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オメガ/シーマスター 300 マスター コーアクシャル(1/1) 2015年03月号(No.57)

OMEGA Seamaster 300 Master Co-Axial

シーマスター 300 マスター コーアクシャルにより、オメガは歴史に残るダイバーズウォッチの復刻に成功したばかりか、トランスパレントバックでありながら耐磁性も備えるという、比類なき業績を成し遂げた。

イェンス・コッホ: 文 Text by Jens Koch
ニック・シェルツェル: 写真 Photographs by Nik Schölzel
岡本美枝: 翻訳 Translation by Yoshie Okamoto

 
point
・美しくレトロなデザイン
・最新の技術を駆使した実用的な耐磁性能
・極めて高い精度
・説得力のある自社製ムーブメント

point
・日付表示がない
・ダイバーベゼルにミニッツスケールがない
 

磁界を泳ぐ者たちへ

いものと新しいものを結び合わせる時、そこには特別な魅力が生じる。これは、時として建築の分野に見られる現象だが、時計もまた例外ではない。2014年に発表されたシーマスター 300 マスター コーアクシャルで、オメガは新旧の融合を印象深い手法で成功させている。オリジナルモデルとなったのは、オメガが1957年にリリースした美しいダイバーズウォッチである。シーマスター 300 マスター コーアクシャルでは、この歴史に残る名品のデザインが細部まで忠実に再現されているばかりか、ユーザーに益する最新技術、つまり、最新の素材を駆使した革新的な技術が搭載されているのである。それを示唆するのが、文字盤に配された「マスター コーアクシャル クロノメーター」という表記である。この表記を後ろから読むと、搭載ムーブメントが独立機関のスイスクロノメーター検定協会(C.O.S.C.)によるテストに合格し、公式に認定されたクロノメーターであること、そして、コーアクシャル脱進機と最先端の耐磁性能を備えることで、このマニュファクチュールムーブメントが高い精度を約束することを物語っている。ドイツ語でマイスターを意味する「マスター」(日本語では支配する能力を有する者という意味)を堂々と名乗るあたりに、オメガの矜恃が感じられよう。だが、量産時計としては今までどのブランドも成し遂げ得なかった困難な課題をオメガが見事、克服し(訳注:『克服する』の原語は『meistern』。マイスターと同語源)、実現したことを考慮すれば、決して過大評価ではない。実際、耐磁性を付与すると同時に、精度に影響を及ぼすことなく内部機構を見せるデザインにするのは、極めて難しい技術なのである。オメガはまた、時計界で常識とされている耐磁性の限界も超えてみせた。軟鉄製インナーケースを採用することで時計に耐磁性を与えるのは一般的な手法だが、これでは内部機構への視界が遮られてしまうばかりか、確保できる耐磁性も8万A/mあるいは0・1テスラに相当する1000ガウスにとどまるため、オメガはこの伝統的な手法を放棄した。オメガが提示するデータによれば、新型ムーブメントはこの15倍に相当する1万5000ガウス(=1・5テスラあるいは120万A/m)の耐磁性を備えると言う。実際の耐磁性はこの数値を越えているらしいが、それを実証できるテスト機器がなく、証明するに至らなかったとのことである。だが、磁束の発生が最も強いとされるMRI磁気共鳴断層撮影装置でも1・5テスラレベルで、3テスラまで達することは稀であり、ネオジウム、鉄、ホウ酸を主成分とするネオジム磁石で出来た強力な永久磁石の場合でも1・5テスラを超えることはないことを考慮すれば、十分すぎる耐磁性と言えるだろう。

オメガ シーマスター 300 マスター コーアクシャルはそのデザインにおいて、1957年に発表されたオリジナルモデルを踏襲しており、細部に至るまで極めて忠実に再現されている。

日常生活で我々が接する磁束の発生源は、スピーカーやヘッドフォン、電磁調理器、電気モーター、携帯電話などである。タブレット型携帯端末などを固定する専用保護カバーに付いているマグネットからも磁束が発生している。時計の修理工房には必ず脱磁装置があるが、修理のために届けられた時計の精度は脱磁後、必ずもとの良好な状態に戻ると、どの時計師も繰り返し報告しており、精度に悪影響を及ぼす大きな原因のひとつが磁気帯びと言っても過言ではないらしい。
このように、耐磁性はいずれにしてもユーザーに益するところの多い性能なのである。耐磁性が著しく高く、ムーブメントも観察できるというのであれば、これ以上、うれしいことはない。
しかし、オメガはどのような手法でこれほどの耐磁性を備えるムーブメントを作り上げたのだろうか。理論上は、すべての可動部品を磁力や磁気に反応しない素材で作れば耐磁性は確保できるわけだが、パーツの動く速度が速くなればなるほど、磁気帯びと精度の関連性は深刻さを増す。磁束の影響を最も受けやすい可動部品の代表例が、テンワやヒゲゼンマイ、アンクル、そして、ガンギ車である。
オメガは先を見据え、すでに2008年から自社製ムーブメントにシリコン製ヒゲゼンマイを搭載している。今回のテストモデルに搭載されているムーブメントでは、ゴールド製のネジを備えたチタン製テンワのほか、新素材を使用した部品もいくつか加わった。地板や受け、歯車は、これまでと同様、真鍮で作られているが、銅合金である真鍮はもともと磁力や磁気には反応しない。新しいのはニヴァガウスで出来た歯車の真やホゾである。この素材は、スウォッチ グループ傘下のニヴァロックス︲FAR社がオメガ自社製ムーブメントのために特別に開発した合金である。コーアクシャル脱進機に使用されているスティールプレートは耐磁性を持つプレートに変更され、耐震軸受けのバネも非晶質金属のアモルファス合金で作られている。
オメガはこの耐磁技術を2013年にシーマスター アクアテラ 15000ガウスで発表した。2014年には、今回のシーマスター 300 マスター コーアクシャル以外にも、デ・ヴィル トレゾアや、アクアテラのほかのモデルでこの技術が搭載された。
ここで、1989年にIWCが発表したインヂュニア500,000A/mを思い出した読者もいるのではないだろうか。しかし、このモデルは、温度変化によって精度が左右されるという問題があったため、リリース後、すぐに生産中止となってしまった。こうした問題がオメガのモデルで生じないことは、独立機関のスイスクロノメーター検定協会(C.O.S.C.)がさまざまな温度条件下ですべてのムーブメントの精度テストを行うことで証明している。

シーマスター 300 マスター コーアクシャルに搭載されているキャリバー8400は、日付表示と超耐磁性がないことを除けば、キャリバー8500と同一である。2007年に発表されたキャリバー8500は、クロノスドイツ版編集部が実施したテストにおいて、何度も傑出した結果を残している。キャリバー8500では特に、改良型コーアクシャル脱進機の周辺環境が開発し直され、ツインバレルから叩き出される約60時間のパワーリザーブによって、高い精度が長時間持続するのにふさわしい好条件も与えられた。自由振動ヒゲとバランスウェイトによる緩急調整も、高い精度を確保し、正確な微調整を行うのに貢献する。さらに、軸方向への遊びが調整できるようにバランスブリッジに高さを持たせることで、より堅牢な構造が実現した。黒くコーティングされたネジや赤い塗料を盛った文字のエングレービング、また、スパイラル状に広がるアラベスクのコート・ド・ジュネーブなど、ほかではあまりお目にかかることのない装飾も好印象で、ローターは回転するタービンを想起させる。ムーブメントとケースの間に隙間がなく、スペーサーを使用していないことも好感が持てる。
トランスパレントバックの表面は肌触りが良く、ステンレススティール製ブレスレットも手首の形状になじみ、手首の細かい毛が挟まることもない。ただ、バックルもそうだが、ブレスレットのコマのエッジが鋭く、肌に当たるのがやや気になった。バックルに内蔵されているエクステンションは細かい調節が可能で、ブレスレットの長さを自分の手首のサイズにぴったりと合わせることができる。気温が高い夏季や、スポーツをしている最中に、熱や汗でブレスレットがきつく感じられるようになった場合でも、素早く調節できるのでありがたい。
ただし、ケースがやや縦長なことから、手首の細いユーザーにとっては、ブレスレットがラグの部分で折れ曲がり、多少アンバランスな印象を与えてしまうかもしれない。だが、だからと言って時計がしっかり固定されずにぐらついたり、外れたりする危険は生じない。2個のセーフティーボタンを備えたバックルは、開閉操作が簡単で、時計を安全に留めてくれる。

バックルに内蔵されているエクステンションは細かい調節が可能で、ブレスレットの長さを自分の手首のサイズにぴったりと合わせることができる。

水中での安全性を十分に確保するため、ダイバーズウォッチの回転ベゼルは必ず逆回転防止式であることが求められている。潜水時にダイバーベゼルの12時位置にある丸いマーカーを分針に合わせておけば、水中での滞在時間をいつでも読み取ることができる。ダイバーベゼルは安全上の理由から、基本的に反時計回りにしか回せないようになっている。この方式だと、水中で岩塊や他の装備品に接触してベゼルが動いてしまった場合、読み取った潜水時間が実際の潜水時間よりも長くなることがある。結果として早く上がりすぎることはあっても、水中に長くいすぎることはない。したがって、減圧停止の調整に失敗し、生命にかかわるような事故が発生するのを回避することができる。シーマスター 300 マスター コーアクシャルのベゼルは扱いやすく、スムーズな動きと安全性の確保が絶妙なバランスで実現している。ベゼルを回す時に金属的なノイズが生じるが、機能にはまったく影響しない。ダイバーズウォッチの規格には指示されているが、オリジナルモデル同様、ベゼルには1分刻みのミニッツスケールが配されていない。その代わりオメガは、傷に強いセラミックス製ベゼルにリキッドメタルでバーインデックスとアラビア数字インデックスを5分刻みで交互に象嵌した。リキッドメタルは、セラミックスと金属のスムーズな接合を可能にする合金で、ステンレススティールよりも硬い特性を備えている。

1時間刻みで合わせられる時針も実用的な特徴である。扱いやすいリュウズを緩めて第1の設定ポジションまで引き出すと、分や秒の表示に影響を与えることなく時針を動かすことができる。ちょうどテストを行った時がそうだったように、夏時間から冬時間に設定を変更しなければならない場合や、別のタイムゾーンに移動する際などに有益な機能である。第2の設定ポジションでは秒針が止まり、時と分を通常と同じ方法で設定することができる。
だが、この時計ではそう頻繁に手を煩わされることはない。着用時、シーマスター 300 マスター コーアクシャルは一定してマイナス1秒/日の日差を示した。歩度測定機で行ったテストではさらに、ほかのオメガ自社製ムーブメントの優秀な精度をはるかに凌ぐ素晴らしい結果を見せてくれた。24時間後の日差が4つの姿勢で0秒/日、ふたつの姿勢でマイナス1秒/日という精度である。したがって、計算上の平均日差はマイナス0・3秒/日、最大姿勢差は1秒になった。その結果、シーマスター 300 マスター コーアクシャルは、クロノスドイツ版編集部が過去10年間でテストした時計の中で最も精度の高い時計となったのである。

視認性が極めて良好であることも非常にうれしい点である。蓄光塗料を塗布したシルバーカラーの針はマットブラックの文字盤とのコントラストが抜群で、3本の針はすべて長さも十分あり、それぞれを明確に区別することができる。明瞭なミニッツインデックスは優れた視認性を提供し、蓄光塗料が盛られたクサビ型インデックスは暗所でも読み取りやすい。ここに日付が搭載されていれば、完璧な時計なのだが。
とはいえ、オメガが1957年のオリジナルモデルのデザインを忠実に順守したことは、我々にとって喜ばしい事実である。日付表示を廃することさえ、文字盤を完璧な左右対称に構成するのに不可欠な要素なのだから。ベージュカラーのクサビ型インデックスは文字盤の表面よりもやや深くなっており、内側にスティールリング、外側に細かい刻みを備えた回転ベゼルと同様、文字盤の数字や針も調和の取れた印象に仕上がっている。また、やや湾曲したケースも当時のモデルを彷彿とさせる。ただ、今回のモデルでは、ケース側面やブレスレットの外側のコマがヘアライン仕上げになってはいるものの、ポリッシュ仕上げの面が多すぎると感じる愛好家もいるだろう。ヘアライン仕上げが施された大きなバックルは、見栄えは良いが、いとも簡単に傷を付けてしまいそうだ。そのため、バックルの美しく均一な表面仕上げが維持されるのはそう長くはないだろう。だが、加工品質については、ブレスレット、ケース、文字盤に至るまで、非常に好印象である。

ここで、価格を検証してみよう。オメガがシーマスター 300 マスター コーアクシャルに設定した63万円というのは、フェアな価格ではないだろうか。同機種のムーブメントを載せ、日付表示はあるが超耐磁性を持たない名品、シーマスター プラネットオーシャン(57万円)との差額はわずかなのだから。そもそも、オメガが達成した極めて高い耐磁性とトランスパレントバックを同時に備える時計は、ほかのブランドではまず見当たらない。シーマスター アクアテラ マスター コーアクシャルなら、テストウォッチよりもやや安価の58万円で同スペックにエントリーできる。ロレックスやIWC、パネライ、ジャガー・ルクルト、ブランパンがリリースしている自社製ムーブメントを搭載したダイバーズウォッチは、こうしたオメガのモデルよりも高額でありながら、超耐磁性は備えていない。つまり、コストパフォーマンスに関して、オメガは連戦連勝、まさに向かうところ敵なしなのである。
最新の素材と技術を駆使し、破格のレベルでありながら日常使いでも力を発揮する超耐磁性を実現したオメガに並び立つことのできるブランドは、今のところない。比類なきコーアクシャル脱進機を搭載した秀逸な自社製ムーブメントの並外れた精度を考慮すれば、オメガのポイントはさらに加算される。また、傷に強いセラミックス製ベゼルだけでなく、ケースにおいてもステンレススティール製以外にセドナゴールド製ケースをラインナップするシーマスター 300 マスター コーアクシャルは、最先端の技術を体現しており、弱点はほぼ見つからない。クロノスドイツ版編集部がこれまでにテストを行った数ある時計の中で、オメガのシーマスター 300 マスター コーアクシャルが最も優秀なモデルのひとつに挙げられるのは、評価で獲得した点数に限られた話ではないのだ。

コーアクシャル脱進機とシリコン製の自由振動ヒゲを搭載し、傑出した精度を誇るマニュファクチュールムーブメントが、最新の技術により驚異的な耐磁性を備えることで飛躍的な進化を遂げた。

耐磁性テスト

クロノスドイツ版編集部は、強力な磁石を使用して耐磁試験を行った。歩度測定機でまずテストしたのは、ETA6497を搭載し、耐磁性を持たない時計である。この時計は初め、日差+9 秒/日と安定した精度を見せた。次に、磁石を時計の上にかざしてみると、測定はほとんど不可能になり、振り角は半分の約130°まで落ち、精度は+100秒/日から-220秒/日の範囲で変動した。同じテストをシーマスター 300 マスター コーアクシャルでも行ってみたが、磁石を時計の上にかざしても、歩度測定機の上ではなんの変化も見られなかった。日差も変わらず安定しており、振り落ちもなかった。シーマスター 300 マスター コーアクシャルの耐磁性能は、磁石を用いた耐磁試験でも十分に証明されたのである。

技術仕様
オメガ/シーマスター 300 マスター コーアクシャル

製造者: オメガ
Ref.: 233.30.41.21.01.001
機能: 時、分、秒(ストップセコンド仕様)、逆回転防止ベゼル
ムーブメント: オメガ製ムーブメント「マスター コーアクシャル」Cal.8400、自動巻き、2万5200振動/時、38石、フリースプラングテンプ(マイクロスクリューによる微調整)、シリコン製ヒゲゼンマイ、耐震軸受け(ニヴァショック使用)、スイスクロノメーター検定協会(C.O.S.C.)公認クロノメーター、ツインバレル、パワーリザーブ約60時間、直径30㎜、厚さ5.5㎜
ケース: ステンレススティール製、ドーム型サファイアクリスタル製風防(内側無反射コーティング)、ねじ込み式トランスパレントバック、300m防水
ブレスレットとバックル: ステンレススティール製ブレスレットおよびステンレススティール製セーフティーフォールディングバックル(エクステンション内蔵)
サイズ: 直径41㎜、厚さ14.65㎜、総重量162g
バリエーション: ステンレススティール+セドナゴールド製(121万円)、チタン製(86万円)
価格: 63万円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差  秒/日、振り角)

   平常時         
文字盤上 0  
文字盤下 -1  
3時上 0  
3時下 0  
3時左 0  
3時右 -1  
最大姿勢差: 1  
平均日差: -0.3  
平均振り角:    
水平姿勢 284°  
垂直姿勢 257°  

 

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 9pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 8pt.
デザイン(15pt.) 14pt.
視認性(5pt.) 4pt.
装着性(10pt.) 8pt.
ムーブメント(20pt.) 19pt.
精度安定性(10pt.) 10pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 14pt.
合計 91pt.

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