セイコー「プレザージュ」の2モデルが、2026年度の「グッドデザイン賞」を受賞した。受賞モデルは琺瑯(ほうろう)および漆をダイアルに採用したモデルだ。これらは、国産初の腕時計である「ローレル」にデザインの範を取っている。さらに、扱いが難しいとされる技術をダイアルに用いた挑戦的なウォッチメイキングが高く評価された。

国産初の腕時計「ローレル」の意匠を受け継ぐふたつのレギュラーモデル
セイコー プレザージュの「クラシックシリーズ クラフツマンシップ」2モデルが2026年度のグッドデザイン賞を受賞した。グッドデザインは公益財団法人日本デザイン振興会が主催する賞で、有形無形のあらゆるデザインを対象としている。セイコーウォッチでは、昨年もセイコー プロスペックスなどが受賞した実績のある賞だ。セイコー プレザージュの受賞は2018年の七宝限定モデル以来となる。
今回の受賞モデルは、ダイアルに琺瑯を採用したRef.HCC005Jと漆を用いたRef.HCC006Jである。いずれのモデルも、1913年に誕生した国産初の腕時計「ローレル」をモチーフとしている。ローレルは、日本の機械技術発展に貢献した歴史的価値から、機械遺産に認定された名作だ。受賞モデルはいずれも、このマイルストーンへオマージュを捧げている。

自動巻き(Cal.6R5H)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径39.6mm、厚さ12.4mm)。3気圧防水。17万9300円(税込み)。

自動巻き(Cal.6R5H)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径39.6mm、厚さ12.4mm)。3気圧防水。20万9000円(税込み)。
極薄ダイアルに伝統工芸を再現する、妥協なき職人技
ダイアルは、オリジナルのデザインコードをベースにしながら、琺瑯(ほうろう)あるいは漆という、日本の伝統工芸を取り入れている。それぞれの素材に合わせて印刷の回数や版下を調整することで、視認性と質感に配慮しつつ、特徴的なアラビア数字インデックスを持つローレルの意匠を再現した。
琺瑯や漆を腕時計のダイアルに採用することは容易ではない。極薄のパーツであるダイアル上に、均一な厚みで伝統素材を塗布する作業は困難を極める。
例えば琺瑯の製造工程では、金属表面にガラス質の釉薬を焼き付けるが、温度や湿度のわずかな変化が仕上がりに大きな影響を与える。色ムラや凹凸を完全に防ぎつつ、これを小さなダイアル上で実現するには、高度な職人技が欠かせない。
漆塗りの工程もまた複雑である。空気中の水分によって硬化する漆は、天候や季節によって乾燥条件が常に変動する。そのため職人には、厚みを極めて高い精度でコントロールし、緻密な計算のもとに塗り重ねる技術が求められるのだ。

また、両モデルとも直径39.6mmというコンパクトサイズに設計されており、漆モデルのみダイアルとのコントラストを効かせたゴールドカラーに仕上げられている。ムーブメントは、約72時間のパワーリザーブを有する自動巻きのCal.6R5Hを搭載する。各素材が持つ魅力を引き出しつつ、ローレルの世界観を現代のプロダクトとして成立させるための工夫が凝らされたタイムピースと言えるだろう。
セイコーは、こうした伝統工芸と現代の製造技術を高度に融合させた。職人の手仕事によって完成するダイアルには、ひとつとして同じものは存在しない。独特の深みと艶やかな質感が手元を華やかに彩る。その妥協なき姿勢が今回の受賞を力強く後押ししたのである。
機械遺産にも認定された名作「ローレル」への深いオマージュと、琺瑯や漆といった扱いが難しい伝統技法をダイアル上で再現した確かな技術力。これらが見事に結実した挑戦的なウォッチメイキングこそが、今回のグッドデザイン賞受賞をもたらしたと言えるだろう。



