パテック フィリップのオーバーホール内容。サービスを理解しよう

FEATUREその他
2020.10.06

原則として永久修理を掲げているパテック フィリップの時計は、しっかりとしたメンテナンスを行っていれば、半永久的に使い続けることが可能だ。パテック フィリップのオーバーホール内容など、メンテナンスの概要について解説する。


メンテナンスと修理

パテック フィリップでは、1839年の創業以来、手掛けてきた全モデルのメンテナンスと修理に対応している。メンテナンスに関するポイントをチェックしよう。

使用と手入れのポイント

クォーツ時計と機械式時計は、3〜5年ごとのオーバーホールが推奨されている。しかしクォーツ時計の場合、バッテリーの寿命は2~3年であるため、より頻繁な電池交換を意識したい。

手巻き式時計は、毎朝ゼンマイを巻き上げることでムーブメントの円滑な動作が保たれる。

長時間着用しなかったことにより動作が停止した自動巻き時計は、数回リュウズを回して巻き上げれば駆動が再開する。

ほこりや湿気からムーブメントを守る防水性能に関しては、毎年1回の検査がおすすめだ。防水検査は短時間で完了する。

キャリバー215

「カラトラバ 5196」などに搭載されるキャリバー215は、パテック フィリップを代表する手巻きムーブメントのひとつ。パワーリザーブは約44時間だが、同社では毎朝ゼンマイを巻き上げることを推奨している。

オーバーホールの必要性

オーバーホールとは、時計を定期的に分解掃除し、点検や修理などを実施する作業だ。時計の性能をより長く良好な状態に保つためには不可欠である。

オーバーホールは、数多くの機械部品をすべて分解して実施される。人間に例えるなら、定期的な健康診断のようなものだ。

時計内部の状態は、外から見ただけでは詳細に把握できない。そこで、本体を分解し内部の状態をチェックした上で、部品の点検・交換・洗浄・調整などを行う必要がある。

オーバーホールは、クォーツ式と機械式のどちらにも必要なメンテナンスだ。長くても5年ごとには実施して良好な状態を保つように心がけておきたい。

カラトラバ 5227
キャリバー324 S C
例えば「カラトラバ 5227」に搭載される自動巻きキャリバー324 S Cでは日付表示とセンターセコンドが備わり、部品点数は217にも及ぶ。時計を良好なコンディションに保つためにも、3〜5年ごとにムーブメントを分解して検査するオーバーホールは不可欠だ。

全製品が無期限修復対象

パテック フィリップでは、製作された時期にかかわらず、全製品のメンテナンスと修理に対応している。

ただし、1978年以前に製作された時計は、ジュネーブ本社の修復工房で作業が行われることになる。

しかも、パテック フィリップでは古い工作機械や工具などを保存しており、当時の技術やノウハウを用いて過去のムーブメントを修復できるようになっている。

たとえ創業当時に製作された時計であっても、修復後には再びオリジナルとしての価値を取り戻せるだろう。修復には最大で2年の期間を必要とする。


サービスの内容と料金

パテック フィリップのメンテナンスは、主にクイックサービスとフル・メンテナンスのどちらかが実施される。それぞれの概要を解説しよう。

正規販売店で対応 「クイックサービス」

比較的短期間で完了するメンテナンスは、世界に約380店舗ある正規販売店のクイックサービスで対応してもらえる。

クォーツモデルのメンテナンスは、クイックサービスの「バッテリーサービス」が基本となり、電池交換やムーブメントの検査、防水検査などが実施される。

ベルト交換やブレスレットのコマ調整も、クイックサービスで対応可能だ。ただし、交換に必要な部品がない場合は、取り寄せのための期間を要することがある。

その他、磁気帯びチェックや精度チェックも、クイックサービスで対応できるメンテナンスとなっている。

パテック フィリップ ブティック 東京

正規販売店のなかでも直営店と同質のサービスを提供しているのが、世界に37店舗を構える「パテック フィリップ ブティック」だ。東京・青山にある「スフィア パテック フィリップ ブティック 東京」は、ミラノ、フランクフルトに次ぐ世界で3店舗目の「パテック フィリップ ブティック」である。

オーバーホールなら「フル・メンテナンス」

数多くの工程と高度な技術を要するオーバーホールは、「フル・メンテナンス」を選択することにより対応してもらえる。

フル・メンテナンスは、ムーブメントの種類により6~12週間、修復する場合はさらに期間を費やすメンテナンスだ。

フル・メンテナンスでは、ムーブメントを完全に分解し、すべての部品に対して検査・洗浄・注油・調整などの作業が行われる。

ムーブメント以外にも、ケースやシーリングの洗浄、交換、修理などを実施。防水性能を備えた時計の場合は防水検査を行い、希望すればポリッシングにも対応してくれる。

フル・メンテナンスの場合はムーブメントを分解するが、その過程で不具合があれば発見される。分解した構成部品は洗浄機にかけられ、組み立て前に不具合の原因となる塵や油等を除去する。

オーバーホール費用は時計の複雑さによる

フル・メンテナンスによるオーバーホールの費用は、時計の複雑さによって異なる。

過去20年以内に製作された時計で、標準的な作業のみの場合は、パテック フィリップ正規サービスセンターや正規販売店ですぐに概算費用を提示してもらえる。さらに詳細な費用は、時計を預けてから5営業日以内に確認できるようになっている。

オーバーホールでは、一部のムーブメント構成部品と防水パッキンは必ず交換する。指針一式、リュウズ、主ゼンマイ、または電子回路は、必要に応じての交換となる。


保証とサービスセンター

パテック フィリップの時計には保証期間が設けられている。時計の状態を良好に保ち続けるためには、国際保証を有効活用することが重要だ。

国際保証は購入から2年間

パテック フィリップの時計を購入すると、購入日から2年間有効の国際保証書が発行される。

この国際保証は、購入した時計がパテック フィリップの厳格な品質基準により製作、調整、検査されたものであることを証明するものだ。

購入日から2年間は、世界中のパテック フィリップ正規サービスセンターで無償修理サービスを受けられる。

また、国際保証は、通常の使用時に発生した自然故障のみが対象となる。外装に関する作業を実施する場合は、保証期間内でも費用が掛かることがある。

正規サービスセンターは世界45カ所

パテック フィリップの国際保証を受けられる正規サービスセンターは、主要都市を中心に世界の32カ国に45カ所に設けられている。

日本で国際保証を受ける場合は、東京都千代田区にある「パテック フィリップ ジャパン・サービスセンター」または正規販売店に時計を持ち込もう。

それぞれのサービスセンターでは、高い技術を有する時計修理技能士が、厳格な品質基準に準拠する修理やメンテナンスを実施している。


正規のサービスを受けよう

パテック フィリップのオーバーホールは、フル・メンテナンスと呼ばれる内容で実施される。製作された時期にかかわらず、すべての時計に対して作業を行ってもらえる。

できるだけ長く、良好な状態で時計を使い続けるために、オーバーホールをはじめとした正規サービスを定期的に受けるように心がけておきたい。


川部憲 Text by Ken Kawabe