高精度を目指して誕生した腕時計を起源に持つ、IWCの「ポルトギーゼ」に注目する。ポルトギーゼは、懐中時計用ムーブメントの採用によって生まれた大ぶりなケースと端正な意匠を受け継ぎながら、多彩なモデルへと発展してきたコレクションだ。本記事では、シンプルな自動巻きモデルから、定番のクロノグラフ、複雑なグレゴリオ暦の規則に対応する「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」まで5本を紹介する。

Text by Shin-ichi Sato
[2026年9月22日公開記事]
大ぶりなケースと端正な意匠が魅力のIWC「ポルトギーゼ」に注目
IWCを代表する「ポルトギーゼ」の起源は、1930年代にポルトガル人商人が、航海用のマリンクロノメーターに匹敵する精度を備えた腕時計を注文したことにある。IWCは、この注文に応えるため懐中時計用ムーブメントを採用した腕時計を製造。1939年に登場した初代モデルのケース径は42mmと、30mm程度が標準だった当時としては異例の大きさとなった。
そんなポルトギーゼの現在のデザインを特徴付けるのは、初代モデルから継承された大径のシルエットと、読み取りやすいアラビア数字インデックス、余白を生かした広々とした文字盤、細いベゼルによる端正な表情である。また、懐中時計を思わせるスモールセコンドを備えたモデルも多い。
現在はこうした意匠を受け継ぎながら、サイズや機能の異なるモデルを幅広く展開している。直径40mm台のケースにスモールセコンドを配したシンプルなモデルから、コレクションの人気を支えるクロノグラフ搭載モデル、さらには永久カレンダーなどの複雑機構を搭載したモデルまで、端正なデザインと多彩な機構を楽しめるコレクションとなっている。
IWC「ポルトギーゼ・オートマティック40」Ref.IW358303

自動巻き(Cal.82200)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径40.4mm、厚さ12.3mm)。3気圧防水。126万5000円(税込み)。
まずは、コレクションの中でもベーシックな意匠を有する「ポルトギーゼ・オートマティック40」から見ていこう。2020年に登場したポルトギーゼ・オートマティック40は、アラビア数字インデックスと細身のリーフ型時分針、6時位置のスモールセコンド、日付表示のない文字盤デザインという、初代モデルに通じるシンプルな意匠を備えたモデルだ。
取り上げるRef.IW358303は、シルバーの文字盤にステンレススティール製ケースを組み合わせた端正なモデルである。文字盤の外周にはレイルウェイミニッツトラックを配置し、印象を引き締めつつ、高い判読性を実現している。
搭載する自社製自動巻きムーブメントのCal.82200は、約60時間のパワーリザーブを備える。巻き上げにはIWC独自のペラトン自動巻き機構を採用し、摩耗しやすい部品にセラミックスを用いて耐久性を高めている。ケースバックはシースルー仕様で、コート・ド・ジュネーブやペルラージュ仕上げを施したムーブメントを観賞することができる。
ケース径40.4mmというサイズ感は現代基準で標準的で、周長約18cmの筆者の手首での収まりが良い。広く取った文字盤や明るいシルバーの色調によって、数値よりも大きく見え、存在感を放つ点も特徴と言えるだろう。厚さ12.3mmのスタイリングは質実剛健さを感じさせるもので、ポルトギーゼの出自や、IWCらしさを反映していると筆者は感じている。
IWC「ポルトギーゼ・ オートマティック 42」Ref.IW501705

自動巻き(Cal.52011)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約168時間。SSケース(直径42.4mm、厚さ13mm)。5気圧防水。230万4500円(税込み)。
続いて紹介する「ポルトギーゼ・オートマティック 42」は、2000年に登場した自動巻きモデルの系譜を受け継ぎ、約7日間(約168時間)のロングパワーリザーブを備えたモデルである。文字盤は、3時位置のパワーリザーブ表示と9時位置のスモールセコンドが適切な位置に大径で配置され、均整の取れたデザインを形作っている。さらに6時位置には日付表示を配し、日常使いに役立つ機能をまとめている。
ピックアップするRef.IW501705は、砂を思わせる「デューン」カラーの文字盤を持つ。ゴールドカラーのアラビア数字インデックスとゴールドメッキの針による温かみのある配色に、ブラックのアリゲーターストラップを組み合わせ、エレガントでありながら引き締まった印象に仕立てている。
ステンレススティール製ケースは直径42.4mm、厚さ13mmだ。湾曲したボックス型サファイアガラス風防が、クラシカルな雰囲気を添えている。その内部に搭載するのが、自動巻きムーブメントのCal.52011である。このムーブメントは、ロングパワーリザーブを実現するふたつの香箱と、セラミックスを用いて耐摩耗性を高めたペラトン自動巻き機構を採用しており、実用性の高い仕上がりとなっている。
IWC「ポルトギーゼ・クロノグラフ」Ref.IW371605

自動巻き(Cal.69355)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。SSケース(直径41mm、厚さ13mm)。3気圧防水。145万7500円(税込み)。
「ポルトギーゼ・クロノグラフ」は、コレクションの大径かつ端正なデザインに、クロノグラフによる1/8秒単位の高精度な計測機能を組み合わせたモデルである。12時位置に30分積算計、6時位置にスモールセコンドを配した縦ふたつ目の文字盤が特徴で、日付表示や時間積算計を設けず、すっきりとした構成を持つ。
その中でもRef.IW371605は、シルバーメッキの文字盤にブルーの各針とアラビア数字インデックス、ブルーのアリゲーターストラップによるカラーコディネートで、爽やかに仕立てられたモデルだ。インダイアルは文字盤面から一段低くなっており、コントラストによる視認性向上のほか、奥行き感や表情の変化を生み出すことに一役買っている。
ステンレススティール製ケースは直径41mmである。ポルトギーゼのデザインコードのひとつである細いベゼルによって文字盤を広く見せ、クロノグラフの作動をダイナミックに観賞させる点が、本作の大きな美点と言えるだろう。
なお、Ref.IW371605は2020年のポルトギーゼ・クロノグラフの刷新によって登場したモデルで、この世代から自社製の自動巻きクロノグラフムーブメントであるCal.69355を搭載する。Cal.69355は、クロノグラフ機構の制御にコラムホイールを採用し、両方向巻き上げ式の自動巻き機構と約46時間のパワーリザーブを備えている。さらに、ケースバックがシースルー仕様となり、内部の機構を観賞できる仕様になっている。
IWC「ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー 44」Ref.IW503701

自動巻き(Cal.52616)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約168時間。18K Armor Gold®ケース(直径44.4mm、厚さ15mm)。5気圧防水。939万9500円(税込み)。
「ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー 44」は、月ごとの日数の違いや閏年を自動で補正する永久カレンダーを搭載したモデルだ。文字盤には日付、曜日、月の各表示に加え、IWCの永久カレンダーのアイコンである4桁の西暦表示を配置する。12時位置には北半球と南半球から見た月の満ち欠けを示すダブルムーンフェイズ表示も備え、月齢の誤差は計算上、約577.5年でわずか1日に抑えられている。
各表示が連動し、リュウズだけでカレンダーをまとめて送り進められる点も、IWCの永久カレンダーを特徴付ける仕組みだ。本作もこの操作性を受け継ぎ、日付や曜日、月などを個別に合わせる必要がない。また、月ごとの日数の違いや閏年を自動で補正し、時計が正確に稼働を続けている限り、2100年まで日付修正を必要としない正確さを持つ。修正が必要となるのは、2100年や2200年のように4年周期に当てはまりながら例外的に閏年ではない年だけである。
これらの表示を実現するのが、自動巻きムーブメントのCal.52616である。ペラトン自動巻き機構とふたつの香箱を備え、約7日間(約168時間)のパワーリザーブを確保し、その残量は3時位置に日付表示と同軸に表示される。さらに、脱進機にニッケル合金製を採用することで耐磁性を改善しており、複雑機構を支える基礎性能が高められている。
紹介するRef.IW503701は、一般的な18Kレッドゴールドよりも硬度を高めた18K Armor Gold®をケースに用い、シルバーメッキの文字盤にゴールドカラーのアラビア数字インデックスと針を組み合わせたモデルだ。赤みを帯びた独自の18Kゴールドケースと、サントーニ社製のダークブラウンのアリゲーターストラップのコーディネートにより、温かみのある配色となっている。
IWC「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」Ref.IW505701

自動巻き(Cal.52640)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約7日間。Ptケース(直径44.4mm、厚さ15mm)。5気圧防水。要価格問い合わせ。
最後に紹介する「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」は、多くの永久カレンダーモデルでは修正が必要な、2100年や2200年という例外の年にも対応したモデルだ。2024年に登場した本作は、100で割り切れる年を平年とし、そのうち400で割り切れる年は閏年とするグレゴリオ暦の複雑な規則を、機械式ムーブメントで正確に再現している。
その中核となるのが、自社製自動巻きムーブメントのCal.52640に組み込まれた、400年で1回転する歯車である。400年間に3回の閏年を省く仕組みによって、稼働を続けていれば3999年まで日付修正を必要としないセキュラーカレンダーを実現しているのだ。さらに、各カレンダー表示が連動し、リュウズでまとめて送り進められる、IWCらしい優れた操作性も受け継がれている。
12時位置に配置された、北半球と南半球から見た月の満ち欠けを示すダブルムーンフェイズ表示も大幅に高精度化された。永久カレンダーに搭載されたCal.52616が約577.5年で1日の月齢誤差であるのに対し、本作のCal.52640では、計算上約4500万年で1日という超高精度を達成している。3つの中間車を用いた減速輪列によって実現したこの表示は、2024年に「最も精密なムーンフェイズの腕時計」としてギネス世界記録に認定された。
また、ペラトン自動巻き機構とふたつの香箱を備え、約7日間(約168時間)のパワーリザーブを確保する。これらの機構を収めるプラチナ製ケースは、直径44.4mm、厚さ14.9mmであり、高度な永久カレンダー機構を搭載しながら、先に紹介したポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー 44とほぼ同じシルエットにまとめられている点は驚異的だ。このような高い完成度を誇る本作は、ジュネーブ・ウォッチ・グランプリ(GPHG)2024で、最高賞にあたる「金の針賞」を受賞している。
文字盤には、裏側からホワイトラッカーを施したサファイアクリスタルを採用する。多層構造による立体的な表示を、ボックス型サファイアガラス風防越しに眺められる。ストラップはサントーニ社が製造するブラックアリゲーター製で、白を基調とした文字盤とプラチナ製ケースと相まって、落ち着いたコーディネートとなっている。



