1891年、米オハイオ州で設立されたボール ウォッチ。創業時に製造していた鉄道標準時計の哲学を受け継ぎ、現在はスイスにて精度と耐久性、視認性に優れた機械式時計の開発に注力するブランドである。今回フォーカスするのは、複数の潮汐表示を備えた「ロードマスター オーシャン エクスプローラー」。釣りやサーフィンなど、海でのアクティビティをより豊かに楽しむためのタイムピースだ。

Photographs by Yu Mitamura
加瀬友重:編集・文
Edited & Text by Tomoshige Kase
潮汐表示を美しく収めたボール ウォッチの意欲作
海好きたちの、海遊びへの欲求は年中無休だ。例えば冬のシーバスゲームはベイトパターン(捕食するエサの傾向)が幅広く、ルアー選択が難しくなる。だがその難しさゆえ、熱心な釣アングラーり人ほど攻略に心を燃やし、寒夜の湾奥でベイトの推理とキャストを繰り返すのである。サーフィンも然り。冬場は太平洋側、特に千葉以北の波乗りたちにとって、東の海上を進む低気圧が福音となる。北東のうねりが入る美味しいポイントを狙って、厳しい冬の波に遊ぶというわけだ。そんなアクティブな海好きたちの手元にふさわしい、タフな機械式時計がある。それがマリンアクティビティに役立つ機能を多数装備した、ボール ウォッチの「ロードマスター オーシャン エクスプローラー」だ。

本作の“海にまつわる機能”を順次解説していこう。まずは6時位置のインダイアルに注目してほしい。大潮・小潮の状況はここで判別する。コンパスのような針が“SPRING”を指していれば大潮、“NEAP”ならば小潮となる。大潮とは干満の差が最も大きくなる日、小潮は逆にその差が最も小さくなる日で、それぞれ月に約2回ずつ発生する。潮の動きが活発な大潮は「魚の食いが立つ」と言われ、海釣りファンが必ずチェックする情報なのである。
干潮・満潮の時刻は、黒地と白地に分割されたインナーディスクと、赤と緑に塗り分けられたアウターベゼルを使って読み取る。まずはインナーディスクの曜日表示を、満潮時刻の位置まで回す。次にアウターベゼルのみを回して、“HIGH TIDE”の表記を設定した満潮時刻に合わせる。これで向こう2週間分の満潮時刻(曜日表記直下の短い目盛り線が指す位置)と、“LOW TIDE”の文字が示す当日の干潮時刻を知ることができるのだ。


こうした本作ならではの機能に加え、そのタフネスにも言及しておくべきだろう。ケースとブレスレットには耐食性に優れた──すなわちサビに強い316L SSを採用。また防水性はもちろん耐久性、耐磁性、耐衝撃性も極めて高いレベルを実現している。屋外でのアクティビティを不安なく楽しむために、「頑丈であること」は欠くべからざる条件。創業以来、130年以上にわたり堅牢な時計を作り続けてきたボール ウォッチの面目躍如と言えよう。夜間の視認性も問題なしだ。ベゼルの文字にはスーパールミノバを塗布。ムーンフェイズの月相表示部には自発光マイクロ・ガスライトを組み込み、暗闇でも月の満ち欠けを鮮明に表示する。

釣りやサーフィンはもちろん、シュノーケリング、潮干狩りからファミリーでの磯遊びに至るまで。あらゆるマリンアクティビティに、このロードマスター オーシャン エクスプローラーを活用していただきたい。またスマートなルックスを持つ本作は、海だけでなく街で身に着けても映える時計である。翻って「街にいるときも、海を感じさせてくれる相棒」でもある、と申し添えておく。

潮汐表示機能を備えたユニークなモデルとして、2022年に登場した本作。既存のブルー文字盤に加えて、今回新たにブラックとグリーンがラインナップした。視認性の良さと存在感の強さを両立する、個性的なデザインが目を引く。自動巻き(Cal.RR1803-C)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間、SSケース(直径41mm、厚さ12.95mm)。100m防水。世界限定1000本。各52万8000円(税込み)。



