オーデマ ピゲ 止まらない躍進「CODE 11.59×コンプリケーションズ」

FEATURE本誌記事
2022.12.05

「ロイヤル オーク コンセプト」と並んで、超複雑系ムーブメントを搭載するプラットフォームとしても多用されるようになってきた「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」。ラウンド状の平面形状の中に、8角形のミドルケースを巧みに融合させているが、その基本構成はシリンダーケースの亜種と言っても良いだろう。それ故に生まれる厚さに対する許容度の高さが、多様な複雑系ムーブメントを受け入れる自由度の高さに繋がっている。

星武志:写真 Photographs by Takeshi Hoshi (estrellas)
鈴木裕之:文 Text by Hiroyuki Suzuki
[クロノス日本版 2023年1月号掲載記事]


いよいよ先鋭化するCODE 11.59と複雑機構の融合

 現代のオーデマ ピゲを象徴するプロダクトの3本柱。すなわち「ロイヤル オーク」「ロイヤル オーク オフショア」、そして「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」(以下CODE 11.59)は、いずれも時代の反逆児として生まれた。腕時計の黎明期から一方では伝統に寄り添いつつ、また一方ではデザイン的な“型破り”を身上としてきたオーデマ ピゲだが、その最たる例として記憶されるこの3本が、今やプロダクトの中核を担っているのだ。

 クォーツショックの影響はまだ顕著ではなかったものの、大きな時代のうねりがスイス時計産業全体を包み込もうとしていた1970年代初頭。現代で言うラグジュアリースポーツウォッチの先駆けとなったロイヤル オークが難産を窮めたのは、スティール製の防水ブレスレットウォッチという、前例のないプロダクトだったからに他ならない。新進のインハウスデザイナーの手に委ねられた93年のオフショアも、当時では考えられないほどオーバーサイズのスタイリングを持ち、その“型破り”はジェンタを激怒させたほど。しかしどちらも一瞬の拒絶反応を経た後に、唯一無二のアイコンとして、高級時計市場に認知されてゆくことになった。

 ロイヤル オークやオフショアが、すでにクラシックと認識されるようになっていた2010年代後半に、プロダクトラインの若返りと、顧客層の世代交代を目して企画されたCODE 11.59も、その誕生に至る経緯は前者ふたつのアイコンと相似形にある。発表当初は「オーデマ ピゲらしくない」と囁かれたコンテンポラリーな造形も、そのディテールのひとつひとつにオーデマ ピゲのDNAが受け継がれると知れるや、一気に人気を爆発させた。

CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ フライング トゥールビヨン クロノグラフ

やや12時側にオフセットされた12時間積算計(3時)と30分積算計(9時)。自社製クロノグラフのCal.4401と同様に、フライバック式のリスターティング機構を備える。積算輪列の大部分はバックケース側に設けられているが、徹底したシンメトリーにこだわり抜いた設計が、スケルトナイズされたダイアル側の審美性にも繋がっている。

 正統派の高級時計然とした打ち出しが印象的だった19年のファーストシーズン、スモークラッカーペイントのダイアルやバイカラーゴールドのケースが加わり、よりストリートカルチャーに寄り添った着けこなしを強調した20年のセカンドシーズンを経て、今やCODE 11.59は全方位展開とも言えるラインナップを完成させている。そうした中で、新たにCODE 11.59に与えられるようになってきた“型破り”なミッションが、コンプリケーションウォッチのプラットフォームという役割だ。従来は「ロイヤル オーク コンセプト」が担ってきたこのポジションにCODE 11.59が加わったことで、オーデマ ピゲはいよいよ鉄壁の布陣を整えたのだ。ラウンド形状のベゼルに8角形のミドルケースを組み合わせるCODE 11.59独特のケースデザインが、どうしても厚みの増してしまうコンプリケーションの受け皿として最適だったことは言うまでもないだろう。

 2022年に発表されたCODE 11.59ベースのハイコンプリケーションは、いずれも過去作のバリエーションとなるが、ムーブメントの仕上げやケース素材に変化を付けることで、まったく新しい表情を生み出している。

CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ フライング トゥールビヨン クロノグラフ

CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ フライング トゥールビヨン クロノグラフ
2020年に発表されたCal.2952を搭載するバリエーションモデル。コンパクトなトゥールビヨンの輪列構造を活かして、左右対称に振り分けた積算輪列と巻き上げ機構を加えている。自動巻き(Cal.2952)。40 石。2万1600振動/時。18KPG×ブラックセラミックス(直径41mm、厚さ13.8mm)。3気圧防水。世界限定50本。価格問い合わせ。
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 まず「CODE 11.59バイ オーデマ ピゲ フライング トゥールビヨン クロノグラフ」は、20年に発表されたキャリバー2952を搭載。最新の22年モデルでは、ベゼルとバックケースに18KPG、ミドルケースにブラックセラミックスを採用し、ぐっと落ち着いた表情を醸し出している。同時にムーブメントのダイアル側を構成するスケルトンブリッジにも18KPGが用いられ、地板や香箱受けのマットブラックコーティングと鮮やかな対比を見せる。

CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ トゥールビヨン オープンワーク

CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ トゥールビヨン オープンワーク
3種類のブルーを使い分けたオープンワークトゥールビヨン。テキスタイル調のラバーストラップ。手巻き(Cal.2948)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KWG×ブルーセラミックス(直径41mm、厚さ10.7mm)。3気圧防水。世界限定50本。価格問い合わせ。
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 このムーブメントで特筆すべきは、徹底的なシンメトリーが追求された輪列配置だろう。ダイアル側に置かれる通常輪列は、トゥールビヨンのセオリーに沿ったセンター配置。12時位置に香箱を置き、センターに2番車、6時位置にトゥールビヨンキャリッジを置く構成だ。興味深いのは積算輪列で、リセットハンマーの配置を左右対称にするため、その連結部分を6時位置に配している。コラムホイールも同様だ。つまりキャリバー2952では、フライングトゥールビヨンのキャリッジ、クロノグラフの動作を司るコラムホイール、そして左右に振り分けられたリセットハンマーを繋ぐ連結部分が同軸に配置されているのだ。これはキャリッジと積算輪列双方の設計が、如何にコンパクトなものかを雄弁に物語っている。

CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ トゥールビヨン オープンワーク
CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ トゥールビヨン オープンワーク

CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ トゥールビヨン オープンワーク

2022年の「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」に続いて、CODE 11.59に初導入されたブルーセラミックスをミドルケースに採用。オープンワークの地板や受けはALD(原子層堆積)によるブルー、インナーベゼルはCVD(化学蒸着)のブルーが使い分けられている。これらの補色となる時分針は18KPG製だ。

 同じくオープンワークのムーブメントを持ちながら、機能をトゥールビヨンのみに絞った「CODE 11.59 バイオーデマ ピゲ トゥールビヨン オープンワーク」では、厚さ方向のボリュームを絞ったキャリッジのコンパクトさが見て取れる。さらにキャリッジの造形美だけに視点を絞りたいなら「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ フライング トゥールビヨン」が好適だ。どちらも19年のファーストローンチ時から存在するモデルのバリエーションだが、その魅力はケースのバイカラー化で一層際立っている。

 CODE 11.59の造形は、極端に言えばシリンダーケースの変形だ。それ故に生まれるデザイン上の自由度の高さが、最大のアドバンテージなのだ。

CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ フライング トゥールビヨン

CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ フライング トゥールビヨン
アワーマーカーを廃したシンプルなブラックオニキスダイアルを持つフライングトゥールビヨン。ボンベ状のインナーベゼルにミニッツマーカーのみを表記する。自動巻き(Cal.2950)。27石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KWG×ブラックセラミックス(直径41mm、厚さ11.8mm)。3気圧防水。価格問い合わせ。
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