オリエントスターから新たな機械式ムーンフェイズウォッチが登場した。何より魅力はルックスにある。ムーンフェイズという詩的なギミックを強調するかのように小径&薄型化したケースに、「時の匠工房」製のスタイリッシュな文字盤をセット。月齢ディスクも一層美観を高めている。しかも搭載するのは、自社製シリコン製ガンギ車を備えた新開発の手巻きムーブメントである。ムーンフェイズの佳品を多く手掛けてきたオリエントスターは、一層このジャンルにおける地位を確たるものとしそうだ。

新開発の手巻きムーブメントを載せた新たな月齢表示時計。こちらは数量限定モデルであり、繊細な型打ちにより、光の入る角度で表情を変えるグレーのグラデーション文字盤は、暗闇に光る「月」と「すばる」が重なる情景「掩蔽(えんぺい)」を表現したものだ。コードバン替えストラップ付属。自動巻き(Cal.F8A62)。20石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ11.9mm)。3気圧防水。国内限定100本。プレステージショップ限定。47万3000円(税込み)。なお、他に替えストラップが付属しない「RK-BW0003N」も公式オンラインストア限定で展開される。国内20本限定。45万1000円(税込み)。
Photographs by Takeshi Hoshi (estrellas)
吉田巌:文
Edited & Text by Iwao Yoshida
[クロノス日本版 2025年11月号掲載記事]
感性に訴える美しき月齢表現
オリエントは2025年、その高級コレクションとしてスタートしたオリエントスターは26年が、誕生75周年の節目となる。両ブランドともその歴史の重みを感じさせるモデルを続々リリース中だが、ことムーンフェイズに照準を絞るなら、オリエントスターの「クラシック M45」の新作は狙い目だ。「輝ける星」をコンセプトとするオリエントスターと、月の満ち欠けを表示する機構は相性が良く、初の月齢表示機構付きムーブメント「46系F7」搭載モデルを17年にリリースして以降、常にムーンフェイズはブランドの中でも高い人気を集めてきた。時計好きなら1本は備えておきたい伝統の機構を搭載しながら、良心的なプライスを実現し、美観的にも優れたモデルがそろうのも支持される要因だ。

新作の「M45 F8 メカニカルムーンフェイズ」のレギュラーモデル。厚いクリア塗装を施した放射筋目仕上げの白文字盤を装備し、右ページで紹介した限定モデルとはガラリと異なる、静謐な雰囲気に仕上げられた。ブルーの針もピュアな美しさを際立たせている。自動巻き(Cal.F8A62)。20石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ11.9mm)。3気圧防水。38万円(税込み)。
(右)クラシックコレクション M45 F7 メカニカルムーンフェイズ RK-BT0003L
ブランドを代表する人気コレクションも、デザインを細やかにアップデート。月齢ディスクの夜空もより深いブルーとなり、月や星も一層くっきりと表現された。トレンドのライトブルー文字盤も用意。自動巻き(Cal.F7M42)。22石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径41mm、厚さ13.8mm)。5気圧防水。国内限定270本。21万8000円(税込み)。
新作の「M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディング」は、そんなムーンフェイズの巧者の腕が冴えた会心作だ。まずデザインが素晴らしい。得意のオープンワークをあえて廃したシンプルなフェイスながら、限定モデルは型打ちとグレーのグラデーションで夜空の深淵を表現した文字盤、レギュラーモデルは繊細な放射筋目仕上げの白文字盤を装備し、とても奥行き豊か。悠久の夜空に浮かぶ月のゆったりした時の流れを表現するモデルにふさわしい仕上がりで、さすが「時の匠工房」製と感嘆する。
ケースをオリエントスターのムーンフェイズモデルの中で最も小径、かつスリムに仕立てたのもいい。フィット感が向上しただけでなく、クラシックなドレス感も高まった。見返しの高さを40%も薄くし、文字盤と風防の密着感が高まったところも、愛好家には好感ポイントだ。

ハイライトとなるムーンフェイズの見せ方も凝っている。従来同ブランドの月齢車は一体構造で、金属メッキのシールで月を表現していたが、新作では金属板と月齢車の間に2枚のマザー・オブ・パール(白蝶貝)を挟む3層構造に。星をちりばめた艶やかな金属板と、MOPの優しい輝きの月が美しいコントラストを見せ、盤面に神秘的、かつロマンチックなニュアンスを添える。なお、この月齢ディスクの構造は特許出願中だという。
シースルーバックから鑑賞できるムーブメントは、新開発の手巻きキャリバーF8A62。自社開発のシリコン製ガンギ車の採用などで約70時間ものパワーリザーブを実現し、仕上げも隙がない。

なお、新作のリリースと同タイミングで、現行の人気モデル「M45 F7 メカニカルムーンフェイズ」もデザインをリニューアル。より高品位なコレクションへと進化を果たした。クラシックな中にも、モダンな色気が香るムーンフェイズが欲しい人には、こちらも刺さるだろう。数量限定で新たに追加されたトレンドのライトブルー文字盤であれば、感度の高さもアピールできる。
なかなか悩ましいが、秋は夜が長い。自分の嗜好や装いによりマッチするムーンフェイズは「F8」と「F7」のどちらか? じっくり検討してみてほしい。
https://www.orient-watch.jp/orientstar/
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