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IWC/パイロット・ウォッチ・クロノグラフ “トップガン・ミラマー”(1/1) 2016年09月号(No.66)

IWC
パイロット・ウォッチ・クロノグラフ“トップガン・ミラマー”

IWCの新作、パイロット・ウォッチ・クロノグラフ“トップガン・ミラマー”は、雲の中への遠征だけでなく、サファリや砂漠、ジャングルや山岳地帯など、未整備のロードを走破するラリーレイドは言うまでもなく、陸上の冒険にも適任である。

アレクサンダー・クルプ: 文
Text by Alexander Krupp
OK-PHOTOGRAPHY: 写真
Photographs by OK-PHOTOGRAPHY
岡本美枝: 翻訳
Translation by Yoshie Okamoto

point

・完成度の高いミリタリーデザイン
・細部まで考え抜かれた自社製ムーブメント
・軽量

point

・時・分同軸積算計の読み取りがやや困難
・プッシュボタンのないフォールディングバックル

いざ冒険へ

イロット・​ウォッチ・​クロノグラフ〝トップガン・ミラマー〟の名称は、カリフォルニア州のミラマー基地にあったアメリカ海軍戦闘機兵器学校(正式名称:United States Navy Fighter Weapons School、略称NFWS)の中で、パイロット養成中のエリートを「トップガン」と呼んでいたことに由来する。〝トップガン・ミラマー〟は、クロノグラフ搭載モデルも含め、2012年からすでに存在するシリーズだが、今年はケース径が46㎜から44㎜にサイズダウンされるなど、いくつかのディテールがモディファイされた。外観上、著しい変更は認められないものの、これまでミニッツカウンターのみだった12時位置の積算計にはアワーカウンターも追加されるなど、細やかな改定が行われている。さらに、布製ストラップに代わり、テキスタイルのように型押しされたカーフスキンストラップが装備され、装着感も一層、向上した。

約68時間のパワーリザーブをたたき出すIWC自社製キャリバー89361。フルに巻き上げれば、ほぼ3日間、動き続ける。

 

空か陸か

 ここで、すべてのパイロット・​ウォッチに共通する疑問が生じる。時計愛好家のうち、いったい何人が実際にパイロットで、パイロット・​ウォッチをバックアップ用計器として利用する人々がどのくらいいるかという点である。当然、その数はごくわずかだろう。だが、この事実よりも重要なのは、良好な視認性やシンプルな操作性といったパイロット・​ウォッチならではのメリットが、日常生活でも付加価値となる点である。IWCの場合はデザインの魅力もこれに加わる。サイズダウンしたとはいえ、それでも大きな時計であり、男性的で力強い。ブラックカラーのケースと文字盤、それに、ミリタリーグリーンのストラップがかき立てるのは冒険心だけではない。パイロット・​ウォッチ・​クロノグラフ〝トップガン・ミラマー〟を身に着ければ、戦闘隊の一員になったような気分を味わえるだけでなく、ジャングルや砂漠、ステップ地帯で道なき道を行く探検に思いを馳せることができるのだ。

 だが、パイロット・​ウォッチ・​クロノグラフ〝トップガン・ミラマー〟は、こうした過酷な冒険に本当に耐えられるのだろうか。答えはイエスである。セラミックスという素材の恩恵によりケースは傷に強く、クロノグラフのプッシュボタンは堅牢なガイドで保護されている。また、リュウズはねじ込み式なので埃や細かい砂がケース内に入り込む心配もない。表面が織物のように型押しされたカーフスキンストラップも頑丈で、ステッチや接着も丁寧に施されている。ストラップの端部を飾るのは頑強なIWC製フォールディングバックルである。バックルはしっかりと閉まり、不用意に開いてしまうことはない。〝トップガン・ミラマー〟の堅牢な設計を完成させたのは、サファイアクリスタル製の風防とチタン製のねじ込み式裏蓋である。

 ただし、パイロット・​ウォッチ・​クロノグラフ〝トップガン・ミラマー〟を身に着けたまま、ラリーレイドの後にオアシスで水浴したり、アフリカのステップ地帯で河を渡ったりすることは避けた方が賢明である。防水性が特に高い時計ではないからだ。IWCは、理論上、水深60mの水圧に相当する6気圧防水を保証しているが、これはあくまでも、周囲に動きがまったくない状態での圧力、つまり静的圧力を前提とした防水性能であり、水中で動きを伴う場合を想定したものではない。飢えた野生のワニと格闘することはおろか、水中で腕を素早く動かすだけで、プッシュボタンのガイドを通してケース内に湿気が浸入する可能性がある。〝トップガン・ミラマー〟は砂や埃には強いが、水には弱いのだ。

型押しされたカーフスキンストラップの端部を飾る頑丈で信頼性の高いフォールディングバックル。手首にしっかりと留まる。

内側も外側と同じく

 パイロット・​ウォッチ・​クロノグラフ〝トップガン・ミラマー〟は、使いやすくて頑丈、そして、加工品質が良好である。同様のことが内部機構にも当てはまるのは喜ばしい。計時中、ボタンを押すと針が瞬時にゼロ位置に戻ってリセットされ、計時を再開できるフライバック機能や、約68時間のパワーリザーブ、また、緩急針を廃し、温度変化に高い耐性を持つグリュシデュール製テンワに取り付けられた重さ補正ネジによる微調整など、IWC自社製自動巻きキャリバー89361には高い操作性を実現する多くのテクノロジーが搭載されている。

 7・5㎜というムーブメントの厚さも、堅牢な構造に貢献している。結果、各構成部品を合わせる際の寸法公差を大きく設定することが可能になった。さらに、軟鉄製インナーケースが磁束の影響で精度が悪化するのを防いでくれる。

 秀逸な設計と並び、さまざまな模様彫りやゴールドカラーのエングレービング、ポリッシュ仕上げのネジ頭なども、このムーブメントのグレードの高さを裏付けている。

 ただし、模様彫りについては、オート オルロジュリーの水準とまでは言えない。パイロット・​ウォッチ・​クロノグラフ〝トップガン・ミラマー〟では、機能性が最優先されているのである。それは、同軸上に組み合わされたアワーカウンターとミニッツカウンターにも反映されている。12時位置にある積算計はクロノグラフを作動させると針が動き始め、計測時間はまるで時刻のように直感的に読み取ることができる。ただ、積算計が小さく、数字と目盛りが微細なため、計測時間の判読がやや困難なのは残念な点である。

4WDで出掛ける醍醐味。トヨタのランドクルーザーは、世界を舞台に活躍する冒険家たちが思いつく限りのすべてをこなす。

 視認性はどうだろうか。暗所で発光するのは、センターの針と、3時、6時、9時、12時の4つのインデックスのみ。これは、他の表示要素に阻害されることなく、時刻を明確に認識することを意図した配慮である。

 そして、何と言っても精度の高さは折り紙付きだ。今回のテスト機は、歩度測定機の上でも、実際の着用時にも、日差はわずかプラス2・5秒/日、最大姿勢差も5秒という優秀な結果を見せてくれた。

 パイロット・​ウォッチ・​クロノグラフ〝トップガン・ミラマー〟は、堅牢性、操作性、そして、品質のみならず、精度についても説得力のある時計である。これ以上、何を望めるだろう。おそらく一番必要なのは、冒険に出掛けるための時間ではないだろうか。

時計師からひと言

ロイトリンゲン デッペリヒ時計宝飾店/マイスター時計師
マルティン・トム

セラミックスやチタンのような素材に通暁していることに、エンジニアリング・ブランドIWCの技術的要求度の高さがうかがえます。ケースの加工や表面の仕上げは極めて秀逸で、エッジの処理やポリッシュ仕上げも、IWCの高品質なステンレススティール製ケースと同じように精密に行われています。クロノグラフのプッシュボタンを押した時の感触も確実で、不用意に始動、停止することがありません。パイロット・ウォッチ・クロノグラフ“トップガン・ミラマー”は、ストラップやバックルに至るまでグレードが高く、高額ですが正当な価格設定と言えるでしょう。

技術仕様

IWC/パイロット・ウォッチ・クロノグラフ “トップガン・ミラマー”

製造者: IWCシャフハウゼン
リファレンスナンバー: IW389002
機能: 時、分、秒針停止機能付きスモールセコンド、同軸上に組み合わされた60分および12時間積算計を持つフライバック・クロノグラフ、日付表示
ムーブメント: IWC自社製キャリバー89361、自動巻き、2万8800振動/時、38石、日付早送り機能、耐震軸受け(インカブロック使用)、コラムホイール搭載、重さ補正ネジ付きグリュシデュール製テンワ、パワーリザーブ約68時間、直径30mm、厚さ7.5mm
ケース: ポリッシュ仕上げのセラミックス製、両面反射防止加工を施したドーム型サファイアクリスタル製風防、耐磁性軟鉄製インナーケース、チタン製ねじ込み式裏蓋、チタン製プッシュボタンおよびねじ込み式リュウズ、6気圧防水
ストラップとバックル: 型押しカーフスキンストラップ、片開き式ステンレススティール製フォールディングバックル
サイズ: 直径44mm、厚さ15.5mm、重量115g
価格: 132万5000円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

平常時 クロノグラフ作動時
文字盤上 +2 +6
文字盤下 +3 +5
3時上 +5 +2
3時下 0 +3
3時左 +5 +6
3時右 0 +2
最大姿勢差: 5 4
平均日差: +2.5 +4
平均振り角:
水平姿勢 289° 262°
垂直姿勢 269° 239°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 8pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 9pt.
デザイン(15pt.) 13pt.
視認性(5pt.) 4pt.
装着性(10pt.) 8pt.
ムーブメント(20pt.) 17pt.
精度安定性(10pt.) 8pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 11pt.
合計 83pt.
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