グランドセイコーのおすすめクォーツモデル3選。種類や特徴も紹介

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2023.07.04

日本が誇るグランドセイコーは、高い技術力を強みに、高い品質と優美な意匠を備えた腕時計を製造するブランドだ。そんな同ブランドが手掛けるクォーツモデルの品質は世界有数であり、ビジネスシーンはもちろんカジュアルシーンでも活躍する。クォーツ式時計の老舗がつくる傑作3選を紹介しよう。

グランドセイコー


グランドセイコーには3つのムーブメントが存在する

グランドセイコーの腕時計は「グランドセイコースタジオ 雫石」(岩手県雫石町)と「信州 時の匠工房」(長野県塩尻市)というふたつの工房で自社生産される。前者は機械式、後者はクォーツ式とスプリングドライブを手掛けている。

クォーツ式時計の傑作選を見る前に、まずはグランドセイコーに採用される3種類のムーブメントについて見ていこう。

高精度の機械式ムーブメント「9Sメカニカル」

グランドセイコーの機械式ムーブメントは、ヒゲゼンマイや歯車など、すべての部品を自社製造している。0.01mm単位の微細加工技術と、熟練職人の調整や組み立てにより、スイスのクロノメーター規格を超える非常に高精度なムーブメントの製造が可能だ。

「メカニカル自動巻3DAYS」と呼ばれるCal.9S65やCal.9S68は、主ゼンマイの厚みと幅の調整により、シングルバレルでありながら最大約72時間のパワーリザーブを誇る。

「メカニカルハイビート36000 80 Hours」と呼ばれるCal.9SA5では、毎時約3万6000振動のハイビートでありながら、最大約80時間という驚異的なパワーリザーブを達成した。

クォーツを超えたクォーツ「9Fクォーツ」

多くの時計メーカーではクォーツムーブメントを自動組立しているが、グランドセイコーの9Fクォーツは複雑であり、手作業で組み立てられていることが特徴だ。

秒針の動きを安定させる「バックラッシュオートアジャスト機構」には、本来は機械式ムーブメント用の精密なヒゲゼンマイを用いているため、職人による調整が必要だ。

時・分・秒針が独立した軸で回転する「3軸独立ガイド構造」の採用により、時刻合わせ時にも3本の針が互いに干渉することなく、それぞれの針の動きが他の針に影響を与えることのない、滑らかな動きを可能にした。

また、水晶振動子の個体差を加味して3カ月間のエージングを行うことも、9Fクォーツのクォリティのひとつだ。

機械式とクォーツ式のハイブリッドムーブメント「9Rスプリングドライブ」

セイコー独自の駆動方式「スプリングドライブ」は、機械式時計と同じように主ゼンマイを動力源とし、クォーツ式のように水晶振動子・IC・ステータで調速を行う。

主ゼンマイの大きなトルクで重い針を動かし、クォーツ式時計と同等の高精度を実現する、技術的に高度かつ複雑な駆動方式だ。

機械的な力・電気信号・磁力が協働する制御システム「トライシンクロレギュレーター」を搭載するため、9Rスプリングドライブムーブメントの部品数は200以上、クロノグラフモデルでは400以上にもなる。


9Fクォーツの特徴

グランドセイコーのクォーツ式ムーブメントは「9F」で始まるキャリバーナンバーで管理される。クォーツ式時計の黎明期から改良が続いており、数々のイノベーションはグランドセイコーのクォーツ式ムーブメントを別次元に引き上げた。

自動組立や他社製造では実現できない、9Fクォーツの多彩な機能とメカニズムについて紹介しよう。

圧倒的な精度

すべての水晶振動子は原理的に3万2768Hzで振動するが、個体差や環境の変化により振動数は不安定となるため、時計の精度は一定ではない。

9Fクォーツでは、3カ月にも及ぶエージングを経て、安定した精度を発揮する水晶振動子だけを採用する。さらに、水晶振動子の個体差をICに記録し、駆動中は1日に540回の検温を行う仕様だ。

水晶振動子の厳選と誤差修正を行うことで、精度は通常のクォーツ式時計を大きく上回り、年差±10秒という圧倒的な精度を誇る。

トルクの強さ

クォーツ式時計は高精度だが、主ゼンマイがほどける力を利用する機械式時計よりもトルクが小さい。重い針を動かすのに十分な力を発揮しにくいため、クォーツ式時計の時・分・秒針は細く軽いことが一般的だ。

9Fクォーツでは「ツインパルス制御モーター」を搭載することで、1秒に1ステップ(6°)ではなく2ステップ(3°を2回)進む仕様である。もちろん、この2回のステップは肉眼では認識できないため、従来のように1回のステップに見える。

1ステップに必要な力を小さくすることで、軸トルクの効率を高めており、機械式時計然とした太く重い針を搭載することが可能だ。

緩急スイッチとデイト表示

一般的なクォーツ式ムーブメントは、自動組立でも機械式時計以上の精度が得られるため、ユーザーが精度の調整を行う必要はないものとしている。

実際、高精度な9Fクォーツでは調整の必要はほぼないと言えるが、水晶振動子には個体差がある。

9Fクォーツのケースバックを開くと精度調整用の「緩急スイッチ」があり、ユーザーは個体の癖に合わせて精度調整が可能だ。

9Fクォーツは、世界で初めてクォーツ式時計に「瞬間日送りカレンダー」を搭載したことでも知られる。

トルクの小さいクォーツ式時計では実現困難な機構であったが、24時前後でもデイト表示を瞬時に認識できるメリットを生んだ。