【85点】オメガ「シーマスター ダイバー300M マスター クロノメーター」のスペックをテスト

FEATUREスペックテスト
2021.10.26

すべてにおいて高いクォリティ

 セラミックス製文字盤、サテン仕上げのチタン製針、セラミックスとチタンで出来たケース、セラミックス製尾錠を備えたラバーストラップは、すべてが高級感のある仕上がりで、オメガが長年、トップブランドのひとつであることを感じさせる。その印象は裏側から見ても変わらない。裏蓋に刻まれた「DIVER 300M」というモデルネームは、裏蓋をねじ込んだ時に必ず12時位置に来るように設計されている。これは、「ナイアードロック」と呼ばれるバヨネットマウント方式によるもので、オメガが特許を取得した技術である。裏蓋の縁に施されたポリッシュ仕上げの波模様の刻み目も美しい。その内側がサテン仕上げのインナーリングになっており、さらに内側にようやく、この時計の心臓部を見ることができる。個別に装飾され、非磁性部品で構成された、極めて精度の高い自社製ムーブメント、キャリバー8806である。

マスター クロノメーター

これはすべての現行シーマスター ダイバー300Mに共通することだが、ダイアルもセラミックス製である。かつて採用され、現行モデルで復活した波模様はレーザーを用いることで彫られている。

 自社開発ムーブメントが誇るこうしたメリットにより、オメガはスイスクロノメーター検定協会(C.O.S.C.)による精度テストでは飽き足らず、数年前からスイス連邦計量・認定局(METAS)にも検定を依頼している。時計は組み立てられた状態で、機能安定性、精度、防水性能、パワーリザーブ、1万5000ガウスもの磁束下における耐磁性能といった観点でテストされる。すべてのテストに合格した時計は、METASによってマスター クロノメーターと認定される。オメガの生産本数が多いことから、METASはビエンヌにあるオメガの本社ビルに支局を構えているが、テストの独立性や公平性は確保されるようなシステムが構築されている。

 テストウォッチは歩度測定器によるテストで平均日差プラス3・8秒/日、着用テストではプラス3秒/日と、高い品質基準で生産されていることを証明してくれた。最大姿勢差もわずか2秒だった。これはクロノスドイツ版編集部で行ったテストにおいて、どのブランドもかつて達成したことのない優秀な数値である。

コーアクシャル脱進機

Cal.8806でも採用されているコーアクシャル脱進機。3層のガンギ車の歯先とアンクルの3つの爪石の接触面積を極小化することでロスの少ない伝達効率を実現する。

陸上でも水中でも

新しいシーマスター ダイバー300Mを日常使いするユーザーは快適な装着感、良好な視認性、搭載ムーブメントの高い精度に感銘を受けるだろう。また数週間経っても、セラミックス製尾錠に傷ひとつないことが確認できるはずである。着用テストは初夏に行ったがスイミング、テニス、サイクリング、いずれにおいても信頼できるパートナーであることが実証された。

 さらに、この高級腕時計で実際にダイビングするならば、強く発光する蓄光塗料、300mの高い防水性能、サンゴやダイビング器具でも傷付くことのないケース素材を高く評価するに違いない。ラバー製ストラップは標準的な長さであるため、この時計は、暖かい地域でウェットスーツを着用しないでダイビングをするのに適している。ダイビング用の手袋を着用していなければ、必ずしも扱いやすいとは言い難いベゼルもそれほど苦には感じないだろう。ダイバーズウォッチ界の巨人といえども、すべてが可能とはいかないのである。だが、多くのことを実現できることは確かだ。

非磁性部品で構成された精度の高い自社製自動巻きムーブメント、Cal.8806。トランスパレント仕様の裏蓋は特許取得のナイアードロックによって、「DIVER 300M」の文字が必ず12時位置に留まるように取り付けられる。