2021年新作時計から厳選！BEST BUY WATCH／複雑時計編

複雑機構。それは重力に抗うトゥールビヨンに代表される、機械式時計の中でも特に複雑な構造を持つものだ。当然、その具現化には高度な技術力を要し、時計の“格”を決める重要な指標にもなる。それゆえ各社は自らの誇りをかけて、知恵を絞り、心血を注ぐ。ここに集めたのは、複雑機構の中でも高い実用性で人気の永久カレンダーと年次カレンダー機構を搭載した最新モデル。どれも素晴らしく、これを作る人の英知と夢を感じずにはいられないものばかりである。

『クロノス日本版』編集長がアドバイス！
複雑時計選びのポイント

複数の針でさまざまな表示を行う複雑時計は、いわば機械式時計の“華”。技術力を見せたい各社は、毎年のように複雑時計をリリースする。技術が進化したことで、現在の複雑時計は精度も良くなり、壊れにくくなった。とはいえ、繊細な複雑時計には、少しばかりの気配りが必要だ。ショックを与えない、そして水にさらさないといった配慮が、時計をぐっと長持ちさせる。

複雑時計を選ぶ際のポイントは、きちんと修理費を知っておくこと。同じような機構であっても、メーカーによって修理費はまちまち。複雑時計を買ううえで大事なのは、イニシャルコストよりもランニングコストなのだ。また、自動巻きを載せた複雑時計の場合、ワインダーにはお金を惜しまないこと。

今買うべき“複雑時計”9選

パテック フィリップ「年次カレンダー 4947/1A」

日付の修正が1年間で一度（3月1日）だけの年次カレンダーと、122年間で約1日しか誤差の生じない高精度ムーンフェイズを併せ持つ。月・曜日・日付とムーンフェイズ表示の調整はケース側面のボタンで行う。

A.ランゲ＆ゾーネ「ランゲマティック・パーペチュアル」

「ランゲマティック・パーペチュアル」の誕生20周年を祝う、ブルー文字盤をまとう限定モデル。永久カレンダーとアウトサイズデイトを併載した初の腕時計で、複雑ながら利便性に優れた調整機能を備えている。

ヴァシュロン・コンスタンタン「オーヴァーシーズ・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダー・スケルトン」

わずか厚さ8.1mmのケースにフルローター自動巻きと永久カレンダーを搭載する傑作。スケルトン化された文字盤からは、2100年まで調整を必要としないカレンダーを制御する大型レバーの動く様を堪能できる。

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク パーペチュアル カレンダー」

ロイヤル オークの永久カレンダー搭載機に追加されたSSケースのブルー文字盤モデル。複雑機構を備えながら、ケースの厚みは10mm以下まで抑えられ、ブランドの高い技術力がうかがえる。トランスパレントバックからのぞくパーツ群はこの上ない美しさ。

ブルガリ「オクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダー プラチナ」

世界最薄の永久カレンダー。レトログラード式の日付や、インダイアルの月と曜日、6時位置のリープイヤーなど、カレンダー表示はすべてが独立しており視認性に優れる。薄さはもちろん、加工の難しいPtながらケースを多面で構成している点にもブルガリの技術力が垣間見える。

H.モーザー「ストリームライナー・パーペチュアルカレンダー」

流線的な曲面を持つストリームライナーのケースに、永久カレンダーを組み合わせた新作で、一般的な永久カレンダーに比べてシンプルな操作性と外観を持つ。曜日表示を除き、通常と変わりない小窓で日付を、中心の短い針で月を表示し、うるう年表示は裏側に移動した。

ユリス・ナルダン「マリーン トルピユール アニュアルカレンダー クロノグラフ」

かつてのマリンクロノメーターの意匠を残す「マリーン トルピユール」コレクションに加わったクロノグラフ。年に1回の調整で済むアニュアルカレンダーは、9時位置の赤い針で月を、6時位置の小窓で日付を表示し、リュウズひとつで前後調整できる。

カール F. ブヘラ「ヘリテージ バイコンパックス アニュアル ルツェルン」

ブランド創業者の家族が所有するクラシックカーからインスピレーションを得た限定モデル。車のボディーカラーと同じブルーを、クロノグラフのインダイアルと文字盤外周のタキメーター部分に取り入れた。こう見えても年次カレンダーを搭載する。

パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF アニュアルカレンダー」

大の月と2月末以外の小の月を見分けることができる年次カレンダー。さらにCal.PF339では毎年の2月を29日前提としているため、うるう年であれば1年通してカレンダーの修正が必要ない。122年間で約1日の誤差しか生じない高精度ムーンフェイズ付き。

腕上に詰め込まれた夢と英知が
男の人生を豊かにしてくれる

月・曜日・日付、月齢という異なる種類と長さの時間表示。あるいは大の月と小の月の自動判別。これを大きさも形も多様な数百の部品が複雑に噛み合うことで成し得るのだから、機械式時計に、またそれを作る人に感嘆する。SSケースと新型ブレスレットの眩ゆい輝きが、その“偉業”を際立たせているようだ。