【89点】オリス/プロパイロット デイト

2026.08.12

オリスは2025年11月発表の新作「プロパイロット デイト」により、自社の定番であるパイロットウォッチコレクションを、より現代的な日常使いの腕時計へと発展させた。古典的なパイロットウォッチのDNAに、新たに6時位置へ配置された日付窓や、立体的なテクスチャー文字盤が組み合わされた新モデルが登場した。優れたコストパフォーマンスや、細かなデザインの改良も要注目だ。

文字盤はレザーのような質感を持ち、光の反射を防ぐマットな仕上がりだ。アラビア数字インデックスには新しいタイポグラフィを採用し、文字盤中央から浮かび上がる立体的な分目盛りが特徴的である。
リュディガー・ブーハー:文
Text by Rüdiger Bucher
オリス:写真
Photographs by Oris
Edited by Yousuke Ohashi (Chronos-Japan)
[ウォッチタイムドイツ版 2026年3月4月号掲載記事]
© WatchTime Germany
Originally published in WatchTime Germany
Reprinted with permission.


あえてツールウォッチにしない現代的アプローチ

 2014年に導入された「プロパイロット」は、オリスのコレクションにおいてますます重要な役割を果たしている。海をテーマにした「アクイス」や「ダイバーズ」とは異なり、パイロットウォッチの伝統に歴史的ばルーツを持ちながらも、それを現代のライフスタイルに合わせて再解釈したコレクションだ。

 オリスは、本作「プロパイロット デイト」をあえて厳密なツールウォッチとして設計しているようには見受けられない。12時位置の三角形といった、厳格なパイロットウォッチのコードが見当たらないからだ。その一方で、操作しやすい大きなリュウズ、センターセコンドを備えたすっきりとした文字盤、そして明確なコントラストなど、日常使いの腕時計としても理にかなったパイロットウォッチのDNAをしっかりと受け継いでいる。これらは、パイロットウォッチ特有の優れた視認性をもたらし、どんな腕時計にも適した普遍的な要素だ。

 オリスが2025年11月に発表した新しいプロパイロット デイトは、3時位置に大きな日付窓を持つ「ビッグクラウン プロパイロット ビッグデイト」とは異なり、6時位置に小さめの日付窓を備えている。これは搭載されているムーブメントの違いによるものだ。ビッグデイトの方ではセリタ製Cal.SW220(曜日表示は備えているがそのための窓はない)が搭載されているのに対して、新作には広く普及しているセリタのCal.SW200が採用された。

プロパイロット デイト

レザーのようにも見える独特な表情を持ち、分目盛りのあたりが盛り上がった仕様の文字盤。針やインデックスの蓄光に用いられたアクセントのオレンジなど、モダンな意匠の印象を与える新作だ。

 日付を6時位置に配置したことで、文字盤の左右対称性がより強調されている。さらに、このプロパイロット デイトは、最新世代のプロパイロットにおける最初のモデルでもある。腕時計をより現代的にアップデートするために、オリスはさまざまなディテールに改良を加えた。

視認性を高める新タイポグラフィと洗練されたケース

 外見上、大きく3つの変更点がある。第1に、アラビア数字インデックスは新しいタイポグラフィを採用した。丸みがやや抑えられ、わずかにミリタリーテイストが強くなった。ビッグクラウン プロパイロット ビッグデイトのフォントに独特の魅力を与えていた「4」の数字の丸みを帯びたラインが失われたのは惜しまれるが、全体的に数字が角張って力強くなっており、その違いは「4」のほかに「9」で最も顕著に表れている。「11」は、ふたつの「1」が非常に接近しており、ローマ数字の「II」のように見えるのが新鮮だ。このインデックスは垂直方向に丁寧なサテン仕上げが施されており、高級感のあるルックスだ。

上から下へ垂直にサテン仕上げが施されたアプライドインデックス。光を捉えて美しく輝き、文字盤に高級感のあるルックスを演出している。

 第2に、質感のある文字盤の表面だ。ルーペで見るとレザーのような質感があり、遠くから見ると反射を防ぐザラザラとしたマットな表面に見える。それゆえに、サファイアクリスタルの内側だけでなく外側にも無反射コーティングが施されていれば、さらに理想的だっただろう。そして第3に、立体的な分目盛りである。文字盤の中央から分目盛りの周囲は立体的に浮かび上がり、各時間に合わせて隆起が設けられ、全体的に厳格なデザインの中に遊び心をもたらしている。

 ステンレススティール製のケースも、同価格帯の多くの時計に見られるものより一段と洗練されている。まず目を引くのは斜めに刻み目が入ったベゼルだ。これは自社製ムーブメントを搭載した「プロパイロット X」も含め、すべてのプロパイロットモデルに共通するアイコニックな意匠であり、その形状は飛行機のジェットエンジン・タービンからインスピレーションを得ている。

 新しいプロパイロット デイトでは、この要素が裏蓋の縁にも施されており、リュウズを上から見た際にもその刻み目を確認することができる。さらに、サテン仕上げをベースとしたケースは、ラグの下端やケース側面下部の面取り部分など、控えめに磨き上げられたポリッシュ仕上げの要素が立体感を引き立てている。

 プロパイロット デイトには、チョーク(グレー)、モス、ブラックの3つの文字盤カラーがあり、それぞれにレザーまたはステンレススティール製ブレスレットが用意されている。今回のテストでは、チョーク文字盤に同色のスエードストラップを合わせたグレーのモデルを選んだ。そのデザインは、全体的なグレーのトーン、ブラックの針、そしてオレンジの差し色の相互作用によって見事に調和している。ただし、暗所での視認性には難点がある。針と小さなインデックスに塗布されたオレンジ色のスーパールミノバは発光が弱く、さらに針への塗布面積が狭いため、薄暗い場所では時刻を読み取りにくい。

航空機から着想を得た独創的な「リフト」クラスプ

 視認性の課題はあるものの、プロパイロット デイトの手首へのフィット感は非常に良好だ。ラグが側面に向かってわずかに下方にカーブしているケースフォルムが功を奏している。レザーストラップを無段階で長さ調整できるクラスプの構造も大きく貢献していると言えるだろう。これにより、自分の好みに合わせて腕時計をミリ単位でぴったりと、あるいはゆったりと着けることができる。一度長さを設定すれば、あとは独創的な「リフト」クラスプで簡単に開閉が可能だ。

飛行機のシートベルトのバックルを模したオリス独自の「リフト」クラスプ。先端に刻まれた「LIFT」の文字通り、持ち上げるだけで簡単にロックが解除される構造を採用している。

 飛行機のシートベルトのバックルを模したこのクラスプは、先端を持ち上げるだけで開く画期的な仕組みになっている。ただし、閉じる際にはスプリング式のバーが開いていることを確認する必要があり、そうしないとうまくロックされない。毎日愛用していると、明るい色のスエードストラップにはすぐにエイジング(使用感)が現れることに気づくはずだ。これは天然素材の性質上避けられないものであり、ストラップ自体のしなやかさや長所を損なうものではない。

 歩度測定器による精度テストでは、平均日差はわずか+4秒と良好な結果を示したが、姿勢差によるばらつきがやや大きかった。「リュウズ下」の姿勢でのプラスの数値が大きすぎるため、夜間に時計を外してリュウズ側を下にして横置きした場合(これが機械式時計にとって最も負担の少ない姿勢とされるが)、想定より進んでしまう可能性がある。

コストパフォーマンスに優れた実用的なスイス製腕時計

 オリスはプロパイロット デイトにおいて、他の多くのパイロットウォッチメーカーとは異なるアプローチをとっている。歴史的なオリジナルモデルの復刻にとどまらず、テーマをより抽象的に解釈し、わずかにフィールドウォッチの要素も併せ持つモダンで洗練されたデザインを作り上げている。スエードストラップモデルで38万5000円(税込み)という価格帯の機械式時計としては、プロパイロット デイトは驚くほど多くの高品質なディテールを備えており、魅力的な価格で真に優れたスイス製腕時計を求めているすべての人にとって、間違いなく検討の価値がある1本と言えるだろう。


オリス「プロパイロット デイト」のスペック

プラスポイント、マイナスポイント

+point
・パイロットウォッチの伝統とモダンな要素を融合させた個性的なデザイン
・マットな文字盤とサテン仕上げインデックスによる優れたコントラスト
・手首に合わせて無段階の長さ調整が可能なストラップとクラスプ
・スイス製機械式時計として非常に魅力的な価格設定

-point
・暗所におけるルミノバの発光が弱く視認性が低い
・「リュウズ下」のポジションにおいて強い進みが見られる

技術仕様

製造: オリス
リファレンスナンバー: 01 733 7805 4163-07 6 20 15LC
機能: 時、分、センターセコンド(秒針停止機能付き)、日付表示(クイックチェンジ機能付き)
ムーブメント: Cal.733-1(セリタCal.SW200-1ベース)、自動巻き、2万8800振動/時、パワーリザーブ約41時間
ケース: サテン仕上げのステンレススティール製ケース、内側無反射コーティングの両面ドーム型サファイアクリスタル製風防、ねじ込み式リュウズ、ミネラルガラスのシースルーバック(スクリュー式)、100m防水
文字盤: テクスチャー仕様のチョーク(グレー)文字盤、縦方向のサテン仕上げが施されたアプライドインデックス、オレンジ色のスーパールミノバ
ストラップとクラスプ: グレーのスエードストラップ、オリス独自の「リフト」開閉機構を備えたステンレススティール製フォールディングクラスプ
サイズ: 直径41mm、厚さ12mm、ラグからラグまで48.8mm、ラグ幅20mm、重量97g(実測値)
価格: スエードストラップモデル:38万5000円(税込み)ブレスレットモデル:42万9000円(税込み)

本記事はウォッチタイム ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験

最大姿勢差: 12秒
平均日差: +4秒/日
着用時平均日差: +6秒/日

評価

ストラップとクラスプ(最大10pt.) 9pt. 無段階調整が可能な独自の「リフト」クラスプが、個人の手首に合わせた優れた装着感を提供する。
操作性(最大5pt.) 5pt. 操作しやすい大型のリュウズを備え、日付調整や時刻合わせなどの操作が極めて容易である。
ケース(最大10pt.) 8pt. 斜めに刻み目が入ったベゼルや、サテンとポリッシュの巧みな仕上げ分けなど、価格以上の洗練されたディテールを持つ。
デザイン(最大15pt.) 13pt. パイロットウォッチの伝統的なコードとモダンな要素を高い次元で融合させた、オリスならではの独創的なデザイン。
文字盤と針(最大10pt.) 8pt. レザーのようなマットな質感の文字盤と、立体的で美しいサテン仕上げのアプライドインデックスが魅力的だ。
視認性(最大5pt.) 4pt. 日中の視認性は極めて高いが、暗所でのルミノバの発光が弱く、夜間の読み取りにはやや難がある。
装着性(最大5pt.) 5pt. 下方にカーブしたラグと無段階調整クラスプの恩恵により、腕へのフィット感と安定感は非常に良好。
ムーブメント(最大20pt.) 13pt. 信頼性の高いセリタのCal.SW200-1ベースのムーブメントを採用。実用十分なスペックを誇る。
精度安定性(最大10pt.) 5pt. 平均日差は良好な範囲に収まっているが、特定のポジション(リュウズ下)での進み幅がやや大きい。
コストパフォーマンス(最大10pt.) 10pt. 高品質なディテールとオリス独自の機能性を考慮すると、魅力的な価格設定で非常に高い価値を提供している。
合計 80pt.



Contact info: オリスジャパン Tel.03-6260-6876


「オリス スター エディション」はレトロ復刻ウォッチの中で最良のモデルのひとつか?

FEATURES

オリス 2026年の新作時計を一挙紹介!

FEATURES

オリスの新作ビッグクラウンポインターデイトは日常使いの「これ1本」。歴史、そしてデザインの秘密に迫る

FEATURES