20代30代を中心にカリスマ的な人気を誇る俳優・板垣李光人。ジェンダーに囚われない美しさで注目を集める彼が、ファーストウォッチとして選んだのはカルティエ「ベニュワール」だ。「いかにも"時計然"としているものは自分らしくない」という独自の美意識のもと、試着を重ねて出会ったイエローゴールドの一本。時計をジュエリー感覚で楽しむ彼の価値観は、時計選びの新たな可能性を示している。

Text by Yukaco Numamoto
土田貴史:編集
Edited by Takashi Tsuchida
[2025年8月3日掲載記事]
美しさに性別の垣根はない、を体現するカリスマ的存在
メイクする男性は、ひと昔前までは"男らしくない"とも言われていたが、今はむしろ憧れの存在となっている。女性からの人気が高いのはもちろん、男性からも注目・支持を集める対象だ。ジェンダーに囚われずに美を追求する姿勢は、容姿が美しいことに留まらず、「自分を持っている」「しなやかな強さを感じる」ことができる。
芸能界でも、そんなジェンダーレスなタレントが増えている。そのひとりとして、20代30代層を中心にカリスマ的な人気を誇るのが板垣李光人だ。2023年の「浜松まつり」イベントの際にも「一生分の『キャー』を浴びたんじゃないかな」と本人自身がコメントするほどの熱狂を巻き起こした。
2025年7月4日から全国公開されている新作映画「ババンババンバンバンパイア」では15歳の少年役で、キュートさすら感じられる甚平姿、news zeroでは大人の色気を感じさせるスーツ姿を披露、その多面性を表現している。
ジェンダーレスな人気を牽引する活躍の軌跡
2013年に俳優デビュー以降、板垣李光人は着実にそのキャリアを積み重ねてきた。テレビドラマ「仮面ライダージオウ」で注目を集めた後、「カラフラブル〜ジェンダーレス男子に愛されています。〜」(日本テレビ系)は多くの話題を呼んだ。その後も「silent」「フェルマーの料理」「マルス-ゼロの革命-」といった話題作に出演を続けている。
なかでもNHK大河ドラマでの活躍は目覚ましく、「青天を衝け」に続いて「どうする家康」で演じたのは井伊直政。女城主直虎によって大切に育てられた井伊家の御曹司で、徳川家康の新戦力として活躍する役どころである。
頭の回転が速く、女性によくモテるが、誰に対しても不遜な物言いをするのでトラブルが絶えない……、板垣はこの複雑な人物像を繊細に演じ分けた。当時、予告編に一瞬映っただけにも関わらず、その美貌に注目が集まり、SNSを中心に話題が拡がったというエピソードもある。
板垣李光人は2歳よりモデル活動を行っていたが、小学5年生のときに第1回スターダストプロモーション芸能1部モデルオーディションに合格したことにより現在の事務所に所属。俳優やモデルとしての活動を本格的に開始する。「李光人」という名前の由来は、ドイツ語で「光」を意味するLicht。名前の通り、彼の存在感は多くの人々に光を与えている。
趣味は写真、音楽鑑賞、アニメ観賞、ゲーム。特技は水泳、イラスト制作である。描いたイラストは本人のインスタグラムにアップされることもあり、イラスト本を出版することが夢という。最近では個展を開催するなど、マルチな才能を開花させている。芸歴が長く、出演ジャンルも幅広い板垣李光人だが、趣味などを通じてオンオフを切り替える時間を確保しているのだろう。
インスタグラムで発見した時計愛用ショット
板垣李光人のインスタグラムに時計を身に着けた画像を発見した。その投稿で、中島裕翔(Hey! Say! JUMP)主演舞台『みんな鳥になって』を鑑賞したことを報告している。
“中島”と描かれたのれんの前で撮影されたこの一枚では、板垣は黒いハット&白いゆるトップス姿でサムズアップ。中島はストライプのシャツ姿で板垣の頭を抱え寄り添い、満面の笑みでサムズアップしている。
中島裕翔と板垣李光人は、2025年1月から放送されたテレビドラマ「秘密~THE TOP SECRET~」でW主演を務め、初共演を果たした。ドラマ放送後も互いの舞台を観劇したり、プレゼントを贈り合ったりといった交流が続いているという。
「今では撮影のスタンバイ中に近くにピタッと来てくれたり、ツンツンって手を出してくれるようになって。うちの室長、ワンちゃんみたいなんです(笑)」と、雑誌の対談で中島が語る口調からも、ふたりの温かい関係性が伝わってくる。
この画像で、板垣李光人が着用しているのはカルティエ「ベニュワール」(サイズ17)と推定される。
「これが僕のファーストウォッチ。ベニュワールのミニサイズ、リジッドのブレスレットタイプです」と、SPUR.JPの連載「あの人のお気に入り」第7弾で語った板垣。カルティエとの出会いは2023年に遡る。
「もともと、カルティエのイエローゴールドが一番自分にしっくり合う気がして、昨年からトリニティなどのリングをコレクションしてきました。指にある程度お気に入りが集まったところで、手首にも何か欲しい、ブレスレットよりも時計がいいな……」と、同サイトにて時計選びに至る経緯を明かしている。当初は時計専業ブランドの時計も含めて探したそうだが、試着を重ねてやっとこのモデルに出会ったそうだ。
時計選びに見る新しいジェンダーレスな価値観
「いかにも"時計然"としているものはあまり自分らしくない」「時間を確かめる道具というよりも、手もとのアクセントとして存在感を放つジュエリーライクな1本です」という板垣李光人自身の言葉からは、従来の時計選びの概念を超えた新しい感性が感じられる。
板垣の時計選びが示すのは、単なる個人の嗜好を超えた文化的な変化かもしれない。従来「男性の時計」といえばスポーツウォッチやドレスウォッチが定番とされてきたが、彼はそうした既成概念にとらわれることなく、純粋に美しいと感じるものを選んだ。

サイズは17と推定。クォーツ。18KYGケース。日常生活防水。232万3200円(税込み)。
「ジェンダーレス」という言葉が注目される現代において、板垣の価値観は多くの人々に新たな選択肢を提示している。時計は機能性や伝統的な「らしさ」だけで選ぶものではなく、自分らしさを表現する道具でもある──そんなメッセージが、彼の「ベニュワール」への愛着から読み取れる。
美しさに性別の垣根はない。この普遍的な真理を、板垣李光人は時計というアイテムを通しても静かに、しかし確実に証明している。彼の自由で心地良い選択は、きっと多くの人に「自分らしい一本」を見つける勇気を与えるだろう。