世界のセレブたちのワンシーンを切り取り紹介する連載コラム「セレブウォッチ・ハンティング」。今回はノーベル化学賞に輝いた、旭化成名誉フェローの吉野彰氏の腕時計をご紹介しよう!

吉野彰

写真:読売新聞/アフロ

吉野彰 氏

 2019年10月9日、リチウムイオン電池の開発に貢献した吉野彰氏らにノーベル化学賞が授与されることが決まった。吉野氏は1948年、大阪府吹田市生まれ。70年に京都大学工学部石油化学科を卒業して72年に修士課程修了後、旭化成工業に入社している。81年からリチウムイオン電池の開発に着手し、85年に成功を収めた。旭化成イオン2次電池事業推進室長などを歴任し、2003年から同社のフェローとなっている。
 2005年からは静岡県富士市にある旭化成の研究所で室長を務めていた。写真はその在勤中の2012月4月に撮られたものだ。
「リチウムイオン電池の父」である吉野氏が、当時愛用していた腕時計をのぞかせていただこう。

アテッサ

 多くの人の予想の通りだろうか、吉野氏の手元にあったのは、リチウムイオン二次電池を使用したシチズン「アテッサ」だ。
 吉野氏が開発したリチウムイオン電池はノートパソコンやスマートフォン、電気自動車まで幅広く使われるほか、軽くてエネルギー効率が高いことからデジタル時計など時計業界でももちろん重宝されている。なおアナログのクォーツ時計などではほぼ1.55Vの安定した電圧を保つ酸化銀電池が使われるが、このリチウムイオン電池は3Vと大きな電圧を出せることから、主にデジタル時計向けというように使い分けられてきた。

 このアテッサは2007年に発表されたワールドタイム表示付き多機能型電波時計だ。日本、アメリカ、ヨーロッパ(ドイツ)の標準電波を受信して、時刻やカレンダーの修正自動をする。そして電気エネルギーを蓄えるために、リチウムイオン二次電池を搭載して光発電を行う時計である。



シチズン「アテッサ」

吉野彰

Ref.U600-T011128。光発電エコ・ドライブ。Ti(直径45mm)。2007年発売。


 リチウムイオン電池が商品化されたのは1991年のことだ。これ以降でシチズン以外の国産腕時計メーカーにおいても、熱発電クォーツウォッチやGPSウォッチなど多機能モデルが多く発表されていることから、腕時計の進化を促した発明のひとつともなったと言えるのだろう。受賞は吉野氏らの努力と情熱のたまものであり、心から敬意を表したい。


(参照/静岡新聞)
高井智世