大塚ローテックより、新作「9号」が発表された。本作は複数の複雑機構を搭載した新開発の自社製手巻きムーブメントとレクタンギュラーケースを組み合わせたモデルであり、電力メーターのように内部構造を鑑賞することができる。
視覚と聴覚で時間を楽しむ、大塚ローテックの最新作
ユニークな機構とオリジナリティーあふれるデザインによって、世界中から注目を集める大塚ローテック。その最新作「9号」が発表された。本作は、ラウンド型ケースであったこれまでのモデルとは異なり、縦48mm、横30mmのレクタンギュラー型ケースを採用している。デザインの着想源となったのは、電力メーター(誘導形電力量計)。電力量を表示する計量装置や各種センサー、ワイヤーなどが複雑に配置され、ガラスカバーで覆われた電力メーターのメカニカルな魅力を、腕時計のサイズに凝縮させている。

大塚ローテックの新作「9号」。ジャンピングアワー、リワインディングミニッツ、トゥールビヨン、アワーストライキング、パワーリザーブインジケーターを搭載したレクタンギュラーウォッチだ。手巻き(Cal.SSGT)。30石+5ボールベアリング。1万8000振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(縦48×横30mm、厚さ13mm)。日常生活防水。1760万円(税込み)。
ケースの中に収められているのは、数々の複雑機構だ。本作には、ジャンピングアワー、リワインディングミニッツ、トゥールビヨン、アワーストライキング、パワーリザーブインジケーターが搭載されている。上部の透明のディスクと蓄光ブロックはジャンピングアワー、その下の円弧状のディスクはリワインディングミニッツ。上部へとうねるように伸びるゴングと左下のハンマーは、アワーストライキングだ。毎正時になると、60までカウントしたリワインディングミニッツのディスクが瞬時に0へ戻り、ジャンピングアワーの数字が瞬転。同時にハンマーがカツンとゴングを鳴らす。

パワーリザーブインジケーターは、時計を正面から見て右下の空間に伸びる棒状のパーツによって主ゼンマイの残量を表すという、ユニークな表示方法を採る。棒が長く伸びていれば残量が多く、短ければ少ないという視覚的にも分かりやすい機構だ。下側に配されたトゥールビヨンにも一捻り加えられている。一般的なトゥールビヨンはケージの中心を軸に回転するが、本作の場合はケージをオフセットすることで、よりダイナミックな動きを楽しむことができるようになっている。
いくつもの複雑機構を小さなスペースに収め、さらに十分な信頼性の下に作動させるため、本作には大塚ローテックの持つ高度な設計開発力や製造調整技術に加え、ミネベアミツミの誇る世界トップレベルの高度な技術が注ぎ込まれている。大塚ローテックとミネベアミツミのコラボレーションは、サテライトアワーウォッチである「5号改」に続くものだ。9号では、アワーストライキングのハンマーの軸とジャンピングアワーのディスクの中心に外形2.5mmの特製ルビーボール・ボールベアリング、トゥールビヨンとリワインディングミニッツの中心に、外形1.5mmの世界最小ボールベアリングを搭載している。どちらもミネベアミツミが大塚ローテックのために開発したボールベアリングであり、各機構の滑らかな可動に貢献している。
ケースサイドまで覆うサファイアクリスタルも、本作の魅力を大きく高める要素だ。電力メーターのような立体感を強調し、9時側からは複雑な形状のゴング、3時側からは幾層にも重なったムーブメントを鑑賞することができる。
搭載されたCal.SSGTは、新たに開発された自社製の手巻きムーブメントだ。地板の上に数々の機構を積み重ねる多層構造を特徴としており、これがまるで寿司下駄の上にネタを並べるようだったことから、「SUSHIGETA」をもじった「Cal.SSGT」と名付けられている。
ケースは、316Lステンレススティール製。四隅に配されたビスやヘアラインを主体とした仕上げなど、大塚ローテックらしいインダストリアル感あふれるデザインが魅力だ。大きく湾曲したケースバックは、ステンレススティールの塊をくり抜くことで制作されており、細かな溝とともに、優れた装着感を発揮する。
