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【78点】ロンジン/ロンジン アビゲーション オーバーサイズ クラウン シングルプッシュピース クロノグラフ(1/4) 2014年05月号(No.52)

LONGINES AVIGATION OVERSIZE CROWN SINGLE PUSH-PIECE CHRONOGRAPH

大きな玉ねぎ型のリュウズと黒地に白の実直な文字盤。眺めているだけで、飛行黎明時代のスピリットを感じるのが、古き良きパイロットウォッチだ。レトロでオーソドックスな雰囲気を保ちつつ、個性と利便性はどのように表現されるのか。

アレクサンダー・クルプ: 文 Text by Alexander Krupp
OK-PHOTOGRAPHY: 写真 Photographs by OK-PHOTOGRAPHY
市川章子: 翻訳 Translation by Akiko Ichikawa


point
・美しくまとめたレトロデザイン
・良質のコラムホイール搭載ムーブメント
・装着感に優れる

point
・ベゼルが緩めで不用意に動きがち
・暗がりでは時針と分針が紛らわしい

空の風を地上で感じて

かに想いを馳せるという行為には、ロマンティックな楽しみがある。30年代の航空黎明期を思い浮かべてみよう。パイオニアの飛行士が、吹きさらしのコックピットに収まっている。風はもろに顔に当たり、メーターパネルに計器類はわずかしか見当たらない。航行をナビゲートする数少ない機器のひとつが腕時計だ。プロペラの爆音の中で腕に目をやる気分は、いかばかりであろうか。数々のパイロットウォッチでも老舗の実力を提示し続けているロンジンから発表された、ロンジン アビゲーション オーバーサイズ クラウン シングル プッシュピース クロノグラフは、クラシックなスタイルに整えられたモデルだ。リュウズは大きく、ケースからやや遠い位置にある。これはパイロットグローブをはめた手でも、すんなり扱うことができるようにするためだ。そしてリュウズのヘッドまで距離があってこそ、夜光の三角マーク付きベゼルも回しやすい。
時計愛好家が、歴史的デザインのパイロットウォッチを何かひとつ欲しい、と考えているとき、このモデルに出くわしてしまうとどうなるだろうか。初期のパイロットに使われていた仕様をとりわけ意識し、デザイン上の力点を大胆に打ち出した佇まいを目にしてしまうと、これは手に入れるべき候補と瞬間的に判断を下すだろう。このモデルならではの特性と能力を吟味するのは、その次になるはずだ。ケース直径は41㎜と腕にしっくりきそう。過去にインスパイアされたワイヤーラグのような作りもなかなか良し(一見、ワイヤーラグ風に見えるが、ストラップ内にはバネ棒が通っている)。レザーストラップもしなやかで巻きやすい。艶やかな文字盤は黒々と、白い印字やトラックがクリアに見える。そして、クロノグラフ機能も、大きなリュウズと同軸で操作性は抜群に良さそうだ。第一印象で心を動かされつつも、やはり冷静な検分は怠れない。

ボリュームはあれども不恰好には非ず。コインエッジベゼルは、圧迫感のない二段構え。ラグは飛行黎明期を思わせるワイヤースタイルだが、実はバネ棒式。使いやすさへの配慮がうかがえる。

外観チェックだけでは分からない

では、メカとしてはどうだろうか。まず注目すべきは、クロノグラフ機構にコラムホイールを使用している点だ。このモデルはプッシュボタンをリュウズと同化させて一本化しており、外部からのアクセス箇所を最小限にまとめている。制御方法を、シングルプッシュクロノグラフとして効率良く作動するコラムホイール式にすることで、操作性が向上しているのだ。そこが興味深いところなのだが、そのコラムホイールの姿はケースの裏側からは見えない。存在を目で味わえず、ステンレススティールの裏蓋の奥には鎮座しているんだなぁと、ぼんやり感じることしかできないのは残念だ。同時に興奮を少々しぼませるのは、裏蓋がねじ込み式ではなくスナップ式なところ。しかも、裏蓋のエングレービングは長々としたモデル名とナンバーだけだ。“ THE LONGINES AVIGATION OVERSIZE CROWN SINGLE PUSH-PIECE CHRONOGRAPH”と文字が続いていても、いささか味気なくそそらない。もっとも、時計の神髄の美を追求してやまない愛好家たちに言わせれば、それは大したことではないはずだ。裏蓋がシンプルなのはこのモデルに限ったことではない。ロンジンのヒストリカルピースである他のパイロットウォッチ陣もそうだ。他ブランドのパイロットウォッチもソリッドバックに文字や数字を入れただけというのは多く見られる、という具合か。しかし、ムーブメントをのぞくひそやかな楽しみを奪われるのは寂しい、と感じる者もいるだろう。ムーブメントを愛する向きは、お気に入りの時計店で裏蓋を開けてもらうといい。目に飛び込んで来るのは自動巻きキャリバーA08・L11。共にスウォッチ グループの傘下で、姉妹会社関係にあるETAが製造している。ローターに入った金文字の記載で分かるように、ロンジンでのキャリバー名はL788・2だ。2012年に導入されたシングルプッシュのクロノグラフムーブメントは、2010年に発表されたA08・L01(以前のA08・231が名称変更になった)のバリエーションとして作られている。ETAはこのキャリバーをETA7750系統の派生としており、寸法や機能の表示のされ方はETA7750に相当する。

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