2022年 グランドセイコーの新作まとめ

2022.04.02

グランドセイコー ブース

Photograh by Yu Mitamura

Kodo コンスタントフォース・トゥールビヨン

Kodo コンスタントフォース・トゥールビヨン

グランドセイコー「Kodo コンスタントフォース・トゥールビヨン」
手巻き(Cal.9ST1)。44石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間(コンスタントフォース機構の作動時間は約50時間確保される)。Pt×Ti(直径43.8mm、厚さ12.9mm)。10気圧防水。4400万円(税込み)。世界限定20本。10月21日発売予定。

 グランドセイコーは、2020年発表のコンセプトムーブメント「T0 コンスタントフォース・トゥールビヨン」の構造を継承しつつ全面的に見直しを行って開発した「キャリバー 9ST1」を搭載する「Kodo コンスタントフォース・トゥールビヨン」を発表した。世界限定20本となる。今作は、グランドセイコー初のコンプリケーションウォッチであり、歴史的な1本だ。

 T0およびCal.9ST1は、テンプに伝わる力を一定に保つコンスタントフォースとトゥールビヨンを同軸に一体化して組み合わせた構造が特徴である。この構造は、姿勢差の相殺が可能ながら安定した作動をさせにくいトゥールビヨンを、コンスタントフォースで理想的な駆動状態に保ち、高い精度を実現することに寄与している。

 基本的な設計思想をT0から引き継ぎながら、Cal.9ST1は340を超えるパーツを全面的に見直し、ケース径43.8mmに収めるための小型化を実現したほか、今作独自の音色をより美しく、心地良いものとすることに成功している。この音色とは、毎秒8回のテンプが振動する音に、1秒に1回のコンスタントフォースの作動音が加わるもので、奏でられる16ビートは他の機構では聴くことができない。そのためこの音色は、Cal.9ST1独自の機構を象徴したものだ。

Kodo コンスタントフォース・トゥールビヨン

 Cal.9ST1は、デザインと仕上げの完成度も高い。今作は、グランドセイコーのデザイン文法である「セイコースタイル」のなかで、光と陰が生み出す陰影の濃淡に美を見出す感性に着目して表現されている。ふたつの機構を統合したCal.9ST1によって、ケース内に奥行きのある空間を生み出し、ケースの表裏から光を投下させて影を落とすことで、光の向きや強さによって豊かな表情を生み出している。

 ストラップには、甲冑に用いられた鞣しと加工技術が用いられた「姫路黒桟革」が合わせられる。この姫路黒桟革は、鞣した牛革のシボ部分に漆が施されたもので、何度も塗りと乾燥を繰り返すことで生まれる量感と艶が特徴である。また、着け替え用として、表裏両方に上質なクロコダイルを用いた無双仕立てのストラップが付属される。

 さて、今作の重要な点は、この複雑機構が高精度化を目指して搭載されており、実際に非常に高い精度を実現していることだ。今作のために新しいグランドセイコー規格検定が設定され、これまでの2倍の48時間の検定が行われている。精度測定は6姿勢、3温度で、34日間のテストが実施されており、その測定結果は特別な証明書に記載されている。

 さらに実用性にも配慮されている。時針は、従来のグランドセイコーのデザインを踏襲しつつ新形状の6面カットが採用されており、視認性を高めている。また、コンスタントフォースキャリッジのアーム1本にルビーが添えられ、秒針の役割を果たしている。トゥールビヨンキャリッジは、リュウズの引き出しによって停止可能で、秒単位の確実な時刻合わせが可能となっている。さらに、コンプリケーションウォッチでありながら、10気圧の防水性を備える。

Kodo コンスタントフォース・トゥールビヨン




マスターピースコレクション スプリングドライブ 8デイズ ジュエリーウォッチ SBGD209

グランドセイコー「マスターピースコレクション スプリングドライブ 8デイズ ジュエリーウォッチ SBGD209」
手巻き(スプリングドライブ)。56石。パワーリザーブ約192時間。Pt(直径44.5mm、厚さ14.4mm)。2970万円(税込み)。世界限定5本(うち国内3本)。5月27日発売予定。

 グランドセイコーは、「スプリングドライブ 8デイズ ジュエリーウォッチ SBGD209」を発表した。信州の「マイクロアーティスト工房」が手掛けるCal.9R01を搭載する今作は、世界限定5本である。

 今作は1960年の初代グランドセイコーの誕生以来、ブランドのシンボルとしてきた「獅子」の中でも、圧倒的な存在感を放つ「ホワイトライオン」を題材としたモデルだ。百獣の王といわれる獅子は、力や威厳、王の象徴としてみなされてきた歴史があり、グランドセイコーは“最高峰の腕時計を目指す意志”を込めてシンボルとして用いてきた。

 プラチナ製ケースは、ホワイトライオンの神々しく威厳のある白い毛並を想起させるキャンバスとなっており、ダイアルにはダイヤモンドとブラックスピネルが配置されている。ダイヤモンドによる光の反射と、天然の黒い貴石であるブラックスピネルがコントラストを成し、グランドセイコーが提唱する"光と影"のコンセプトを表現しつつ、それらが分目盛りとして機能している。また、ブラックスピネルの配置の数や、その太さを変えることでインデックスの視認性を向上させており、ジュエリーウォッチにおいても実用性を高める姿勢はグランドセイコーらしい。ダイアルの中心部にはたてがみを彷彿とさせる有機的な型打ち模様もあしらわれている。

 現在のセイコースタイルを確立した「44GS」を思わせるケースシェイプの今作は、ケースのかん足にもダイヤモンドをセットし、獅子の研ぎ澄まされた爪の美しい輝きを表現している。

 ムーブメントは、マイクロアーティスト工房が手掛けるCal.9R01で、その仕上がりはすでに高い評価を得ている。ケースバックから覗くムーブメントデザインも独自性があり、受けの形状は富士山、ローターは太陽、ルビーは諏訪の街の灯り、パワーリザーブ表示は諏訪湖がイメージされており、スプリングドライブ誕生の地から霊峰富士山を望む情景が描かれている。