魅惑的な危険生物をモチーフにした時計5選

FEATUREWatchTime
2021.02.07

危険な生物は常に、不思議な魅力を伴う。今回は、WatchTimeがアメリカで刊行した「DESIGN ISSUE 2019」から、この魅力を放つ素晴らしい時計を5本紹介する。

Originally published on watchtime.com
Text by Maria-Bettina Eich
(2020年1月22日 掲載)

ブルガリ「セルペンティ スピガ」

 手首にうねる官能的な1匹のヘビ。時を告げるために特別な素材をまとって生まれたのが、ブルガリのセルペンティだ。しなやかに曲線を描くセルペンティは、本物の蛇のように手首へ巻き付き、丸みを帯びた三角形の先端は、爬虫類の頭と時計のケース両方の役割を果たしている。
 ブルガリは最初のセルペンティを1940年代に発表した。危険な生物は、多くのウォッチデザイナーを魅了してきている。
「セルペンティ スピガ」は、ブラックセラミックスと18Kピンクゴールド、そしてダイヤモンドの組み合わせだ。

セルペンティ スピガ

ブルガリ「セルペンティ スピガ」。クォーツ。セラミックケース(直径35mm)。30m防水。セラミックブレスレット。128万6200円。2018年発表。(問)ブルガリ ジャパン Tel.03-6362-0100


カルティエ「レヴェラシオン ドュヌ パンテール ウォッチ」

 カルティエを象徴する重要なアイコン、パンテール。パリを拠点とするウォッチ&ジュエリーメゾンのカルティエは、1914年から捕食動物であるヒョウを、繰り返しモチーフとして登場させてきた。
 プレシャスメタルでできた野生のヒョウは、時にそれを購入しようとする人の銀行口座を脅かす可能性がある。また、ヒョウの優雅さが、捕食者としての荒々しいオーラと合わないならば、パンテールはそれほどスリリングな時計とはなり得ない。「レヴェラシオン ドュヌ パンテール ウォッチ」の文字盤は砂時計のような構造で、その魅力を芸術的に解き放つ。文字盤を動かすと、ゴールド製の小さなビーズが移動し、パンテールの顔がゆっくりと現れる。そして、再び幻想のように消えていくのだ。
 ケースは18Kピンクゴールド製でダイヤモンドをあしらい、手巻きキャリバー430MCを内蔵している。

レヴェラシオン ドュヌ パンテール

Photograph by Laziz Hamani © Cartier
カルティエ「レヴェラシオン ドュヌ パンテール ウォッチ」。手巻き(Cal.430MC)。パワーリザーブ約38時間。18KPGケース(直径37mm、厚さ6mm)。日常生活防水。1092万円(税別)。2018年発表。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-301-757


ジャケ・ドロー「プティ・ウール ミニット ライオン」

 ジャケ・ドローのデザイナーの創造力を刺激したネコ科の動物、それはライオンである。細密画でライオンの顔をエナメル文字盤に描き出したのが、プティ・ウール ミニット ライオンだ。ペインターの繊細な技によって、文字盤の限られたスペースに描かれたライオンは、今にも飛び出しそうだ。
 ジャケ・ドローは、世界限定28本の作品のそれぞれをユニークな標本として描き出した職人の才能を称えている。

プティ・ウール ミニット ライオン

ジャケ・ドロー「プティ・ウール ミニット ライオン」。自動巻き(Cal.Jaquet Droz 2653.P)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約68時間。18KRGケース(直径43㎜)。3気圧防水。アリゲーターストラップ。世界限定28本。351万円(税別)。2018年発表。(問)ジャケ・ドロー ブティック銀座 Tel.03-6254-7288


アーティア「ウルフ トゥールビヨン 1/1」

 攻撃的なオオカミの形相を文字盤に刻んだのは、アーティアのウルフ トゥールビヨン 1/1だ。文字盤とベゼルのゴシック調の彫金は、ベルギーの彫金師ブラム・ラモン(Bram Ramon)によるものである。文字盤には花飾りとオオカミの頭が精密に彫られている。中世の雰囲気とバイクのライダースタイルが融合したデザインは、ロックンロールと神話、そして精密な職人技という組み合わせはいかにもアーティアらしい。それを更に強調するのがフライング・トゥールビヨンだ。野生のオオカミは、このスイスの時計をタフな男のための表現力豊かなジュエリーとしている。

ウルフ トゥールビヨン

アーティア「ウルフ トゥールビヨン 1/1」。手巻き(MHC社製)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約100時間。SSケース(直径44mm、厚さ12mm)。50m防水。世界限定1本。2430万円(税別)。2018年発表。(問)グローバルブランディング Tel.03-3666-7871



レペ「アラクノフォビア」

 恐怖と魅惑を感じさせる動物をタイムピースに昇華させたのが、クロックメーカー・レペ1839と共同制作を行った、ジュネーブを拠点に活動するマクシミリアン・ブッサーである。クモの姿をしたアラクノフォビアは、腕時計として着用するには大きすぎるため、置時計または壁掛け時計としてデザインされている。8本の足を持った金属時計の創造物は、その体に大きな時計を内包している。アラクノフォビアは、フランス系アメリカ人アーティストのルイーズ・ブルジョワ(1911年~2010年)が作った、高さ約9メートルもの「ママン」という彫刻に触発された、庇護と脅威を感じさせる作品である。アラクノフォビアは、不気味さと優雅さの間に存在する細い線を体現している。
 アラクノフォビアはブラック・アルミニウム製で、約8日巻きのムーブメントは鍵巻き上げ式である。

アラクノフォビア

レペ「アラクノフォビア」。手巻き(Cal.1853 H)。11石。1万8000振動。パワーリザーブ約8日間。アルミニウム製。直径405mm(脚を平らにした状態)、高さ203mm(脚を伸ばした状態)。277万円。世界限定500点。2015年発表。(問)ムラキ Tel.03-3273-0321