MEMBERS SALON

オメガ/シーマスター プロプロフ 1200 M(1/1) 2010年05月号(No.28)

OMEGA SEAMASTER PLOPROF 1200 M

1970年にリリースされたオメガのプロプロフの復刻モデルは、まるでスティールとワイヤーでできた怪物のようだ。倍の防水性を備えて復活した新生プロプロフは、最新世代の自社製キャリバーを搭載する。

イェンス・コッホ:文 Text by Jens Koch
ニック・シェルツェル:写真 Photographs by Nik Scholzel
岡本美枝:翻訳 Translation by Yoshie Okamoto

point
・秀逸な設計の自社製ムーブメント
・優秀な精度
・エクステンションを内蔵したバックル

point
・重い
・装着時にやや気になる点がある

spec110127ome670_420b.jpg

マニュファクチュールキャリバー。キャリバー8500は、堅牢性と高精度を重視して設計された。

DAS MONSTER AUS DER TIEFE
深海からの怪物

 "プロプロフ"の愛称で親しまれた、奇抜なデザインのシーマスター プロフェッショナル 600mをオメガが市場に送り込んだ1970年は、フォルムやカラーの華やいだ時代だった。プロプロフは、職業ダイバーのために設計された時計である。"プロプロフ"というネーミングからも、プロ仕様であることをうかがい知ることができる。フランスの潜水会社、コメックス社との共同開発で生まれたことから、この愛称で呼ばれるようになった。愛称の元となったフランス語の"Plongeurs Professionhels"とは、プロフェッショナルダイバー、つまり職業ダイバーを意味している。本来、重視されたコンセプトはあくまでも機能性なのだが、型破りなフォルムの特大ケース、ダイバーベゼルを解除するための赤いセーフティボタン、またオレンジカラーのストラップに同色の分針など、プロプロフはすべてのディテールにおいて、70年代という時代に完璧にマッチするモデルだった。
プロプロフは、センセーショナルな潜水ミッションに数多く参加したことでも有名になった。中でも、プロプロフの名を世に知らしめたのは、なんと言ってもヤヌス計画だろう。石油コンツェルン、エルフのために、コメックス社と合同で飽和潜水のテストを行った潜水ミッションである。3人のダイバーが、アジャクシオ湾(訳注:イタリア語読みではアヤッチョ)の水深200メートルの海中に設けた減圧タンクの中で8日間過ごし、日中は最長で6時間、水深250メートルの海底で作業した。ダイバーたちはこのヤヌス計画で、新しい潜水記録を打ち立てることになる。当時、ヘリウムエスケープバルブはロレックスがすでに実験を行っており、1971年にはシードゥエラーに初めて搭載された。一方、オメガはプロプロフで別の路線を行くことになる。飽和潜水を行っている間、そもそもヘリウムの原子がまったく浸入しないようにケースを設計、密閉することで、減圧時に時計が破裂するのを回避しようとしたのである。テストを行うため、オメガの開発ラボには時計業界で唯一の質量分析装置が設けられた。

だが、プロプロフがカルト的存在となった理由は、独特な風貌や水中探検におけるパイオニア的役割、また600メートル防水という、当時としては驚くほど高度な防水性能だけではない。高額であることも、人気の一因を担っていた。当時、プロプロフはロレックスのサブマリーナーの倍の価格だったのだ。 2009年にリリースされた新生プロプロフは、40年先輩の初代モデルと瓜二つである。だが、よく見てみると、いくつかの相違点を発見できる。初代プロプロフでは、高圧にさらされる風防がネジ留め式のリングでワンピース構造のケースに固定されていた。今日の新生プロプロフは耐圧性能の高い裏蓋も備え、ネジ留め式のリングでケースに圧着されている。 ケースバックには、初代モデルのように波模様だけではなく、シーマスター・コレクションのシンボルであるシーホースもエングレーブされている。 時計の表側では、厚さ約0.5cmのサファイアクリスタルが高い圧縮強度を発揮している。

 プロプロフはこれで、水深1200メートルの水圧にさらされてもびくともしない。裏蓋を取り外し可能にしたケースの新しい構造は、新生プロプロフに結果として次の利点をもたらした。プロダイバーが飽和潜水を行えるように、全自動式のヘリウムエスケープバルブを搭載することができたのである。ヘリウムエスケープバルブはケース右側のセーフティボタンの下側に配されている。クリアラッカーのコーティングの下に見える"He"の文字が目印だ。ケースは非常にクリーンな作り込みで、面取りとポリッシュ仕上げを施したエッジと、ヘアライン仕上げを施した面とのコントラストが美しい。 文字盤にも、わずかながら変更が加えられている。日付は、初代の3時位置から4時と5時の間に移動し、テリトリーをめぐって夜光インデックスと争うことはない。その結果、文字盤はシンメトリックにまとまっている。夜光インデックスはアプライドで、上からポリッシュがかけられ、文字盤にペイントしただけのインデックスよりもはるかに高級感がある。回転式ダイバーベゼルを解除するセーフティボタンにも、同じことが当てはまる。ステンレススティール製のプッシュボタンには、初代のカラープラスチックに代わってアルマイト処理を施したオレンジカラーのアルミ製リングが採用された。美観が向上したばかりか、硬度も大幅に増した。

spec110127ome670_420c.jpg

二重構造のケースバック。裏蓋用の開口部がないワンピースケースだった初代モデルとは異なり、復刻モデルではネジ留め式のリングがケースバックを固定する。

プロプロフはクロノメーター証書を備えているが、実際の精度はクロノメーター規格よりはるかに優秀だ。
振り角もすべての姿勢でほとんど変わらない。

  回転ベゼルも堅固になっている。初代モデルでは、回転ベゼルがベークライトでできており、亀裂が入りやすかった。新生モデルでは、傷に強いサファイアクリスタルが回転式ダイバーベゼルを覆い、内側から蓄光塗料を施した分目盛りと黒い背景がプリントしてある。さらに、どんな条件下でも良好な視認性を確保できるよう、サファイアクリスタルベゼルの表面には無反射コーティングが施されている。
結果は素晴らしい。時刻とダイバーベゼルは、日中の視認性が完璧であることはもちろん、暗がりでも良好である。ダイバーベゼルの数字と三角マーカーは、文字盤の時・分針やインデックスと同じように明るく発光する。また、センターセコンドにも蓄光塗料を乗せた長方形のポインターが付いているので、水中で時計が動いているかどうか確認できる。この点と、ダイバーベゼルに蓄光塗料を塗布した分目盛りが毎分ごとに刻まれていることから、プロプロフはダイバーズウォッチに対して定められたドイツ工業規格(DIN)8306およびISO6425を見事クリアしている。市場に出回っているすべてのダイバーズウォッチが、この規格に適合しているわけではない。 変更が加えられたことで簡単になった操作もある。初代モデルではまず、四角形のリュウズを外側のネジでリュウズガードから解除する必要があった。こうしてやっとリュウズを回すことができたのだが、リュウズの厚みがリュウズガードと同じだったことと、四角形というフォルムのために、操作は少々難しかった。復刻モデルのリュウズは、通常のねじ込み式リュウズと同じように操作できる。解除のために手前に回すと、ロックされたリュウズガードの外側の部分も一緒に動く。フォルムも扱いやすくなったリュウズは、これで簡単に回すことができる。
リュウズを第2ポジションに引き出すと、ストップセコンド機能によってテンプが停止し、時と分を通常とまったく変わらずに合わせることができるのに対して、第1ポジションでは、時針を1時間刻みで合わせることができる点も、新生プロプロフの特徴だ。この方法で時針を合わせると、日付も前後にジャンプするので、スペックとしては日付早送り調整機能を積んでいないにもかかわらず、比較的スムーズに日付を修正することができる。ただし、日付を戻したい場合は、時針が8時位置に達してからでないとジャンプしない。 別個に合わせられる時針は、別のタイムゾーンに移動する場合や、夏時間から冬時間に変わる際などに便利である。時針を動かしても秒針は影響を受けずにそのまま動き続けるので、正確な時刻を維持することができる。

これに比べ、ダイバーベゼルの設定はやや面倒だ。中指でオレンジカラーのセーフティボタンを力いっぱい下に押し込みながら、親指と人差し指でベゼルをいずれかの方向に回す。実際に操作してみると、言葉で説明するよりも複雑ではないが、グローブや濡れた手でこれを行うのは難しい可能性がある。その代わり、ベゼルを誤って動かしてしまう危険性はない。 ミラネーゼブレスのフォールディングバックルは扱いやすく、非常に快適である。バックルは、ふたつの大きなプッシュボタンを押すと簡単に開く。内蔵エクステンションシステムは、バックルを開いて内側から親指で軽く押しながらスライドさせると、合計22mm、引き出すことができる。ブレスレットの長さは、エクステンションを戻すことによって、バックルを閉じた状態でも手首の太さに合わせて1mm刻みで調節することができる。ドライスーツを着るのにもっと長さが欲しいダイバーのために、バックルにはさらに26mmのエクステンションが内蔵されている。精巧に作られたエクステンションシステムは、極めて堅固で操作もとても簡単だ。その上、面取りとポリッシュを施したエッジを持つ重厚なバックルは、同じく重厚な設計のプロプロフのケースと完璧に調和している。
オメガは、 "シャークプルーフ"(鮫に噛まれても切れない)と呼ばれるミラネーゼブレスも復活させた。当時の時代の香り漂うメタルメッシュブレスレットは今回、普通のメタルブレスレットと同じように、バックル付近のコマを外して短くしたり、元の長さに戻したりできるようになっている。ブレスレットは加工精度が極めて高く、手首への馴染みも抜群で、気になる角やエッジはまったくない。 総重量279グラムという超ヘビー級で、最大幅55mmという巨大サイズにもかかわらず、ミラネーゼブレスの恩恵によりプロプロフの装着感は驚くほど快適だ。ただ、ケースバックから大きく隆起した波模様とシーホースのレリーフが手首の骨に当たるのが気になった。 70年代のモデルと同様に、今回もオレンジとブラックカラーのストラップが用意された。今回のストラップはラバー製で、時計に良く似合う。ただ、ラバーストラップで装着すると、重厚なケースとのバランス感がやや損なわれ、時計が頭でっかちに見える感が否めない。

spec110127ome670_420d.jpg

美しさと堅固さを兼ね備え、素早く延長できる。2種類のエクステンションシステムを内蔵したフォールディングバックルは、ケースデザインとの相性が抜群だ。

新鮮さを失わず、時代遅れになることなく、70年代のコンセプトが持つ魅力を
現代に再現してみせた点で、オメガは大成功したと言えるだろう。

 新鮮さを失わず、時代遅れになることなく、70年代のコンセプトが持つ魅力を現代に再現してみせた点で、オメガは大成功したと言えるだろう。復刻モデルでは、細部に至るまでこだわりを感じさせる。例えば、リュウズとベゼルの刻み目だ。凸部にはポリッシュをかけ、凹部はヘアラインで仕上げてある。また、アプライドインデックスなど、数々の精巧なディテールも、今日では不可欠とされる高級感を醸し出すのに貢献している。レトロなデザインは、良質であればこそ、今の時代が求める期待にもきちんと応えられるのである。
プロプロフの内部機構には、先端的な技術が駆使されている。2007年初頭に発表されたオメガ初の自社製ベースムーブメントに、改良型のコーアクシャル脱進機を搭載した自動巻きキャリバー8500である。8500では、コーアクシャル脱進機の周囲が新たに設計し直された。動力の伝達がより効率的に行われるように、ガンギ車を以前の2層構造から3層構造に改良し、それに合わせて脱進機まわりのスペースを再設計したのである。テンプは、片側が固定されたテンプ受けではなく、両持ちのブリッジで支えられているので、耐衝撃性が向上するばかりか、縦アガキの調整もより正確に行うことが可能になった。これは、ヒゲゼンマイと同様に、精度にも有益だ。緩急調整は緩急針ではなく、テンプのバランスウェイトで行うため、ヒゲゼンマイは自由に呼吸することができる。1時間に2万5200振動(3.5 Hz)というテンプの振動数も珍しい。ニヴァショック耐震軸受けは、ホゾが特に細くなっている天真のセンタリング性が向上するように改良され、姿勢が変わった時のテンプの誤差が最小限に抑えられるようになっている。約60時間という長いパワーリザーブも好印象だ。切り替え車によって両方向に巻き上げるローターは、軸部にスライドベアリングが採用されており、直列に接続されたツインバレルを巻き上げる。39個の受け石には、摩擦を最低限に抑える役割がある。キャリバー8500を構成するのは、合計202点もの部品だ。

装飾も、モダンな設計のムーブメントにふさわしい。テンワには黒のクロムメッキが施され、ふたつの香箱と何本かのネジはブラックDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングされている。また、外側へスパイラル状に広がるコート・ド・ジュネーブは、オメガが独自に開発した模様彫りである。 キャリバー8500は、堅牢さもさることながら、精度に主眼を置いて設計されており、スイスクロノメーター検定協会(C.O.S.C.)から公式クロノメーター証書が発行されている。そのため、我々は大きな期待をもって歩度測定器でのテストに臨んだが、プロプロフは期待以上の結果を出してくれた。姿勢差による最大日差は3秒と実に優秀で、計算上の平均日差もプラス1.5秒/日と非常に小さかった。また、垂直姿勢でも振り落ちは見られなかった。これには、検討を重ねて改良を施したテンプの耐震軸受けも貢献していると考えて間違いないだろう。 ほぼ完璧だった精度に対して、コストパフォーマンスはどうだろうか。87万1500円で手に入るのは、極めて高い防水性能や見事に再現された70年代調のデザイン、高い加工精度、そして精巧なエクステンションシステムだけではない。新生プロプロフには、高精度で秀逸な設計のハイクラス・マニュファクチュールキャリバーが搭載されているのだ。高額であるのは事実だが、その正当性には十分うなずける。
プロプロフは、そのサイズと勇猛な外貌から、決してシーンを選ばず身に着けられる時計ではない。しかし、装着時にやや気になる点があるのを除けば、説得力は十分だ。相も変わらずアルカイックな風貌を備えつつ、ハイテク(サファイアクリスタルを張ったダイバーベゼル)と高精度の内部機構(最新鋭のコーアクシャルムーブメント)で身を固めた深海からの怪物は、水中が苦手という人さえも味方に付けてしまうことだろう。

技術仕様
シーマスター プロプロフ 1200M

製造者: オメガS.A.
Ref.: 224.30.55.21.01.001
機能: 時、分、秒、日付、セーフティボタンでロックする回転式ベゼル、ヘリウムエスケープバルブ
ムーブメント: オメガ8500、自動巻き、クロノメーター、2万5200振動/時、39石、ツインバレル、耐震軸受(ニヴァショック使用)、グリュシデュール製テンプ、バランスウェイト付きフリースプラングテンプ、コーアクシャル脱進機、パワーリザーブ約60時間、直径29mm、厚さ5.5mm
ケース: SS製、両面無反射コーティングを施した厚さ4.9mmのサファイアクリスタル、ネジ留め式裏蓋、ねじ込み式リュウズ、1200m防水
ストラップとバックル: ミラネーゼブレスおよびエクステンションシステム(26mm)と微調整可能なスライド式エクステンション(22mm)を備えたSS製フォールディングバックル
サイズ: 55×48mm、厚さ17.5mm、総重量279g
価格: 87万1500円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (日差 秒/日、振り角)

文字盤上 +1
文字盤下 +2
3時上 +1
3時下 0
3時左 +3
3時右 +2
最大日差: 3
平均日差: +1.5
平均振り角:
水平姿勢 275°
垂直姿勢 276°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 10pt.
操作性(5pt.) 4pt.
ケース(10pt.) 10pt.
デザイン(15pt.) 14pt.
視認性(5pt.) 5pt.
装着性(10pt.) 6pt.
ムーブメント(20pt.) 18pt.
精度安定性(10pt.) 10pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 13pt.
合計 90pt.

>>オメガのモデル一覧はこちら

前の記事

パネライ/ルミノール 1950 3デイズ GMT

次の記事

ジン/EZM7

おすすめ記事

pick up MODEL

正規時計販売店

正規時計販売店

高級時計を取り扱う全国の正規時計販売店をご紹介。各店が行うフェア情報やニュースもお届けします!

時計ランキング

時計ランキング

その年の新作モデルや、機構、仕上げの完成度など、毎回決められたテーマの中から、優れた10本を時計ジャーナリストたちが選出します。

スペックテスト

スペックテスト

クロノスドイツ版の人気連載「TEST」の翻訳記事。腕時計のデザイン、機能などをポイント性によって評価します!

基礎からの時計用語辞典

基礎からの時計用語辞典

時計の部品、機構、ブランド名など、基礎から専門用語まで、広範囲にわたって解説します。時計の知識を深めるための用語辞典です。

PAGE TOP