クロノグラフを使わないのはもったいない?魅力や使い方のポイント

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2020.10.20

クロノグラフと言えば、緻密で機械的なデザインと利便性の高い機能が特徴だ。もっとも、モデルによってはダイアルやベゼルに特殊なメーターを配しており、その使用方法までは把握していないこともあるだろう。改めてクロノグラフの使い方を解説し、魅力を掘り下げる。


クロノグラフの基礎知識

クロノグラフは本来的には腕時計が持つ機能のひとつであり、機能から見たモデルの分類名でもある。クロノグラフを理解するために、まずは基本的な機能や魅力について見ていこう。

腕時計のストップウォッチ機能を指す

改めての紹介となるが「クロノグラフ」は、ストップウォッチ機能を兼ね備えている機械式時計のことだ。多くのモデルでは、センターの秒針をクロノグラフ秒針に置き換え、ふたつないしは3つのインダイアルで秒やクロノグラフの積算時間を表示する。

積算計には30分や60分の分積算計と、12時間や24時間の時積算計を採用することが一般的だ。

ケース側面2時方向のスタート/ストップボタンと4時方向のリセットボタンを操作して、経過時間の測定やラップタイムの比較などを行う。

クロノグラフはデザインも魅力

クロノグラフ搭載モデルは、計測機器としての高い機能性だけでなく、メカニカルなデザインも大きな魅力だ。

インダイアルやクロノグラフ秒針といったディテールがダイアルを彩り、リュウズやボタンと相まって「操作する機械」にふさわしい佇まいになっている。

クロノグラフの基本機能は時間計測だが、これを応用して特殊な計測機能を搭載したモデルも存在する。

このタイプのクロノグラフは、ベゼルやダイアルのメーター(目盛り)との組み合わせによる、機能性の高さと複雑なデザインが魅力だ。

タキメーターベゼルを装備したオメガの「スピードマスター」。ダイアルには3時位置に30分積算計、6時位置に12時間積算計、9時位置にスモールセコンドをレイアウト。


クロノグラフの種類

ひと言でクロノグラフと言ってもバリエーションは豊富だ。積算機能とベゼルやダイアルのメーターを組み合わせることで、目的に応じた計算の省略が可能となる。

タキメーターをはじめとする、6種類のメーターの機能を見ていこう。

タキメーターやテレメーター

タキメーター付きクロノグラフのなかでも最もよく知られているのが、1957年に誕生したオメガ「スピードマスター」。写真は2020年に発表された、キャリバー321搭載の「スピードマスター ムーンウォッチ 321 ステンレススティール」。手巻き(Cal.321B)。17石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約55時間。SS(直径39.7mm)。50m防水。151万円(税別)。問オメガお客様センター TEL.03-5952-4400

ギリシャ語「takhus(速い)」に語源を持つ「タキメーター(Tachymeter)」は、500や400から60までの目盛りにより、平均時速や「1時間あたりの仕事量」を簡単に計算できるメーターである。

たとえば、1kmを30秒で走行したなら平均時速は120km/時、ひとつのタスクを30秒で完遂したなら1時間で120回繰り返せるといった具合だ。

「テレメーター」は、光速と音速の差により、落雷の発生地点や砲弾の発射地点までの距離を測定するメーターである。光を認識した時点で計時を始め、音が聞こえた瞬間にストップすると、テレメーター上で距離が読み取れる。

1948年のモデルに着想を得た、ボーム&メルシエの「ケープランド フライバック」。ダイアル中央には2種類の目盛りをレイアウト。内周はタキメーター、外周にはテレメーターをそれぞれ配している。自動巻き(Cal.La Joux-Perret 8147-2)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。18KRG(直径44mm)。50m防水。

デシマルメーターやパーキングメーター

「デシマルメーター」とは、100単位目盛りにより10進法での計測ができるメーターである。計時を60進法から10進法に置き換えることで、単位時間あたりの製造数の計測や、残燃料の計算などを容易にする。

「パーキングメーター」とは、ちょうど60分で一回りするディスクを窓表示することで、駐車時間の計測を容易にするメーターである。ディスクによる表示ではあるが、機能的には60分積算計でもあるので、簡易型のクロノグラフとしても使うことも可能だ。

ルーロー・ブレスレットを復活させた、2020年発表のブライトリング「クロノマット B01 42」。ダイアル外周にはタキメーターを、その内側の見返し部分にはデシマルメーターを配している。写真はクロノグラフ秒針をシルバーに変更した「クロノマット B01 42 ジャパンエディション」。自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径42mm)。200m防水。89万円(税別)。問ブライトリング・ジャパン TEL.03-3436-0011

パルスメーターやアズモメーター

1分間あたりの脈拍数を簡易的に計測できるのが「パルスメーター」。15回や20回などの心拍を数えた時点で計時をストップすると、パルスメーター上で脈拍数が読み取れる。

呼吸を計測することに特化した「アズモメーター」もほぼ同様の機能であり、1分間あたりの呼吸数の計測が行える。いずれも、クラシックなナースウォッチやドクターズウォッチに採用されていた機能の名残である。

2019年に世界限定100本でリリースされた「モンブラン ヘリテイジ パルソグラフ リミテッドエディション 100」。鮮やかなサーモンピンクのダイアルには、心拍数の測定に用いるパルスメーター・スケールがブルーで記されている。手巻き(Cal.MB M13.21)。22石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約55時間。SS(直径40mm)。5気圧防水。販売終了。


クロノグラフの使い方と注意点

クロノグラフはその高機能性から搭載されている部品数が多くなってしまう。また、関連する機構が時分秒針から独立して駆動するモデルも多数存在するので、操作を誤ると故障につながる可能性も。ここでは、クロノグラフ機能の使い方や注意点について見ていこう。

計測はスタートとストップ、そしてリセットが基本

クロノグラフ機能は、2時位置のスタート/ストップと4時位置のリセットボタンで操作する仕様が一般的である。

スタート/ストップボタンをプッシュするとクロノグラフ秒針と積算計が同時に動き始め、再度プッシュすると計時がストップし、リセットボタンを押すとそれぞれの針がゼロ位置に戻る仕様だ。

スタートをプッシュしてからストップせずにリセットすると、針ズレなど故障の原因となる。操作方法はモデルにより異なるが、リセットボタンの扱いには注意しよう。

クロノグラフ機能はケースサイドにあるふたつのプッシュボタンで操作。2時位置がスタート/ストップボタン、4時位置がクロノグラフ針と積算計の針を帰零させるリセットボタンになっている。

まったく使わない場合も故障につながる

クロノグラフ機能を担う部品には潤滑油を差しているが、頻繁に機能を使用すると消耗が激しく、故障のリスクは増大する。

逆に、一切使わない場合は潤滑油が固まりやすく、これも故障の原因となる。腕時計の長寿命のために、機能を必要としなくとも1カ月に1度程度は駆動させよう。


適切に使っていこう

クロノグラフは機能的に複雑かつ高度であるだけでなく、メカニカルなデザインも魅力だ。クロノグラフ機能を搭載しているモデルは多く、そのデザインに惹かれて購入する人も多い。

機能や使用方法を理解した上で、積算計やメーターの組み合わせを選び、寿命を縮めない適切な使用方法を続けていこう。

川部憲 Text by Ken Kawabe


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