パテック フィリップを代表するカラトラバに迫る。特徴や選び方解説

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2021.04.08

「パテック フィリップ」のフラッグシップコレクション「カラトラバ」は、現代的な腕時計の原点と称される傑作である。Ref.96に始まる色あせないスタイルは、現在も人々を魅了し続けているのだ。その魅力と注目モデルを紹介しよう。

カラトラバ


世界最高峰時計ブランド、パテック フィリップ

ドレスウォッチの最高峰、そして腕時計デザインの模範として名高いカラトラバは、世界最高峰時計ブランドとして知られるパテック フィリップのフラッグシップコレクションだ。

パテック フィリップの価値は語り尽くせないほどだが、ここではマニュファクチュールの芸術的側面と、Ref.96をルーツとするカラトラバの誕生を見ていこう。

ジュネーブで1839年創業のパテック フィリップ

パテック フィリップ

1839年、スイス時計製造の中心地のひとつ、ジュネーブにおいて、パテック フィリップは創業された。当時はカギによってゼンマイを巻き上げていたが、1845年にリュウズ巻き上げ・時刻合わせ式時計の技術特許を取得。1851年のロンドン万国博覧会では、イギリスのヴィクトリア女王から称賛を受けている。

以降、各国の王侯貴族を顧客リストに加えていき、超高級な美術品と呼べるタイムピースを製作していく。

部品製造から研磨・装飾まで徹底して最高品質を追求する同社は、創業以来製作されたすべてのタイムピースを修理すると約束しており、愛好家たちの絶大な信頼を得ている。

定番モデルのひとつ カラトラバ

Ref.96

1932年に発表された「Ref.96」が、カラトラバの祖とされる。

パテック フィリップは1929年に始まった世界恐慌の影響下で経営難に陥るが、32年に文字盤製造業者のスターン家が同社を買収する。

その同年に発表されたのが「Ref.96」である。それ以前は腕時計の黎明期であり、懐中時計のデザインを流用したモデルが主流であったが、Ref.96のケースとラグを一体化させたエレガントなデザインは“腕時計の黄金比”を決定付けた。

Ref.96に連なるモデルは後年、「カラトラバ」コレクションに統合される。これは同社のロゴである「カラトラバ十字」に由来する名だ。


ラウンド型腕時計の正統派 カラトラバの特徴

携帯式時計が懐中時計から腕時計へと切り替わる過渡期に、そのデザインの模範を示したのがRef.96であり、その系譜はカラトラバの中に脈々と受け継がれている。

現在の腕時計のスタイルを形作ったカラトラバのデザインと、パテック フィリップのロゴであるカラトラバ十字との関係性を見ていこう。

シンプルで洗練されたデザイン

Ref.96

カラトラバの初作Ref.96は、フラットなベゼルを持つラウンドケースに視認性が高い立体的なドフィーヌ針やバーインデックスなど、エレガンスと実用性を両立する特徴を備えていた。

ダイアル上には無駄な要素がなく、ミドルケースに溶接され、一体化したラグは流麗でありながら十分な強度を備える。ケースサイズに対して太いレザーストラップも特徴的だ。

Ref.96の完成されたスタイルが生む不変の美しさと気品は、現在の「カラトラバ」コレクションに共通する特徴である。カラトラバがドレスウォッチの最高峰と評価される理由はここにある。

歴史ある十字のエンブレム

カラトラバ十字

パテック フィリップの腕時計には、リュウズやローターにカラトラバ十字が刻印される。1887年に商標登録されたこのロゴは、パテック フィリップの価値や企業理念の象徴だ。

12世紀にスペインで設立された「カラトラバ騎士団」は、4つの百合の花(もしくは剣とも言われる)を紋章に用いていた。この紋章が意味する勇気・礼節・独立に加え、紋章の完璧な均衡が生む美しさは、パテック フィリップの追求する価値と一致するのだ。

この紋章をアレンジして生まれたのがカラトラバ十字であり、カラトラバ十字の本質を最もよく表現するのがRef.96をルーツとする「カラトラバ」コレクションだ。


現行12モデル カラトラバの選び方

カラトラバはRef.96をルーツとするが、他のラウンドケースモデルもカラトラバに統合され、並行進化してきた歴史がある。現行モデルは、メンズ・レディス併せて12種。目的に合った1本を見極めるために、比較のポイントを見ていこう。

ムーブメントは手巻きか自動巻き

Cal.324 S C

自動巻きムーブメントCal.324 S C。

カラトラバの現行モデルに搭載されるムーブメントは手巻きか自動巻きで、2針モデルを基本とする。

キャリバー名に含まれるPSはスモールセコンド、Cはシンプルカレンダー(デイト表示)、Sはセンターセコンドを搭載するという意味だ。

手巻きであればCal.215かCal.215 PSを搭載する。前者はシンプルな2針モデルで、後者は6時位置にスモールセコンドを配する。手巻きモデルの利点は、ケース厚8mmを下回るほどの薄さだ。

自動巻きであればCal.324 S CかCal.240を搭載する。Cal.324 S C搭載モデルは3時位置にデイト表示があるセンターセコンドの3針モデルだ。

デザインを決定付けるラグ

現行12モデルのうち大半のモデルは、Ref.96で採用したミドルケースと一体型のラグを採用し、なめらかな曲線を描くタイプと、ストレートなタイプに大別できる。現行モデルにおいて後者は、レディスモデルに採用されている。

ベゼルのデザインにも違いがある

カラトラバはベゼルのデザインもさまざまだ。現行モデルではフラットベゼルか曲面仕上げのベゼル、またはダイヤモンドを配したベゼルである。

フラットベゼルは、Ref.96で採用された伝統的なスタイルだ。また、メンズの曲面仕上げのタイプはステップベゼルを採用している。

ケースサイズと素材にも注目

ケース径で見れば、4000番台と7000番台のモデルが37mm未満で、5000番台が37mm以上となっている。前者はレディスモデル、後者はメンズモデルと考えればよいが、ともに小ぶりなサイズ感が特徴だ。

特に、Ref.7200シリーズではケース径34.6mmと、より小ぶりである。

また、型番末尾のアルファベットはケース素材を表す。Rはローズゴールド、Gはホワイトゴールド、Jはイエローゴールド、Pはプラチナだ。ちなみに、Aはステンレススティールを表すが、現行のカラトラバには見られない。