「当然」だけれど「快挙」です! グランドセイコーがGPHG2021で「メンズウォッチ」部門賞を受賞

FEATURE役に立つ!? 時計業界雑談通信
2021.11.21

ゼニスとチューダーの受賞も順当な結果

「クロノグラフ賞」を受賞したゼニスの「クロノマスター スポーツ」(左)と、チューダーの「ブラックベイ セラミック」(右)。

 ゼニスの「クロノマスター スポーツ」の「クロノグラフ賞」受賞も、誰が考えても当然、順当な結果だろう。ゼニスには時計用とクロノグラフ用のふたつの脱進調速機を搭載し、機械式で1/100秒計測を実現した「デファイ 21」という一連のモデルがある。

 だが「クロノマスター スポーツ」は、1969年のファーストモデル以来の伝統と実績のある自動巻きクロノグラフムーブメント「エル・プリメロ」の発展型「エル・プリメロ 3600」を搭載。クロノグラフ秒針を、通常の6倍速の「10秒で文字盤を1周する」仕様にすることで、メインダイアルでの1/10秒単位の計測が可能になり、判読性も高まった。価格も格段に身近になっている。

 2014年に「グランドセイコー」が受賞したものと同じ、8000スイスフラン(約100万円)以下の時計に贈られる「プチ・エギュイユ(小さな針)賞」を、チューダーの新作「ブラックベイ セラミック」が受賞したのも、ゼニス同様に順当な結果だ。セラミックケースを持ち、強烈な磁気の影響を受けない超耐磁性能を備えた「マスター クロノメーター」認定モデルでありながらも53万9000円という価格には正直、驚愕した。


「メンズウォッチ」部門賞の価値は「大賞以上」

 今回のグランドセイコー「ヘリテージコレクション」SLGH005の受賞は、その技術的な価値や独自のデザイン、美しい仕上げを考えれば、至極当然の正当な評価だと筆者は思う。

授賞式でビデオメッセージを寄せるセイコーウオッチの内藤昭男社長(左)と、GPHG「メンズウォッチ」部門賞受賞を告知するビジュアル(右)。

 一般的なスイスレバー式脱進機とはまったく違う、動力の伝達効率を理論上約20%も向上させた独自開発・独自構造のデュアルインパルス脱進機。さらに8万通りものシミュレーションの結果、理想的なエンドカーブを与えられた独自の巻き上げヒゲゼンマイなど、搭載されるグランドセイコーの新世代ムーブメント「9SA5」は、数百年の時を経て進化・発展を遂げてきた機械式時計技術の最先端に位置する。この先進性については、『クロノス日本版』本誌の記事やwebChronosの記事をぜひ読んでほしい。

世界を驚かせるグランドセイコー史上最高ムーブメント

https://www.webchronos.net/features/50751/


受賞の最大の理由に違いない、グランドセイコーの新世代キャリバー9SA5。3万6000振動/時のハイビートで、現代のムーブメントでは最高峰の優れた精度を誇る。しかも、ツインバレルで約80時間のパワーリザーブという性能も画期的だ。

 何よりも素晴らしいのは、このムーブメントが特殊なものではなく、量産されるムーブメントであること。これからの「グランドセイコー」の機械式モデルのスタンダードになること。そして、このムーブメントを搭載した「グランドセイコー」が、ごく一部の人たちしかアクセスできない超高額な限定ではなく、誰もがアクセスできるモデルであることだ。このことを考えると、『クロノス日本版』の広田雅将編集長がFB(フェイスブック)で「事実上、大賞を取ったのと同じ価値がある」と評価したように、この「メンズウォッチ」部門賞の受賞には、大賞以上の価値がある。こう断言していいだろう。

 そしてこの受賞は、アメリカに続くヨーロッパでの「グランドセイコー」の認知と販売拡大に大きく寄与することは間違いない。

「グランドセイコー」は、とにかく「真面目で誠実な時計」だ。そして「9SA5」を搭載した受賞モデルは、その代表と言っていい。この受賞は、「グランドセイコー」より2歳年下で、編集者兼ライターとして「グランドセイコー」の歴史や、1998年の機械式モデルの復活を間近で取材してきた筆者にとっても、これ以上うれしいことはない。

 まずは、このモデル、そして搭載される新世代キャリバー9SA5の開発者、製造を担当する「グランドセイコースタジオ 雫石」の方々、そして、このモデルに関わっている方々全員に心からお祝いを申し上げたい。

受賞作のグランドセイコー「ヘリテージコレクション」SLGH005をはじめ、グランドセイコーの機械式モデルが製造されている「グランドセイコースタジオ 雫石」。




グランドセイコーのCal.9SA5は何が凄い? 編集長の掘り下げ解説

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