【86点】ブライトリング/クロノマット GMT

FEATUREスペックテスト
2012.01.01

BREITLING CHRONOMAT GMT

特大サイズのクロノマット GMTに、ブライトリングは自社開発キャリバーの2号機を初めて搭載する。回転ベゼル、クロノグラフ、第2タイムゾーンを備えたクロノマット GMTは、パイロットウォッチに課せられたあらゆる要求に応えるモデルである。

イェンス・コッホ: 文 Text by Jens Koch
ニック・シェルツェル: 写真 Photographs by Nik Schölzel
岡本美枝: 翻訳 Translation by Yoshie Okamoto

point
・考え抜かれた自社開発キャリバー
・パイロットウォッチにあるべき機能をすべて搭載
・素晴らしいバックル

point
・巨大なサイズ
・トランスパレントバックではない

離陸準備完了

ロノマット GMTは一見、ポルシェのカイエンのような巨大なホイールリムを備えたSUVを想起させる。全体的にポリッシュ仕上げが施された、直径47mmのクロノマット GMTのケースは、感嘆の念と同時に、アンバランスなものに対してドイツ人が持つある種の不快感をも呼び起こす。腕時計としては、ここまで巨大である必要がないのは明らかである。だが、クロノマット GMTを気に入るユーザーがいたとて、不思議ではない。しかも、この時計はSUVとは異なり、人類が全員で分かち合わなければならない有限資源をまったく必要としないのだから。
クロノマットは、自分がプレミアムセグメントに属することをただちに意識させてくれる時計である。入念にポリッシュされ、12個のネジが取り付けられた回転ベゼル、クリーンな加工のディテール豊かな文字盤、そして、隙間寸法を最小限に抑え、立体感のあるブライトリングのロゴを配したフォールディングバックルは、卓越したクォリティと加工精度の高さを物語っている。ポリッシュ仕上げによって生まれるケースやベゼル、バックル、インデックス、針の気品は、数多くのスポーティーな表示要素やねじ込み式プッシュボタン、オーシャンレーサーと呼ばれる穴付きのラバーストラップ、また、サイズとの調和が抜群である。手首のためのSUV、つまり、大都会というジャングルでの厳しい日常を生き抜くための畏敬の念さえ抱かせる巨人は、かくして生まれたのである。

スポーティーなエンジン

クロノマット GMTのエンジンは、カリスマとしてのポテンシャルを十分に備えている。ブライトリングが初の自社開発ムーブメント、クロノグラフキャリバー01を発表したのは、2年前のことだ。スイス・グレンヘンの開発チームは労を厭うことなく、既存のキャリバー13に取って代わる新型のクロノグラフムーブメントを完成させた。クロノグラフムーブメントは、すべての部品が正確に噛み合わなければ機能しないことから、開発が困難なことで知られている。
クロノマットでデビューしたブライトリングのキャリバー01はこれまでの間に、いくつかの限定モデルのほか、古典的名作であるナビタイマーにも搭載され、トランスパレントバックを備えたトランスオーシャンの標準モデルでも登場している。GMTという複雑な機能を組み込み、自社開発キャリバー2号機として登場したキャリバー04が最初に時を刻むのは、やはりクロノマットである。

クロノマット GMTは、時代に合わせたデザインと機能を結びつけるという、ブライトリングの美徳をしっかりと体現している。目を引くのはやはり、ディテールにこだわり抜いたデザインだろう。文字盤中央に浮かび上がる正方形は、それぞれの辺が3つのサブダイアルの中心線と重なるように形成されている。アプライドインデックスも、正方形の辺に合わせてデザインされている。インデックスは、単に正方形の辺の部分で切れているのではなく、まるで中央の正方形を縁取っているかのように強調されている。サブダイアルの針も軸の部分が正方形をかたどっており、ベゼルのタブも正方形だ。サブダイアルとベゼルに配された数字のタイポグラフィーも、ゼロを四角形にデザインすることで統一感を持たせてある。タキメータースケール、サブダイアル、ベゼルのタイポグラフィーを踏襲した24時間目盛りには、それぞれ異なる字体が使用され、ひとつの時計に3種類の字体が盛り込まれている。ベゼルの数字には慣れが必要だが、控えめさとは対極にあるクロノグラフにはぴったりのデザインと言えるだろう。

残念ながら、テストウォッチの文字盤は、視認性にやや欠ける感があった。シルバーの針とシエラシルバーの文字盤とのコントラストが弱すぎるのである。スリムなクロノグラフ秒針も、読み取るのがかなり難しい。先端に大きな赤いポイントを備えたGMT針と日付は、他の表示要素よりも明確に読み取ることができた。文字盤には6種類のバリエーションが用意されており、シエラシルバー以外のダークカラーの文字盤の方が、全体的な視認性に優れている。
だが、その一方で、テストウォッチのシエラシルバー文字盤は、明るい場所よりも暗所において格段に良好な視認性を発揮した。時針と分針も、アワーマーカー(12時はふたつの正方形)や回転ベゼルのゼロポイントと同様に明るく発光する。また、クロノグラフ秒針にもわずかながら夜光塗料が塗布されている。