工芸的魅力を宿したザ・シチズンのソーラーウォッチ「AQ4100-65X」を深掘り

2026.11.03

ザ・シチズンより、深紅の土佐和紙ダイアルを採用した数量限定モデル「AQ4100-65X」が発表された。極薄の「典具帖紙(てんぐじょうし)」による独特の風合いと、深紅に添えられるゴールドカラーのアクセントが特徴だ。年差±5秒の高精度エコ・ドライブや、軽量で耐傷性に優れたスーパーチタニウム™製の外装など、ザ・シチズンらしい実用性も踏襲。日本の伝統工芸とシチズンの先進技術を組み合わせた新作を深掘りする。

ザ・シチズン

Photograph by Masahiro Okamura (CROSSOVER)
野島翼:文
Text by Tsubasa Nojima
[2026年11月3日公開記事]


実用時計の理想を追求してきた「ザ・シチズン」

 シチズンを代表する高級時計ブランドのひとつが、1995年に誕生した「ザ・シチズン」だ。ザ・シチズンはその名が示す通り、シチズンが理想とする腕時計の姿を追求してきたブランドであり、精度、品質、デザイン、ホスピタリティーの4つを重視している。

 ザ・シチズンの大きな特徴が、実用性への徹底した追求である。年差±5秒という高精度を誇るクォーツムーブメントや、軽量かつ耐傷性に優れるスーパーチタニウム™製の外装など、日常的に使ううえで利便性のある仕様を備えている。購入後のサポートも充実しており、長年にわたって愛用できるという、高級腕時計にとって心強い体制が整えられているのである。

 そんなザ・シチズンにおいて、近年存在感を高めているのが、和紙をダイアルに採用したモデルだ。光発電機能であるエコ・ドライブは、ダイアルの下に配置されたソーラーセルに光を届ける必要があるため、ダイアルの素材に制約が生じる。一般的な金属ダイアルをそのまま採用することは難しい中で、光の透過性とデザイン性を両立させなければならないのだ。

 そこでシチズンの着目した素材が、和紙である。古くから障子や行灯などに用いられてきた和紙は、光を透過させる性質を持ちながら、繊維による独特の風合いを楽しむことができる。エコ・ドライブの機能を損ねることなく、ダイアルに工芸的な魅力を与えることのできる素材なのだ。ザ・シチズンでは2017年以来、さまざまな色味や模様を取り入れた和紙ダイアルモデルを展開し、表現の幅を広げてきた。

 今回登場した「高精度年差±5秒 エコ・ドライブ 土佐和紙文字板限定モデル」Ref.AQ4100-65Xも、そんな和紙ダイアルを採用した新作だ。土佐和紙を深い赤に彩り、さらに一般的には金属製ダイアルに筋目を刻むことで実現するサンレイを見せるダイアルを特徴とする本作は、世界限定300本のみが販売される。

ザ・シチズン「高精度年差±5秒 エコ・ドライブ 土佐和紙文字板限定モデル」Ref.AQ4100-65X
高知県の伝統工芸である土佐和紙をダイアルに採用した、世界限定300本の特別モデル。深紅のダイアルにゴールドカラーのアクセントを組み合わせ、華やかでありながら落ち着いた雰囲気に仕上げている。光発電クォーツ(Cal.A060)。フル充電時約1.5年駆動(パワーセーブ時)。スーパーチタニウム™ケース(直径38.3mm、厚さ12.2mm)。10気圧防水。世界限定300本。44万円(税込み)。

極薄の土佐和紙「典具帖紙」を採用した深紅のダイアル

 AQ4100-65X最大の特徴が、深紅のダイアルだ。採用されているのは、高知県の伝統工芸である土佐和紙の一種、「典具帖紙(てんぐじょうし)」である。典具帖紙は、極めて薄く、繊細な繊維の風合いを持つ和紙だ。和紙の魅力は、まさにその風合いだろう。繊維の重なりが生み出す質感が、ダイアルに均質な工業製品とは異なる奥行き感を与えている。

 本作では、この典具帖紙に深紅の色彩を組み合わせている。鮮やかな赤でありながら、一方でその深みが落ち着きも感じさせる色調だ。もっとも、エコ・ドライブにおいて濃い色のダイアルを組み合わせることは、必ずしも容易ではない。発電に必要な光を透過させなければならないため、色彩を濃くするほど、光の透過性を確保することが難しくなるからだ。本作では、極薄の典具帖紙に加え、特殊な着色技術を施したクリアな上板を組み合わせることによって、この色味を実現している。和紙の風合いを生かしながら、エコ・ドライブに必要な光の透過性を確保するという、機能とデザインを両立させた構造だ。

 また、ダイアルにサンレイ加工が施されていることも特筆すべき点だ。サンレイ加工はダイアルの中心から外周にかけて太陽光のような筋目を付けることで、光の当たる角度によってまるで光が走っているような視覚効果をもたらす仕上げである。通常、金属製ダイアルに金属製ブラシを使って筋目を施すことが多く、一方光発電である本作は、前述した上板にサンレイをプリントすることで、この仕上げを実現しているのだ。

ダイアルには、極薄で独特の風合いを持つ土佐和紙「典具帖紙(てんぐじょうし)」を採用。特殊な着色技術を施したクリアな上板と組み合わせることで、光発電に必要な透過性を確保しつつ、深紅の色彩を実現している。ゴールドカラーの秒針と6時位置のイーグルマークが、ダイアルに華やかさを添えている。

 6時位置に配されたイーグルマークと秒針をゴールドカラーとすることで、深紅のダイアルに華やかさを添えている点にも注目だ。赤と金という組み合わせは、そのバランス次第では派手な印象になりかねない。しかし、本作ではゴールドカラーをあくまでもアクセントとして用い、さらにシンプルなバーインデックスやシャープな針を採用することで、ダイアルの個性を引き立てつつも、ザ・シチズンらしい控えめな上品さを保つことに成功している。

 6時位置のイーグルマークは、「常に先を見据え、理想を追求する」、「身に着ける方に永く寄り添う」という、ザ・シチズンのふたつの理念を象徴する存在でもある。リュウズやケースバックにも同じマークがあしらわれており、ブランドのアイデンティティーを示している。

軽量性と耐傷性を兼ね備えたスーパーチタニウム™製の外装

 深紅のダイアルを包み込むケースとブレスレットには、シチズン独自のスーパーチタニウム™が採用されている。これは、チタンに独自の表面硬化技術「デュラテクト」を施した素材だ。ステンレススティールに比べて約40%軽量でありながら、約5倍の表面硬度を実現している。耐食性にも優れており、肌に優しく、日常使いの腕時計に適した素材と言えるだろう。本作では、数あるデュラテクトの中でも、プラチナを配合することで明るく透き通るようなシルバーカラーを特徴とする「デュラテクトプラチナ」を採用した。

 ケース径は38.3mm、厚さは12.2mm。現代のメンズウォッチとしては比較的コンパクトな直径にまとめられ、ビジネスからカジュアルまで、幅広いシーンで使いやすい。

 ケースデザインは、シンプルなラウンド型を採用しつつ、ラグにはシャープなエッジを加えている。ドレスウォッチのような端正さと、スポーティーさを調和させたデザインだ。

 3連タイプのブレスレットは、ケースと同じスーパーチタニウム™製。軽量性に優れるため、金属製ブレスレットのモデルでありながら、日常的に使いやすい点が魅力だ。風防には、デュアル球面サファイアクリスタルを採用。クラリティ・コーティングによって光の反射を抑え、ダイアルの視認性を高めている。さらに10気圧防水を備えるなど、実用時計としての基本性能も確保している。

年差±5秒の高精度エコ・ドライブ、Cal.A060

 本作に搭載されるムーブメントは、高精度エコ・ドライブのCal.A060だ。最大の特徴は、年差±5秒という高い精度にある。月差で精度を表す一般的なクォーツウォッチとは、文字通り桁違いの精度を誇る。加えて定期的な電池交換が不要なエコ・ドライブによって、日常的なメンテナンスの手間も少ない。パーペチュアルカレンダーを搭載しているため、月末やうるう年に合わせた日付修正を行う必要がない点も魅力だ。0時ジャストカレンダー更新機能によって、午前0時になると瞬時に日付が切り替わる。

 時針を単独で1時間ずつジャンプさせることができる時差設定機能も備えており、海外旅行などでローカルタイムに合わせる際にも便利だ。充電量表示機能や充電警告機能など、日常的な使い勝手を高める機能も盛り込まれている。シチズン独自のパーフェックスを搭載している点も見逃せない。これは、JIS1種耐磁、衝撃検知機能、針自動補正機能を組み合わせた技術だ。


高精度実用時計に工芸的な魅力を加えた限定モデル

 腕時計の魅力は、必ずしも複雑な機構や高価な素材だけで決まるものではない。毎日身に着けることを考えれば、時刻の正確さや耐久性、着用感、メンテナンスの手間が少ないことも重要だ。ザ・シチズンは、こうした実用時計としての基本性能をベースに発展してきたブランドである。

 一方で、腕時計は時刻を確認するためだけのツールでもない。持ち主が毎日のように身に着け、目にするものだからこそ、外観のデザインもまた大きな魅力となる。本作は、そうした感性的な価値を、高い実用性と両立させたモデルだ。その背景にあるのは、エコ・ドライブの機能上の制約と、和紙という伝統素材の親和性の高さだ。光を透過させなければならないという条件があったからこそ、シチズンは和紙に着目し、その独特な風合いをダイアルに取り入れてきた。

 そして今回、極薄の典具帖紙と特殊な着色技術を組み合わせることによって、深紅という印象的な色彩を実現した。光を透過させるという機能上の要件と、伝統工芸が持つ魅力を、高い次元で融合させたのである。



Contact info:シチズンお客様時計相談室 Tel.0120-78-4807


制約を魅力に変えて。シチズンの光発電エコ・ドライブ50周年記念モデル「Eco-Drive PHOTON」を深掘り

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光発電クォーツ×藍染め和紙。ザ・シチズン「AQ4094-58L」「AQ4090-08A」の魅力

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2026年 シチズンの新作時計を一挙紹介!

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