コックピットよりもファーストクラスのラウンジに適したIWC「ビッグ・パイロット・ウォッチ 43」

FEATUREWatchTime
2021.06.15

2002年にミリタリースタイルの高級腕時計としてリローンチされて以来、IWCのアイコン的存在である「ビッグ・パイロット・ウォッチ」は、クロノグラフから永久カレンダーまでさまざまな複雑機構を搭載した数多くのモデルを生み出してきた。それらは“ビッグ”という名称が表すように、主に直径46mmの大径ケースが採用され、時には1940年代のオリジナルモデルのケース直径55mmを再現したチタン製モデルが手掛けられることもあった。しかしながら2021年に発表されたのは、パワーリザーブや日付窓、サブダイアルなどの一切を省き、歴史に忠実な外観を保ちながら大幅なサイズダウンが図られた「ビッグ・パイロット・ウォッチ 43」である。

ビッグ・パイロット・ウォッチ 43

ブラックダイアルとカーフレザーストラップモデルの「ビッグ・パイロット・ウォッチ 43」。自動巻き(Cal.82100)。22石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径43mm、厚さ13.6mm)。100m防水。カーフレザーストラップ。106万1500円(税込み)。
Originally published on watchtime.com
Text by Mark Bernardo
2021年6月15日掲載記事

直径43mmケースに「ビッグ・パイロット・ウォッチ」の歴史と魅力を凝縮

 IWCのクリエイティブ・ディレクター、クリスチャン・クヌープは語る。「『ビッグ・パイロット・ウォッチ』のさまざまなバージョンを発表してきた私たちは、このモデルが象徴的な存在であることを認識していました。私たちIWCと、IWCの愛好家のコミュニティーは、1940年代のオリジナルデザインの極めて純粋なデザインに回帰し、シンプルかつ現代的な3針時計を作ることに興味を持ち、長期的に議論を重ねてきました」。

ビッグ・パイロット・ウォッチ 43

ビッグ・パイロット・ウォッチのアイデンティティーとして継承されている大型のリュウズ。

ビッグ・パイロット・ウォッチ 43

つまみやすく、操作性の高いオニオンシェイプのリュウズ。

 クヌープと彼のチームは、ケースとリュウズのプロポーションや文字盤の表記、針の形状などの細部を慎重に見直すことからビッグ・パイロット・ウォッチの小型化へのプロジェクトを開始した。直径42mmから44mmのサイズの間で、3Dプリントされたものや、よりリアルなメタル製のものなど、数多くのケースのプロトタイプを開発し、検討を重ねていった。文字盤のディテールを正確に表現することは、デザイナーにとって最大の挑戦であった。線の太さ、フォント、仕上げなど、何種類もの組み合わせが試された。「試作品の数は尋常ではありませんでした。シンプルで簡単そうに見えるものでも、実現するのは非常に難しいものなのです」と、クヌープは語っている。

ビッグ・パイロット・ウォッチ 43

ブルーダイアルのSSブレスレットモデル。自動巻き(Cal.82100)。22石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径43mm、厚さ13.6mm)。100m防水。118万2500円(税込み)。

 このように多くの労力をかけた研究開発から生み出されたのは、直径43mmのステンレススティール製ケースの「ビッグ・パイロット・ウォッチ 43」だった。46mmのモデルに比べれば比較的控えめで、オリジナルの55mmに比べればまさに大幅なサイズダウンであるが、手首の上では十分な大きさだ。先代モデルと同様に、ビッグ・パイロット・ウォッチ 43はまず第一に優れた視認性を備えている。ホワイトのアラビア数字は、歴史的なトライアングル・エンブレムのある12時位置を除くすべてのアワーマーカーを示しており、日付窓やパワーリザーブのインダイアルに邪魔されることはない。ロジウムメッキを施した大きな時分針が、アラビア数字とバーで構成されるホワイトのインデックスを指し示し、中央には先細りの秒針が配されている。針とアワーマーカーにはすべて蓄光塗料が施されている。

ビッグ・パイロット・ウォッチ 43

ブルーダイアルと同色のレザーストラップモデル。自動巻き(Cal.82100)。22石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径43mm、厚さ13.6mm)。100m防水。カーフレザーストラップ。106万1500円(税込み)。

ビッグ・パイロット・ウォッチ 43

ビッグ・パイロット・ウォッチの特徴である高い視認性は小型化されても健在だ。

 このコレクションの開始にあたり、IWCは歴史的背景に基づいたブラックまたは現代的なブルーの2種類の文字盤を用意した。ブラックのモデルには、リベット加工を施したブラウンのカーフレザーストラップを組み合わせ、新モデルのピュアなヴィンテージ感を表現している。一方、ブルーのモデルには、文字盤と同色のカーフレザーストラップ、またはパイロット・ウォッチ・コレクションでは初となる、IWCの新しいクイックチェンジ調整システム「EasX-CHANGE」システムを備えたステンレススティール製ブレスレットが組み合わされている。

ビッグ・パイロット・ウォッチ 43

「EasX-CHANGE」システムを採用し、工具不要で容易に交換が可能なストラップ。

 ビッグ・パイロット・ウォッチ 43に搭載されるムーブメントは、特許取得のペラトン自動巻き機構を備えたIWCの自社製キャリバー82100だ。IWCの素材およびムーブメントの開発技術を示すように、自動巻き用の歯車やそれに噛み合う爪などの重要な部品を含むいくつかの構成部品には、摩耗しにくい酸化ジルコニウム・セラミックスが採用されている。また、スケルトン加工されたローターや、ブリッジに施されたサーキュラーグレイン、またコート・ド・ジュネーブなどの仕上げ装飾は、サファイアクリスタル製のケースバックから鑑賞が可能だ。これは、磁気からムーブメントを保護する軟鉄製インナーケースを収納するために、これまでソリッドケースバックを使用してきたビッグ・パイロット・ウォッチ・コレクションを考えると珍しいことである。このような機能を排除したことで、小型で以前よりスマートな印象になったビッグ・パイロット・ウォッチ 43は、コックピットよりもファーストクラスのラウンジに適したタイムピースとして評価されることになるだろう。

ビッグ・パイロット・ウォッチ 43

100mの防水性能を持つケースの裏蓋はトランスパレント仕様になっており、自社製キャリバー82100を鑑賞することができる。

ビッグ・パイロット・ウォッチ 43

巻き上げ時に噛み合う歯車と、それを動かす爪などのパーツには耐久性の高い酸化ジルコニウム・セラミックスを採用。

ビッグ・パイロット・ウォッチ 43

2万8800振動/時でパワーリザーブは約60時間を実現。


Contact info: IWC Tel.0120-05-1868


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