【機械式腕時計】自動巻きと手巻きの違いやおすすめモデルを紹介

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2023.04.03

現代には簡単に正確な時間を知る方法があふれている。それでもなお、機械式の腕時計を愛し求める人間がいるのは、それほど機械式の魅力が深く大きいからだろう。本記事では「機械式」と「クォーツ式」の解説や機械式の特徴と魅力、そしておすすめの機械式腕時計を紹介する。


機械式とクォーツ式の違い

「機械式」に興味はあれど、機械式がどういうものか詳しくは知らない人もいるだろう。まずは「機械式」と「クォーツ式」の違いや特徴についてみていこう。

機械式

そもそも「機械式」「クォーツ式」とは、時計の駆動方式のことでどのような仕組みで時計を動かしているかを表す。機械式の場合、機構にもよるがムーブメントは100を超えるパーツの組み合わせで構成されており、主にケース横にあるリュウズでゼンマイを巻き、巻き上がったゼンマイがほどける力を利用して動かしている。オルゴールやゼンマイ式のおもちゃをイメージすると分かりやすいだろう。

機械式のメリットとして、大抵のものは修理が可能であることが挙げられる。機械式のムーブメントは多くの微細なパーツで構成されているため、一部が破損したり劣化したりした場合は、メーカーや修理業者でパーツを交換することで再び駆動するようになる。

また、オーバーホールと呼ばれる定期的なメンテナンスを行い、致命的な故障が発生する前に問題を発見し対処すれば、時計の寿命は伸び、長年にわたってスムーズに時を刻み続けることにつながる。

クォーツ式

Cal.35Aを搭載して1969年に発表された世界初のクォーツ腕時計「クオーツ アストロン 35SQ」。機械式時計の精度を凌ぐ日差±0.2秒、月差±5秒を実現するのみならず、耐衝撃性や省電力設計など、実用的な作りだった。

一方の「クォーツ式」は、電池を動力源とする機構。クォーツとは水晶のことで、水晶が発生させる電流が振動を生む。その振動は電子回路によって電気信号へと変換され、ステップモーターに伝わり、針を動かす歯車へと伝わって時計を動かす。

世界初のクォーツ式腕時計を発表したのは日本が世界へ誇るセイコーだ。1969年、セイコーが「クオーツ アストロン 35SQ」を発表したことで、クォーツ腕時計は瞬く間に世界中に広がっていく。

機械式と比べ、クォーツ式は安く大量生産できたため、人々は手軽に腕時計を着けられるようになったが、機械式を主としていた一部の時計メーカーは休眠状態を余儀なくされた。この出来事を「クォーツ革命」と呼ぶ。

クォーツ式の最大のメリットは、正確に時を刻み、しかも取り扱いがしやすいこと。電池を動力源としているため、電池切れを起こさない限り動き続ける。コストパフォーマンスの高さも魅力だ。


手巻きと自動巻きの違い

機械式腕時計は、さらに「手巻き」と「自動巻き」の2種類に分けられる。それぞれの違いを解説しよう。

手巻き

タンジェント、Cal.アルファ

ノモス グラスヒュッテを代表するモデル「タンジェント」。スタンダードな3針モデルのRef.101は、現在も変わらず手巻きムーブメントを搭載する。手巻き(Cal.アルファ)。17石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約43時間。SSケース(直径35mm)。3気圧防水。24万2000円(税込み)。

「手巻き」は、機械式の仕組みでも解説したとおり、リュウズを使いゼンマイを手動で巻くタイプだ。巻き上げの工程を担うローターがないため、ムーブメントが軽く薄いのが特徴である。

加えて、ローターはムーブメントを広く覆ってしまうが、ローターがない手巻きはシースルーバックであればムーブメントの複雑かつ繊細な構造を堪能できるのも魅力のひとつだろう。ただし、ゼンマイを巻かなければ時計は動きを止めてしまうため、パワーリザーブに注意してこまめに巻き上げる必要がある。

自動巻き

Cal.ETA2892A2

汎用ムーブメントの供給元として知られるのがスイスのETAで、写真の薄型3針自動巻きムーブメントCal.ETA2892A2は、Cal.ETA7750やCal.ETA2824-2と並ぶ同社の代表作。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。

「自動巻き」は、ゼンマイを巻き上げる動作をローターが担う。ローターの多くはムーブメントのおよそ半分を覆うほどの大きさで半月形をしており、時計を着けた腕を動かす際にローターが回転することでゼンマイが巻かれる仕組みだ。

ローターは着用していれば日常生活の動きで自動的に回転するため、基本的にリュウズを用いて手でゼンマイを巻き上げる必要がない。ただし、パワーリザーブの時間によっては週末など着用しない日が続くと止まってしまうことがあるため注意が必要である。


機械式腕時計の魅力

機械式よりもクォーツ式の方が正確な時を刻み、ゼンマイを巻く工程もなく、なおかつ手頃な価格で入手できる。では、なぜ機械式腕時計が愛されるのか。時計愛好家たちが機械式を溺愛する理由を2つ紹介する。

生涯の趣味になる

クォーツ式との違いでも記したとおり、機械式の時計はなんらかの理由で故障してもほとんどの場合修理が可能だ。機械式は、シンプルな機構であれば100強、クロノグラフやムーンフェイズなど複雑な機構であれば300ほどのパーツで組み上げられている。

使い続けるうちにケース内のパーツが劣化したり、衝撃が加わって破損したりしてもブランドへ依頼すれば修理してもらえるのだ。致命的な損傷でない限り、一生モノどころか何世代にも渡って使い続けられる。

また、機械式にはさまざまな機能を備えたものやヴィンテージモデルも多く、1本手にするとさらにもう1本とコレクション熱も高まってくる。長く使えば使うほど、機械式時計の魅力に気づかされるようになり、人生をとおした趣味へと発展するのである。

複雑なデザインと機能を堪能できる

機械式の時計は、デザインに富んでいる。もちろんシンプルで洗練されたモデルもあるが、まるで工芸品や美術品のように凝ったデザインが多いのは、機械式の大きな魅力といえる。

機械式はパワーに優れているため、クォーツ式では叶えられない太さのある針や長い針もセットでき、デザインや装飾の幅が広がる。

加えて、機械式だからこそ実現できる機能もある。クロノグラフ、ムーンフェイズ、トリプルカレンダー、GMTといったいくつもの複雑機構をまとめて搭載できるのも機械式ならではだ。

シースルーバックであれば、こうした複雑機構を搭載するムーブメントの造形や繊細な動きを鑑賞できるのも魅力のひとつだろう。


機械式腕時計のおすすめモデル

ここでは、機械式腕時計の中でも、手巻きモデルを2本、自動巻きモデルを3本紹介しよう。

IWC「ポートフィノ・ハンドワインド・ムーンフェイズ」

ポートフィノ・ハンドワインド・ムーンフェイズ

IWC「ポートフィノ・ハンドワインド・ムーンフェイズ」
手巻き(Cal.59800)。30石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約192時間。SSケース(直径45mm)。3気圧防水。177万6500円(税込み)。

「トップガン」の名前を冠したモデルを筆頭に「パイロット・ウォッチ」で名高いIWCだが、クラシカルな品のあるコレクションも高い人気を誇る。なかでも「ポートフィノ」は、IWCの中でもドレッシーな佇まいで、1984年の誕生から支持されているコレクションだ。

今回選んだのは、手巻きの「ポートフィノ・ハンドワインド・ムーンフェイズ」で、ダイアルの12時位置にムーンフェイズ、9時位置にパワーリザーブ表示を備えたモデル。搭載するのは自社製のCal.59800で、パワーリザーブは脅威の約8日間(約192時間)を誇る。

手巻きの平均パワーリザーブが約50〜60時間ほどであるところ、190時間近くも動き続ける本モデルは驚くべき駆動時間だろう。

オメガ「シーマスター300」

シーマスター 300 コーアクシャル マスター クロノメーター」

オメガ「シーマスター 300 コーアクシャル マスター クロノメーター」
自動巻き(Cal.8912)。38石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm)。30気圧防水。90万2000円(税込み)。

おそらく知らない者はいないであろう、世界を代表する時計ブランド、オメガ。ブランドのアイコンともいえる「シーマスター」は、映画『007』シリーズの主人公ジェームズ・ボンドが劇中で着用していることでも有名だ。

ダイバーズウォッチの代名詞ともいえるシーマスターは、ビジネスマンにとってひとつのステータスにもなっている。自動巻きのため装着していれば時計が止まることはまずない。オンオフ問わず活躍できる万能さは、機械式ならびに高級機のエントリーモデルとしてもおすすめできる1本だ。

カルティエ「サントス」

サントス-デュモン ウォッチ

カルティエ「サントス-デュモン ウォッチ」Ref.WSSA0032
手巻き(Cal.430 MC)。18石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(縦46.6mm、幅33.9mm)。日常生活防水。84万7000円(税込み)。

カルティエというとジュエリーの印象を持つ者も少なくないだろうが、メンズ、レディースともに素晴らしい時計が揃っている。そして忘れてはいけないのが、1904年、世界初の腕時計を誕生させたのは、他でもないカルティエだ。

今回選んだ「サントス-デュモン」は、世界初の腕時計となったサントスを現代的にアップデートしたモデル。カルティエの手巻きは少なく、高いもので数千万円という手も足も出ない価格だが、このWSSA0032はサントスの洗練された美しさと機械式の魅力、両方を堪能できる。

ドレッシーなスタイルに合わせるのはもちろん、カジュアルな服装にさりげなく着けてもよく似合う時計だ。

ヴァシュロン・コンスタンタン「トラディショナル・コンプリートカレンダー」

トラディショナル・コンプリートカレンダー

ヴァシュロン・コンスタンタン「トラディショナル・コンプリートカレンダー」
自動巻き(Cal.2460 QCL/1)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KWGケース(直径41mm)。3気圧防水。589万6000円(税込み)。

世界3大時計ブランドのひとつに数えられ「雲上ブランド」とも呼ばれるヴァシュロン・コンスタンタン。その時計は、どれも芸術品のように繊細かつ優雅な雰囲気を放ち、見る者を楽しませてくれる。

その一方で、いくつもの複雑機構を搭載したモデルが多い点もヴァシュロン・コンスタンタンの特徴のひとつだ。

自動巻きの「トラディショナル・コンプリートカレンダー」は、クラシカルなデザインに月、日付、曜日を表示させるトリプルカレンダーと月齢を表示するムーンフェイズを搭載している。

情報量は多いものの、バーインデックスや日付表示をポインターデイトにすることですっきりとまとまった、上品な仕上がりが魅力だ。

ベル&ロス「BR-X5 BLACK STEEL」

BR-X5 ブラックスティール

ベル&ロス「BR-X5 ブラックスティール」
自動巻き(Cal.BR-CAL.323)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS毛0す(直径41mm)。100m防水。99万円(税込み)。

フランスはパリを拠点とするベル&ロスは、1991年創業と時計業界では比較的若いブランドだ。しかし、スクエアケースとラウンドのダイアルを組み合わせたアイコニックなデザインにより、ブランドは瞬く間に有名になった。

中でも「BR-X5」は、ベル&ロスらしいデザインを、よりモダンにアップデートさせた2022年発表のモデル。ベゼルに見える4つのビスは飾りではなく、実際にケースを密閉している。一見するとケースもダイアルもフラットに感じられるが、ケースのサイドビューからは立体的な構造を楽しませてくれる。

ダイアルの3時位置には3日分が表示される日付窓、9時位置にはパワーリザーブ表示が配されている。これらの機能を動かしているのは、気鋭のムーブメント製造会社であるケニッシ社とベル&ロスとの共同開発で誕生した自動巻きムーブメントで、その姿はシースルーバックからじっくりと鑑賞できるようになっている。


ハードルは高いが、足を踏み入れれば一生モノ

機械式腕時計は、クォーツ式と比べるとどうしても高価なものだ。加えて、扱ううえで手間がかかりそうだったり、知識が必要だったりと考える人は少なくないだろう。

実際、そうした考えは間違いではないが、機械式の魅力を知ってしまえばそれらは大きな問題ではない。むしろそうした問題を上回る良さが、機械式腕時計にはある。だが、それらの魅力を知るには、機械式を手にするほかない。


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