復活した「キングセイコー “KSK”」、その全貌を明らかにする

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2020.12.10

セイコーは、2代目キングセイコー “KSK”のデザイン復刻版である「セイコー創業140周年記念限定モデル キングセイコー “KSK” 復刻デザイン」を、2021年1月22日にリリースすることを発表した。なお21年は、キングセイコーの誕生60周年に当たる節目の年である。

キングセイコー“KSK”

広田雅将(クロノス日本版):文
Text by Masayuki Hirota(Chronos-Japan)
(2020年12月10日掲載記事)

デザインのソースは2代目キングセイコー “KSK”

 1961年に発表されたキングセイコーは、グランドセイコーに次ぐセイコーの高級機だった。製造を担当したのは第二精工舎(現セイコーウオッチ)。グランドセイコーのような歩度証明書は付いていなかったが、精度を保証する検査証明書が付属するほか、いち早くステンレススティールケースを採用していた。搭載するのは、「クロノス」を改良した手巻きムーブメント。グランドセイコーが採用したCal.3180より小径だったが、大径のテンプと、極めて先進的な両持ちのテンプ受けを採用していた。

1965年に発表されたオリジナルのキングセイコー“KSK”。後にカレンダー付きの“KSSK”、クロノメーターの”KSCM”などが追加された。手巻き(後期型はCal.44A)。25石。1万8000振動/時。SS(直径36.7mm、厚さ10.9mm)。5気圧防水(当時)。参考商品。

 このモデルは、64年の12月に秒針規制付きに進化。翌65年には日付表示が追加された。セイコーが2021年にデザイン復刻するのが、この2代目キングセイコーこと“KSK”である。今回のデザイン復刻にあたりムーブメントは手巻きのCal.44系から、自動巻きのCal.6L35に変更。併せてケースサイズも36.7mmから38.1mmに拡大された。

キングセイコー“KSK”

2代目のキングセイコーをほぼ忠実に再現した「セイコー創業140周年記念限定モデル キングセイコー “KSK” 復刻デザイン」。もっとも、今のセイコーらしく、外装の質感は大きく向上した。Ref.SDKA001。自動巻き(Cal.6L35)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SS(直径38.1mm、厚さ11.4mm)。5気圧防水。世界限定3000本。セイコーグローバルブランドコアショップ専⽤モデル。35万円(税別)。2021年1月22日発売予定。


徹底して復古調のデザイン

 近年、復刻版で大きな成功を収めてきたセイコー。「新しい」キングセイコーも例外ではなく、そのデザインは2代目モデルをほぼ忠実に継承したものだ。ケース形状だけでなく、尾錠やリュウズ、裏蓋のクレストマークもオリジナルにほぼ同じである。

 もっとも、このモデルは今風にリファインされている。風防はプラスティックから内面無反射コーティングのボックス型サファイアクリスタルに変更された。セイコーはボックス型風防の仕立てが大変にうまい会社で、おそらく本作の風防も、立体感と視認性を両立したものだろう。

 また、ストラップにはアリゲーターが採用されている。あえてステッチのないフランス仕立てのストラップは、明らかにこの復刻版を高級に見せる要素だ。なお、写真は竹斑だが、生産版には丸斑も採用されるとのこと。

キングセイコー“KSK”

魅力的なディテール。(左)オリジナルの造形を忠実に再現したバックル、(右)ギザギザのライターカットを採用した12時位置のインデックス。文字盤に施された強い筋目と厚いクリアラッカーにも注目。(下)セイコーの得意とする立体的なボックス型サファイアクリスタル風防。あえて角を立たせることで、立体感と視認性を両立させている。

キングセイコー“KSK”

 面白いのは文字盤に吹かれたラッカーだ。画像を見た限りで言うと、文字盤を覆うクリアラッカーは、今のセイコーの高級機らしく、明らかに厚い。その証拠に、プリントされたロゴは文字盤から浮いて見える。しかし、その目指すところはグランドセイコーとは異なっているようだ。近年、グランドセイコーは文字盤の光り方を抑えようとしているが、写真で見るキングセイコーの文字盤は、かなりシャイニーである。1960年代のセイコーが好んだ仕上げを、本作はあえて採用したのではないか。

 なお、セイコーはアナウンスしていないが、特徴的な太いラグの上面と斜面にはお家芸であるザラツ研磨が施されている(セイコーウオッチに確認済み)。

キングセイコー“KSK”

ねじ込み式の裏蓋には、キングセイコーのアイコンとも言えるクレストマークがあしらわれる。オリジナル同様の太くて長いラグを持つが、時計の全長は44.5mmしかない。


ついに表舞台に出たキャリバー6L35

 先述した通り、新しいKSKは手巻きではなく自動巻きのCal.6L35を載せている。プレザージュの採用するCal.6R系と名前は似ているが、これはまったくの別物だ。そもそものベースとなったのは、ETA2892A2の互換機として開発されたCal.4L系。自動巻き機構にラチェット式のマジックレバーではなく、ETA風のリバーサーを採用することで、このムーブメントは4mmを切る薄さを実現していた。

 なお、スイスのエボーシュメーカーであるソプロードは、Cal.4L系の設計を採用した自動巻きムーブメントを、Cal.A10(アルタナス10)という名称でリリースした。もっとも、旧セイコーインスツル製のムーブメントとしては珍しく、Cal.4L系は練られたムーブメントとは言いがたかった。使用する環境によっては、主ゼンマイが十分巻き上がらなかったのである。事実、Cal.4L系の設計をそっくり転用したソプロードのCal.A10は、後に自動巻き機構をまったく改良したCal.A10-2(後のCal.M100)に置き換えられた。

キングセイコー“KSK”

新しい“KSK”のエンジンがCal.6L35である。自動巻き機構に両方向巻き上げ式のリバーサーを採用することで、セイコーの機械式自動巻きムーブメントとしては随一の薄さを実現した。直径25.6mm、厚さ3.69mm。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。

 このCal.4L系を改良したのが、2018年のCal.6L系である。基本的なスペックは変わっていないが、信頼性と巻き上げ効率が大きく改善されたほか、パワーリザーブが約42時間から約45時間へとわずかに延びている。公式の静態精度は日差+15秒~-10秒だが、筆者が触った限りで言うと、実際はもっと良い。新しいCal.6L系は、ETAの代替機以上のスペックを持つムーブメントと言えるだろう。ただ個人的な好みを言うと、パワーリザーブはもう少し長い方が望ましい。

 この薄い自動巻きを採用することで、新しい“KSK”は、ボックス型のサファイアクリスタル風防と分厚いねじ込み式の裏蓋を持つにもかかわらず、ケース厚を11.4mmに留めた。これは、手巻きムーブメントを載せたオリジナルより0.5mm厚いだけである。ビジネスウォッチとして使える薄さは本作の大きな魅力だろう。


手の届く価格帯で、最も良質な機械式時計のひとつ

 現在のセイコーらしい凝った外装と、普段使いに適した薄いケースを持つ新しいキングセイコー。優れた仕上げを考えれば、価格も妥当ではないか。写真を見た限りで言うと、本作は手の届く価格帯で、最も良質な機械式時計のひとつ、と言えるだろう。世界限定3000本が多いのか少ないのかは判断できないが、興味のある方は早めの予約を強くお勧めしたい。


Contact info: セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012


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