エレガンス、誠実さ、清潔感。ビジネスに必須の要件を満たしたドレスウォッチの、さらなるパフォーマンス。それを改めて実感できるのが、Tシャツと組み合わせることで完成するサマースタイルだ。ドレスとカジュアル、異なるもの同士が互いの魅力を引き立て合うことで、そこに抜群の格好良さが生まれる。ON/OFFの境界線が曖昧でシームレスになった今だからこそ、そんな装いにリアリティがある。というわけで、ここでは夏を謳歌するための最高の組み合わせを6つのカテゴリーで提案する。
スレンダーな時分針と外周に規則正しく並ぶミニッツトラック、4カ所の楔形バーインデックスを特徴とする無駄のないミニマルなデザイン。オンタイムには袖口に違和感なく収まる厚さ6.79mmという超薄型。そして、漂う華美ではない慎ましやかなエレガンス。スイス屈指の名門マニュファクチュールが手掛けるドレスウォッチ「パトリモニー」とTシャツの相性はご覧の通り。この“ギャップ”が抜群に格好いいのだ。
Tシャツ/1万8700円、レインメーカー。(問)レインメーカー Tel.075-708-2280。パンツ/3万7400円、タンジェント。(問)タンジェント Tel.050-5218-3859。スカーフ/2万3100円、ユーゲン。(問)イデアス Tel.03-6869-4279。手に持ったメガネ/5万2800円、E5 アイヴァン。(問)アイヴァン PR Tel.03-6450-5300
菊池陽之介:スタイリング Styling by Yonosuke Kikuchi
竹井 温(&’s management):ヘア&メイク Hair & Make by Tazuru Take(i &ʼs management)
三浦アラン(Image):モデル Modeled by Alan Miura(Image)
安部 毅:文・編集 Text & Edited by Takeshi Abe
記載の価格はすべて消費税を含んだ税込み価格です。
傑作ドレスウォッチ × 白いTシャツ
ギャップ映えという基本原則
角型時計の傑作として1922年に発表された「タンク ルイ カルティエ」。直線的なケースデザインと細部の意匠は往時のアールデコスタイルを受け継ぐもので、普遍的な魅力にあふれている。そんな美しきドレスウォッチを引き立ててくれるのが、シンプル&ベーシックを探求する“白T”の専門店が開発したTシャツだ。「デニムのための白Tシャツ」をうたい、生地やパターン、縫製にいたるまで随所にブランドの妥協しないクリエーションが表れている。
Tシャツ/1万3200円、#FFFFFFT。(問)#FFFFFFT Tel.03-6804-5746。デニム/3万1900円、タンジェネット。(問)タンジェネット mitsuruyoshiya@gmail.com。バッグ/5万9950円、テクネ。(問)カナル Tel.03-6661-6190。ソックス、シューズ/ともにスタイリスト私物
カルティエの「タンク ルイ カルティエ」に代表される傑作ドレスウォッチとTシャツを楽しむ上で、まずは基本の〝キ〞となる「白T」を。というわけで、東京・千駄ヶ谷にある白無地Tシャツ専門店「#FFFFFFT(シロティ)」を訪ねてみた。同店は白無地Tシャツに特化した世界初の〝白T専門店〞として2016年にオープンし、これまで累計400種類以上の白Tを取り扱い、数多くのブランドとコラボレーションも行う名店だ。そこでオーナーの夏目拓也さんと厳選した白Tが写真の4点である。
写真1は「デニムのための白Tシャツ」というコンセプトを掲げる話題作で、そこには夏目さんのポリシーが随所に注がれている。良質な米綿100%の太番手の綿糸を通常の約2倍の量使用したオリジナルの超肉厚生地、首元の伸びや型崩れを防止する耐久性の高い極太のバインダーネック、ユニセックス対応の普遍的なシルエットなどが特に秀逸だ。
ほかには、首周りにニュアンスを生むモックネック(写真2)やギザコットンを高密度に編み立てクリーンな印象を強調したもの(写真3)、生地感やディテールで見事なヴィンテージ感を演出したもの(写真4)などがそろう。いずれも〝4者4様〞の個性があり、ドレスウォッチとのギャップが楽しめる理想の白Tなのだ。
傑作ドレスウォッチカタログ
インデックス間の下底と上底、時針と分針の長さ、インデックスの長さとインデックスから文字盤中央までの長さ。エレガンスを極める美観は緻密に計算されたもので、随所に黄金比が採用されている。1950年代の時計に着想を得たデザイン。手巻き(Cal.1400)。20石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPGケース(直径40mm、厚さ6.79mm)。3気圧防水。314万6000円。(問)ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755
1917年に誕生した初代「タンク」の正方形に近いケースフォルムを、3代目当主ルイ・カルティエが好む黄金比に基づき、やや縦長に改良したアールデコスタイルの傑作とされる角型時計。ケースにはピンクゴールドを採用する。手巻き(Cal.1917 MC)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約38時間。18KPGケース(縦33.7×横25.5mm、厚さ6.6mm)。日常生活防水。190万800円。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-301-757
一切の無駄を削ぎ落として審美性を追求する究極の2針モデル。ドイツ語で“平ら”を意味する言葉「フラッハ」を冠するシリーズで、ブランド最薄となるケース厚は5.9mm。クラシックかつ優雅な印象を湛える。ダイアルにはシルバー無垢を採用。手巻き(Cal.L093.1)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KWGケース(直径37mm、厚さ5.9mm)。3気圧防水。336万6000円。(問)A.ランゲ&ゾーネ Tel.0120-23-1845
カラーダイアルのドレスウォッチ × フェイドカラーTシャツ
太陽に映える真夏の色彩感覚
夏の日差しに最も映える色のひとつとして押さえておきたいのが、コロニアルなムードを湛えるベージュダイアルだ。色褪せた同系色のTシャツと組み合わせた「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ オートマティック」のそれは、スタンプ加工の波模様モチーフの文字盤にガルバニック処理を施したもの。強い日差しを受けて、その色は立体的なケースフォルムとともにさらに際立つはずだ。
Tシャツ/2万900円、スリードッツ。(問)スリードッツ表参道店 Tel.03-6805-1704。肩に掛けたニット/2万5300円、フィリッポ デ ローレンティス。(問)トヨダトレーディング プレスルーム Tel.03-5350-5567。パンツ/3万9600円、ヨーク。(問)エンケル Tel.03-6812-9897
例えば、グリーンのようなブルー、明るいマスタード、レンガ色やライムグリーン……。夏になると気になるのが、中間色に分類される繊細な色をまとったTシャツだ。なかでも日焼けしたような風合いのあるフェイドカラーのTシャツは、夏のムードを盛り上げ、装いに絶妙な〝こなれ感〞を生んでくれる。
時計業界に百花繚乱する美しいカラーダイアルのドレスウォッチに合わせるTシャツとして、このフェイドカラーを推薦する理由。それは、この色は主張が強いわけでもなく、かといって弱いわけでもなく確かな記憶に残る色だからだ。右ページのオーデマ ピゲのCODE 11.59 バイ オーデマ ピゲのダイアルカラーに調和する同系色や類似色のTシャツを選ぶことで、時計を引き立ててくれる。ここでは、そんな色のTシャツをそろえた。
しなやかさと光沢が特徴の超長綿では通常ありえない厚みとハリ感を、特殊な技法によって持たせたブルーのTシャツ(写真1)。レンガを意味するブリックと命名された色のTシャツは、海洋プラスティックごみからリサイクルしたポリエステル素材を65%、コットンに混紡しているという(写真5)。色のみならず、光沢やマットなど、時計との相性を考えながらTシャツの素材や表情にまで気を払って選ぶと、さらに楽しみ方が広がる。
カラーダイアルのドレスウォッチカタログ
コレクション初のステンレススティールモデルで、ミドルケースとリュウズにはブラックセラミックスが使用される。スモークベージュ文字盤はベースカラーの上にブラックラッカーを塗布して繊細なグラデーションを表現している。自動巻き(Cal.4302)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS×セラミックスケース(直径41mm、厚さ10.7mm)。3気圧防水。346万5000円。(問)オーデマ ピゲ ジャパン Tel.03-6830-0000
薄型時計の金字塔として1957年に開発された厚さ2mmの極薄手巻きムーブメントCal.9Pの系譜に連なり、卓越した時計製造技術とサヴォアフェールを受け継ぐ名作。シグネチャーブルーのダイアルがモダンな輝きを放つ。手巻き(Cal.430P)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約43時間。18KPGケース(直径38mm、厚さ6mm)。3気圧防水。ブティック限定300本。264万円。(問)ピアジェ コンタクトセンター Tel.0120-73-1874
鮮やかなパステルグリーンが目を引く3針デイト表示付き自動巻きモデル。外装は直径をキープしたまま全長を約2mm、ケース厚を2mm切り詰めて洗練されたプロポーションに、ムーブメントはCal.7の搭載でパワーリザーブを約56時間にと刷新された。自動巻き(Cal.7)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約56時間。SSケース(直径36.0mm、厚さ10mm)。50m防水。39万6000円。(問)LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー Tel.03-5635-7054
硬質素材のドレスウォッチ × ブラックTシャツ
こなれる秘訣はアクセサリー使い
時計界の常識を覆し、ブランド躍進のトリガーとなった1980年の時計を現代に復活させた「クラシック・フュージョン オリジナル」。そのバリエーションとして登場した本作は、ブラックセラミックス製のケース&ベゼルにシンプルなラバーストラップを備える。今夏はそんな話題作をモノにすべく、自分好みのバングルやブレスレットを組み合わせたTシャツスタイルを。時計を主役にするシンプルなデザインのものを選んで楽しむのがスマートだ。
Tシャツ/1万7600円、シュタイン。(問)エンケル Tel.03-6812-9897。ショーツ/2万900円、アスペジ。(問)トヨダトレーディング プレスルーム Tel.03-5350-5567。バングル8万8000円、バニー。(問)スープリームス インコーポレーテッド Tel.03-3583-3151。ブレスレット/13万2000円、ネックレス/8万2500円、ともにジル プラットナー。(問)アルファ PR Tel.03-5413-3546
軽装なTシャツスタイルだからこそ、バングルやブレスレットを活用してドレスウォッチの存在感にプラスアルファで個性を演出したい。ここでは、主役の時計となじむシンプルでスマートなデザインのアクセサリーを紹介する。
シルバージュエリーであれば、アフリカはサハラ砂漠で暮らすトゥアレグ族によって手彫りで丁寧に彫られたもの(写真1)と、手仕事の温もりを感じられるものづくりを目指すブランドの逸品(写真3)を。また2009年にロンドンを拠点として設立されたジュエリーブランドによるプレーンなデザインのバングル(写真5)もおすすめだ。
ほかには真鍮素材にゴールドのコーティングを施したツイストデザインのバングル(写真2)や、淡水パールやターコイズ、クリスタルを用いたブレスレット(写真6)。そして高機能素材のゴアテックスで知られるゴア社が開発した、耐久性や速乾性に優れたテナラコードと呼ばれる特殊縫製糸に、雪片のようにかたどられたシルバー&ゴールドのパーツを配したブレスレット(写真4)などだ。
硬質素材の筆頭格、セラミックスをケース&ベゼルに採用するウブロの「クラシック・フュージョン オリジナル ブラックマジック」のようなドレスウォッチであれば、小傷を気にせず重ね着けを楽しめるのだ。
硬質素材のドレスウォッチカタログ
1980年にウブロの名を轟かせる端緒となった時計を復刻。本作はケースやベゼルに、高い硬度を誇るセラミックスを採用したモデル。シンプルなラバーストラップや6つのH形ビスを備えたベゼルが往時を彷彿させる。自動巻き(Cal.MHUB1110)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。ブラックセラミックケース(直径38mm、厚さ9.85mm)。50m防水。110万円。(問)LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン ウブロ Tel.03-5635-7055
古くから海洋探検に必要だったマリンクロノメーターを手掛けてきたメゾンの歴史、海とのつながりを体現する「マリーン」コレクション。本作はサンバースト・スレートグレー仕上げのダイアルを備え、ケースは強度が高く比重がSSの約6割という軽量なチタン製。自動巻き(Cal.777A)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。Tiケース(直径40mm、厚さ11.5mm)。10気圧防水。262万9000円。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211
厚さわずか1.00mmのムーブメントを内蔵する世界最薄の光発電時計で、月差±15秒の精度や、フル充電時から約12カ月稼動を実現。SSケースには小傷を防ぐ独自の表面硬化技術デュラテクトαを施し、サーメット製ベゼルは優れた耐熱性や耐摩耗性、靱性を備える。光発電エコ・ドライブ(Cal.8826)。フル充電時12カ月稼動。SSケース(直径39mm、厚さ2.98mm)。日常生活防水。44万円。(問)シチズンお客様時計相談室 Tel.0120-78-4807