ジンの時計が追求する高度な技術力。プロも愛用のパイロットウォッチ

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2021.04.11

ドイツ生まれのジンは数々の特殊技術を備え、極限状況下での信頼性を求めるプロフェッショナルに愛用されている。合理的な設計から生まれる機能美も魅力的な、ドイツ時計らしいクラフトマンシップにあふれたパイロットウォッチを体験しよう。

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パイロットウォッチ ジン

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ジンの腕時計には計測機器然としたクロノグラフやダイバーズウォッチが多く、過酷な状況下でも問題なく動作する信頼性が魅力だ。パイロットウォッチから始まった、ドイツ有数の時計メーカーの概要と歴史を見ていこう。

ドイツが誇る時計メーカー

「ジン(ジン特殊時計会社)」は、視認性と機能性を最重視したプロユースの時計作りを行う、ドイツを代表する実用時計メーカーである。

その時計は数々の特殊なテクノロジーを搭載し、砂漠、熱帯雨林、北極海など、あらゆる環境で実用できる抜群の信頼性を誇る。

一部モデルはドイツの税関局特殊部隊、レスキュー部隊、GSG-9(ドイツ連邦警察局対テロ特殊部隊)などに正式採用され、さらに、パイロットやダイバーなど過酷な状況下で活動するプロフェッショナルからの信頼も厚い。

元パイロットによって創設された

1961年、ドイツ空軍パイロットで飛行教官であったヘルムート・ジンは、ドイツ・フランクフルトにてパイロットウォッチブランド、ジンを創設した。

ジンの視認性や機能性を最重要視した時計はパイロットたちから歓迎され、80年にはコックピット・クロックと腕時計の生産数比は4対1となった。

85年にはドイツ人物理学者で宇宙飛行士のラインハルト・フラー氏がジンの機械式時計を宇宙飛行に携行し、世界で初めて無重力空間での自動巻き時計の作動が証明された。92年にはロシアの宇宙計画MIR92、93年にはスペースシャトル・コロンビアにてジンの時計が使用される。

94年にはIWCの取締役も務めたエンジニアであるローター・シュミット氏が経営を引き継ぎ、数々の「ジン・テクノロジー」の発表を重ね、特殊部隊や極地ダイバーなどに使用される腕時計をリリースしていく。


ジンの時計の特徴

ジンの腕時計は計測機器としての信頼性を追求した機能美が魅力だ。あらゆる過酷な状況で動作する高度な機能性を備えるため、腕時計の視認性が命に関わるほどの状況下でも厚い信頼を寄せられている。

シンプルで無駄のないデザイン

ジンの腕時計は視認性と機能性を最重視した“使うためだけの時計”である。着用するプロフェッショナルが危機的な状況においても判断を誤らない、徹底的にヒューマンエラーを排除したデザインだ。

ゴージャスな装飾やエレガントな曲線美などとは無縁であり、強度のために異様な大型化を進めることもない。高度な独自技術に裏付けられたデザインは非常に合理的で、一般ユーザー層にも馴染む機能美を生む。

そのデザイン性は国際的に高く評価され、世界最大級のデザイン賞である「レッド・ドット・デザイン賞」を2019〜20年に2年連続受賞しているほどだ。

プロも愛用する実用性

857

2014年、アラン・ユースタスが挑戦した成層圏からのダイブに着用された時計と同じ「857」。

ジンの腕時計は非常に高度な機能性と耐久性を備えている。2005年以来、船舶・潜水器具の認定機関も兼ねる世界最大級の船級・認証機関DNV GL(旧ゲルマニア・ロイド)による耐圧性能の認定を受けている。DNV GLの認定書が発行された腕時計メーカーは、ジンが世界初だ。

さらに2012年には「TESTAF(パイロットウォッチのための技術基準)」、16年には「DIN(ドイツ工業規格)8330パイロットウォッチ」という、ふたつの技術標準の策定に携わっている。

2014年には、アラン・ユースタスによる高度4万1419mの成層圏からのスカイダイビングに、ジンの「857」が着用された。時速約1323kmのスピードや気温-77℃という過酷な環境に耐えた実機は、ワシントンD.C.の国立航空宇宙博物館に展示された経歴さえある。

このように、抜群のタフネスを誇るからこそ、ジンの腕時計は極限状況下で活動する世界各国のプロフェッショナルに愛用されるのだ。


ジンの特殊技術

ジンは自社ムーブメントを製造しないが、ケースやムーブメントを保護する技術に関しては超一流である。ジンを象徴する8つのジン・テクノロジーのうち、代表的な4つを紹介しよう。

5000mの防水を可能にする ハイドロ

ハイドロ・システム

ジンの特殊なオイルを封入することで、ダイビング時の外気圧から時計ケースを守る。

「ハイドロ」とは、ケース内部に特殊なオイルを封入することで耐圧性能を飛躍的に高める、腕時計としては異例のアプローチによる耐圧技術だ。

これは外気圧に対して同じ内部圧で押し返す「パスカルの原理」の応用であり、ケース内部の気体の収縮率を海水や淡水とほぼ一致させるのだ。

ハイドロ・システムを搭載したダイバーズウォッチは、5000m防水という驚異的な防水性能を実現しながら、ケースの過剰な大型化を必要としない。

さらに、封入するオイルはガラスとほぼ同一の屈折率を持つため、視野角の広い良好な視認性を保つ効果も持つ。

湿気から守る Arドライテクノロジー

ドライカプセル

ジン独自のドライカプセル内には特殊乾燥剤が充墳されており、吸収した水分量が増えるにつれてネジ頭部の色が淡いライトブルーからネイビーブルーへ変化する。

「Arドライテクノロジー」とは、ドライカプセル、EDR(超拡散削減)パッキン、プロテクトガスを組み合わせることで、ムーブメント内部をほぼ無水状態にし、時計の精度を保つジンの独自技術だ。

ムーブメント内部の水蒸気はドライカプセルで吸収され、ドライカプセルの飽和度の増加に伴って、特殊乾燥剤の色が濃くなっていく。EDRパッキンは、従来のパッキンよりも最大25%水分浸透を抑える役割を果たす。

ケース内の水蒸気や静電気は潤滑オイルを劣化させ、精度に悪影響を及ぼすが、極めて安定したプロテクトガスを充填させることで放電腐食を防いでいる。

低温でも高温でも使える 特殊潤滑オイル

ジン特殊オイル

通常の潤滑オイルは-25℃で粘性が高くなり、精度を維持することが困難になるが、ジンの特殊オイルは極寒から灼熱まで耐える。

「ジン特殊オイル66-228」とは、-66℃まで粘性を維持し、228℃まで蒸発しない潤滑オイルだ。この潤滑オイルを用いたムーブメントは、-45℃〜80℃の温度範囲でDINの基準を満たす刻時精度を維持する。

ジンの腕時計が、極寒の北極海でも灼熱の砂漠でも信頼性を保証するために必須の技術である。

傷つきにくい テギメント加工

「テギメント加工」は浸炭焼入れの一種で、窒素を用いた浸炭によって金属表層の炭素量を多くし、焼入れによって表面硬化を行う加工方法である。

内部の靭性は残したまま表面硬度をセラミックス並みの1500ビッカースに仕上げ、耐摩耗性や耐疲労性を高める。

ジンでは、テギメント加工をPVDコーティングの基盤としても用いており、コーティングの剥離を低減させている。