パネライCEOのジャンマルク・ポントルエが語る、2020年新作と現在のデジタルビジネス

FEATUREWatchTime
2020.06.16

2020年のウォッチズ&ワンダーズ新作発表のすぐあと、WatchTime編集部はパネライCEOのジャンマルク・ポントルエにインタビューを敢行。世界規模の健康危機によってパネライが受けた影響や今後の展開はもちろんのこと、20年新作でも積極的に投入されたハイテク新素材について、さらにはマイク・ホーンと行なっている環境保全への取り組みについて語った。

Originally published on watchtime.com
Text by Mark Bernardo

パネライCEO ジャンマルク・ポントルエ

ジャンマルク・ポントルエ
1964年にフランス・ナントで生まれる。LVMHグループのジバンシィなどを経て、2000年にモンブランへ入社。商品戦略開発副社長を務めた後、11年10月にジェネラルマネージャーとしてロジェ・デュブイに転籍、翌年2月には同社のCEOに就任した。18年4月1日、アンジェロ・ボナーティの後任としてパネライのCEOに就任。


「Eコマースとデジタルビジネスは非常に堅調」

WatchTime(以下WT):世界規模の健康危機によって、多くの企業が今年の計画の見直しを迫られていると思います。COVID-19の世界的な感染拡大よって、工房やリテール・マーケティングにおいてパネライが受けた影響はどのようなものだったでしょうか?

ジャンマルク・ポントルエ(以下JMP):もちろんCOVID-19は、すべてのブランドとそのチームにとって地震のようなものであったと思います。ほかの危機的状況とは異なり、地域が限定されているわけではなく、世界規模で同時に発生したものでしたし。私はもう若くはありませんが、人生においてこの規模の危機を体験したのは今回が初めてです。他にもSARSや湾岸戦争、鳥インフルエンザ、2008年の経済危機などがありましたが。COVID-19に関してはいつ終息するかが見えていません。最悪の状況は4月から5月であり、ここから少しずつ回復に向かうのではないかと考えています。工房の状況はといえば、スイスでは3月半ばに発令された指示により、閉鎖をしましたが、再開後はまず25%の稼働率でスタートし、毎週少しずつ勤務できる人数をシフト制で増やしています。ブティックについては、5月初めの段階で世界にあるブティックの80%がクローズしている状況であり、もちろんこれはビジネスに大きな影響を与えています。しかし一方、Eコマースとデジタルビジネスは非常に堅調で、革新的な手法を取り、プレスや取引先、顧客とのつながりを維持しています。

WT:では店頭販売は苦戦している一方、Eコマースの方は上昇基調であると?

JMP:パネライのEコマースは既に2019年初めから顕著な上昇基調を示していました。そこではストラップのバリエーションやオンライン限定販売であった「サブマーシブル ベルデ ミリターレ - 42mm」などが展開されていました。アメリカは私たちに一番強い市場で、中国と共にナンバーワンの国です。Eコマースについて言えば、アメリカの多くのブティックがクローズしている中で、市場における存在感を示す助けをしてくれたと思います。

パネライ「サブマーシブル ベルデ ミリターレ - 42mm」PAM01055
2019年にオンライン限定で500本が販売されたモデル。“ミリタリーグリーン”を文字盤とストラップに採用する。実はこのモデルがサブマーシブルとしては初となるグリーン文字盤の採用だった。自動巻き(Cal.OPXXXIV)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SS(直径42mm)。30気圧防水。世界限定500本。96万円(税別)。

ルミノール70周年の節目に挑戦した70年保証

WT:コレクションに話を移しましょう。今年ルミノールは70周年を迎え、これを記念したコレクションのテーマにはふたつの要素が見えてきています。ひとつは近年パネライのホールマークともなっている新しいハイテク素材、もうひとつは夜光で、これはルミノールの歴史すべてに関わるとも言えます。このような戦略をとるに至った経緯とは?

JMP:19年にサブマーシブルのテコ入れを行った後、ウォッチズ&ワンダーズ2020のプランを練っていた時、ブランドのアイコンである44mm径の「ルミノール マリーナ」(PAM01312)に脚光を浴びせたいと考えました。パネライファンなら誰もが知っているモデルです。パネライのことを考えるとき必ず浮かんでくるモデルで、どの国でもナンバーワンの存在ですが、今までステンレススティール以外の素材を採用してきませんでした。そこでこのモデルの展開を決め、さまざまな素材へ派生させたのです。ひとつにはルナ・ロッサなどで採用したカーボテックがあり、もうひとつにはプリマ・バレリーナ・アッソルータとのパートナーシップから生まれたフィブラテックがありました。サイズや外観を変えることなくブランドのアイコンモデルに再度注力し、素材の刷新を図ったのです。他のハイライトとして、70年保証を行うようになったことや新世代夜行塗料、「スーパールミノバX1」などが挙げられます。

パネライ「ルミノール マリーナ フィブラテック – 44MM
自動巻き(Cal.P.9010)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。フィブラテック(直径44mm、厚さ15.65mm)。300m防水。世界限定270本。176万円(税別)。

WT:夜光といえば、今年のパネライでは文字盤にグリーンに紐づいたパントーンの番号が見受けられましたが?

JMP:パネライがドレッシーなスポーツカジュアルブランドとなる前、主なビジネスはイタリア海軍への装備の供給でした。夜光の役割は現実的な意味を持っていて、10mの水深に潜るダイバーが時計の時間を確認できるというものでした。今まで使っていた塗料は、パネライのマリーナではパントーン802Cと呼ばれる同じカラーのもので、何百ものグリーンのバリエーションはありますが、このカラーがブランドに結びついたものなのです。そして夜光についてはパネライ自身、暗闇でも視認性を誇るという特徴を確立してきました。

パネライの特徴的な夜光のグリーンはパントーン802Cである。

新素材のチタニウムDMLSとフィブラテックとは

WT:新しいルミノールでは、4つの素材が展開されています。カーボテック、ゴールドテック、チタニウムDMLS、そしてフィブラテックです。そこから消費者がひとつ素材を選ぼうと思ったときの参考として、各素材の相違点と相似点を教えていただけますか?

JMP:チタニウムDMLSから始めましょう。チタニウムはもちろん素材の名前、DMLSは使用されている3Dプリント技術で、4年前ハイエンドトゥールビヨンモデルのために採用されたものです。今回はもう少し控えめなモデルで、「大衆化」を図りたいと考えたのです。ゴールドテックはパネライのために作られたゴールド合金で、他のモデルに使われている18Kローズゴールドに比べ丈夫で、色が退色しません。この素材がPAM01312では一番クラシカルでドレッシーなバージョンと言えるでしょう。最後にフィブラテックですが、ふたつのモダンなメタルを使用したバイ・メタルのアプローチはパネライでは珍しいと思います。パネライで10年にわたり使われ続けてきたカーボテックを、玄武岩をベースとした新しい素材フィブラテックと組み合わせています。

WT:どのようにして火山に由来する素材をベースとしたフィブラテックを採用することになったのですか?

JMP:パネライのミッションのひとつは研究開発です。大学や企業と連携していますが、これが時計業界では必須というわけではありません。こういった機関は航空宇宙産業やスーパーカー、スーパーヨット、医療関係と仕事をしており、どれもが高いパフォーマンス、丈夫な構造、軽量で高出力などの特徴を持っています。パネライでは、素材の組み合わせとして、他のどの時計も採用していないものを目指しました。多くのブランドがステンレススティールとゴールドの選択肢を提供していますが、カーボテックとフィブラテックの組み合わせは、パネライ独自のものです。そしてその魅力はルミノール マリーナが持つクラシカルな面と、珍しい素材のもつモダンな側面の組み合わせからくると思います。

WT:70周年記念トリオとして、パネライは非常に珍しいアプローチ取りました。夜光素材をリュウズプロテクターとベゼル、文字盤そしてストラップにまで採用するというものです。これらは他のパネライモデルにも波及していくのでしょうか?

JMP:記念すべき年である今年は、夜光というものをインデックス以外のもので注目させたいと考えています。が同時に、今までの8年間保証にさらに62年を加えた夜光保証をもって、いかにそれに真剣に取り組んでいるかをお見せしたいのです。今回のモデルで、暗闇での夜光は2090年までの保証となっています! 将来のことについてお話しますと、このプロセスは現在のところ今年の新作にのみ適用されていますが、このほかにもさまざまなアイデアとテーマを来年にもご用意しています。20年に予定されていた開発の3分の1が、来年に移行されていますから。

マイク・ホーンと新作の関わり

パネライ「サブマーシブル エコ パンゲア トゥールビヨン GMT - 50MM マイク・ホーン エディション」
手巻き(Cal.P.2005/T)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約144時間。サテンエコ パンゲア スティール(直径50mm、厚さ20.77mm)。300m防水。パネライ ブティック世界限定5本。2050万円(税別)。

WT:「サブマーシブル エコ パンゲア トゥールビヨン GMT - 50MM マイク・ホーン エディション」において、サブマーシブルモデルで初めてトゥールビヨンを採用しています。その上、「サテンエコ パンゲア スティール」と呼ばれる素材を使用しています。この素材がどのようなものなのかと、アンバサダーである北極探検家マイク・ホーンがどのように5本の限定モデルに関わっているか教えて頂けますか?

JMP:このモデルは時計自身がひとつのストーリーです。1年半前にマイクと会ったとき、彼は、パネライがメルセデスと一緒にスポンサーをしている自身のボート、パンゲアの一部を持参していた。捨ててもいいし、時計作りに生かしてもいいと言っていたのです。その時は、その素材を使って時計を作ることができるのか分かりませんでした。工房に持ち帰り、時計師たちになにかやってみるよう伝えたのです。5本しか作られなかったのは、金属部分の分量の制限からでした。持ち込まれたのがもっと大きいサイズであれば10本の時計が作れたかもしれません。もっと小さいサイズであれば、1本か2本だったかもしれませんね。ただその希少性が、サブマーシブルにトゥールビヨンを採用するまたとない機会だと感じさせたのです。他のアンバサダー同様、マイクは地球規模で直面している汚染の加速に対し、警鐘を鳴らしています。たとえ小さなレベルでも環境を守ることは私たちの使命だと考えており、ブランドとの結びつきが強いという点で言えば、それは海です。リサイクルは私たちの考え方に非常に近しく、マイクの持ち込んだボートを時計のケースにリサイクルするだけでなく、パッケージも100%リサイクルされた素材で作られたものとしました。そして付属するストラップの1本もリサイクルされたプラスティックボトルから作られたものとなったのです。ウォッチズ&ワンダーズ2021では、100%再生された素材で作られた時計を発表する予定です。

WT:世界規模の感染拡大の影響が明らかになった後、これまでに新しい発表のすべてを2021年へ延期するという話し合いはもたれましたか? それともパネライはこの困難な状況下でも、顧客はそこにいると考えていましたか?

JMP:私はできるだけ楽観的に物事を考えようとしていて、現状は厳しく、正常な状況に戻るにはまだしばらく時間がかかるようであっても、高級消費財業界は感情に訴え、ストーリーを語り、明るい未来を信じる理由を与えるものだと思っています。誰でも何かを祝う理由を探していると思うし、特に外出が自粛されている状況ではそのような機会は更に幸せを感じる機会になると思います。それがレストランでのディナーでも、1杯のシャンパンでも、新しい時計であってもですが。

Contact info: オフィチーネ パネライ Tel.0120-18-7110


パネライ2020年の新作は(たぶん)軽さが売り!「ルミノール マリーナ DMLS– 44 MM」


https://www.webchronos.net/features/45309/
2020年 パネライの新作時計


https://www.webchronos.net/2020-new-watches/44695/
【スペックTEST】パネライ/ ルミノール サブマーシブル1950 アマグネティック スリーデイズ オートマティック チタニオ - 47mm


https://www.webchronos.net/specification/22892/