巻き上げ機構 「自動巻き」

FEATURE時計機構論
2019.07.08

ショパール
1996年発表の自社ムーブメントL.U.C 1.96(現L.U.C 96.01-L)は、マイクロローター自動巻きで、ジュネーブシール取得、COSC認定クロノメーターという秀逸な高級機。ショパール マニュファクチュール創設20周年を称えて2016年に発表された「L.U.C XPS 1860」(左) は、初代L.U.C 1.96直系のL.U.C 96.01-L (右)を搭載。29石。2万8800振動/時。65時間パワーリザーブ。


 マイクロローター自動巻きの登場によって、腕時計にまた別の進歩がもたらされた。つまり、それまでの機械式腕時計では、自動巻きの便利な機能と、手巻きの薄く上品な美観とを両立させることが容易ではなかったが、マイクロローターによって難問が一気に解決され、多様なデザインが生まれることになったのだ。

 とはいえ、自動巻きの主流はセンターローター式。効率でいえば、大きなローターがダイナミックに回転するこちらの方式が有利なのは言うまでもない。では薄さでは、マイクロローター式がセンターローター式より圧倒的優位かといえば、そうとも言えない。センターローターでマイクロローターに肉薄する2mm台の薄さも1960年代には達成されているからだ。ちなみに、センターローター式の超薄型自動巻きムーブメントといえば、ジャガールクルトのキャリバー920(厚さ2.45mm)と、それをもとにしてスイスの著名高級時計メーカー数社が自社仕様にアレンジしたキャリバーが有名だ。

 マイクロローター自動巻きは少数派ではあるが、現在どれくらいの時計メーカーがその種のムーブメントを揃えているかというと、代表的なキャリバーを1つに絞って列挙するだけでもこれだけある(カッコ内は搭載モデル例)。ピアジェ1208P(アルティプラノなど)、パテック フィリップ240(カラトラバなど)、ショパールL.U.C 1.96(L.U.Cなど)、ロジェ・デュブイRD620(エクスカリバーなど)、パルミジャーニ・フルリエPF701(トンダ1950)、エルメスH1950(スリム ドゥ エルメス)、パネライP4000(ルミノール3デイズ)、ローラン・フェリエFBN 229.01(ガレ・マイクロローター・アントルポン)といった具合である。