ザ・シチズンより、新作「高精度年差±5秒 エコ・ドライブ エコ‧ドライブ50周年限定モデル」が発表された。本作はエコ・ドライブ50周年を記念した数量限定モデルであり、日本の伝統色「千歳緑(ちとせみどり)」の和紙ダイアルが採用されている。

Photographs by Masahiro Okamura (CROSSOVER)
野島翼:文
Text by Tsubasa Nojima
[2026年4月13日公開記事]
2026年は、エコ・ドライブ50周年
シチズンを象徴するテクノロジーのひとつが、光を時計の動力に変換するエコ・ドライブだ。エコ・ドライブの名称が使われ始めたのは、1990年代半ばのこと。しかし同社はそれ以前の1976年に、世界初の太陽電池式アナログクォーツウォッチである「クリストロンソーラーセル」を発表。1986年には200時間の連続駆動を実現した「アナログウィズ・ソーラーセル」を発表し、その後も省電力化とソーラーセルの高効率化による駆動時間の拡大を図った。
エコ・ドライブは、ソーラーセルで発電した電気を二次電池に蓄えるため、光を与え続けることができれば「電池切れ」のない点がメリットだ。長年の使用に伴っては、劣化によって二次電池を交換する必要が生じるが、通常の一次電池式クォーツウォッチに比べればメンテナンスの手間がかからないことも魅力である。これは同時に、環境にもやさしい“エコ”という特徴につながる。電池にはさまざまな金属や有害物質が用いられており、使い終わった電池は適切な処理をしなければ環境汚染や資源のロス、火災や爆発を招きかねない。二次電池を用いるエコ・ドライブは、これらのリスクを減らし、光によってエネルギーを作り出すサステナブルな存在なのである。
2026年は、そんなエコ・ドライブの始まりを飾ったクリストロンソーラーセルの登場から、50周年を迎えるメモリアルイヤーだ。シチズンはこれを記念し、ザ・シチズンの数量限定モデル「高精度年差±5秒 エコ・ドライブ エコ‧ドライブ50周年限定モデル」を発表した。

日本の伝統色である「千歳緑(ちとせみどり)」の和紙ダイアルを採用した、新作が登場。エコ・ドライブ誕生50周年を記念した、世界限定650本の稀少なモデルだ。光発電クォーツ。フル充電時約1.5年(パワーセーブ時)。Tiケース(直径40.0mm、厚さ12.2mm)。10気圧防水。世界限定650本。46万2000円(税込み)。
試行錯誤の末に実現した、千歳緑の和紙ダイアル
現行のザ・シチズンは、そのほとんどがエコ・ドライブムーブメントを搭載している。ザ・シチズンは言わずもがなシチズンを代表する高級ブランドであるが、高級機と光発電クォーツの相性はあまりよくないとされている。ソーラーセルに光を透過させる必要があるため、一般的なソーラーセルを用いた場合では、ダイアルの素材や装飾に制限が伴うのだ。しかし、ザ・シチズンでは光を透過しつつも優雅さをまとった素材、和紙を用いることによって、このウィークポイントを克服した。
2017年以降、さまざまな模様や色彩の和紙ダイアルを扱ってきたザ・シチズンだが、今回の新作では、生き生きとした新緑を思わせるグリーンの和紙を採用している。これは日本の伝統色「千歳緑(ちとせみどり)」であり、常緑樹の代表として知られる松の葉に由来した、不変を象徴する色として親しまれてきた。人生に永く寄り添うブランドとして、製品からサポートまでのトータルの質を高めてきた、ザ・シチズンを象徴するにふさわしい色と言えるだろう。
和紙ダイアルは、和紙を染料で染め上げることによって製造されているが、千歳緑の再現は単純な道のりではなかったという。単一の材料では緑を出すことができず、黄色と青色を混合することによって作り出さなければならない。ここで壁が立ちはだかる。マリーゴールドやレモンをはじめとする、さまざまな植物の黄色を試したものの、理想の色味を得ることができなかったのだ。
試行錯誤の末に辿り着いたのは、滋賀県の伊吹山周辺に自生するススキ属の多年草「伊吹刈安(いぶきかりやす)」。平安時代の書物にも記された歴史ある染料であり、柔らかな黄色を特徴とする。本作では複数回の染色と乾燥を重ねて黄色を定着させ、その上に藍を重ねることで、千歳緑に仕上げている。
安定して同じ色に仕上げるためには、職人の技術と経験が不可欠だ。色の定着具合やムラ、黄色と青色のバランスによって、作り出される色に違いが生じてしまうためである。理論上の完成を見た千歳緑を製品化するにあたっては、卓越した職人の存在が不可欠であったことを忘れてはならない。本作には、理想の色を実現するための同社の妥協なき姿勢が表れているのだ。

実機の千歳緑は、落ち着いた印象のグリーンだ。昨今多くのブランドがグリーンダイアルを定番色としてラインナップに加えるようになってきたが、明るいポップなものからダークでシックなものまで、その印象はさまざまだ。本作の和紙特有の繊維質なテクスチャーと、暗すぎず明るすぎない色調の組み合わせは、幅広いシーンで着用しやすいことだろう。
また、グリーン1色であればややのっぺりとした見た目になってしまっただろうが、6時位置のイーグルマークと秒針をゴールドカラーとすることで、メリハリを利かせている点も魅力だ。なお、インデックスなどは和紙に直接取り付けられているのではなく、和紙の上に重ねられたクリアなプレートに取り付けられている。そのことを感じさせないプレートの透明度も、和紙の質感をダイレクトに味わうための重要な要素である。
ザ・シチズンらしく、実用性への配慮も忘れられてはいない。3時位置の日付表示は、他のモデルと同様にやや大きめに取られ、インデックスと針には蓄光塗料がしっかりと塗布されている。
軽量性・耐蝕性・抗アレルギー性に優れた、スーパーチタニウム™製の外装
ケースとブレスレットの素材は、シチズン独自のスーパーチタニウム™製だ。これは、チタンに対して独自の表面硬化技術であるデュラテクトを施したものであり、ステンレススティールに比べて約40%軽く、さらに5倍以上の表面硬度を実現している。
ヘアラインとポリッシュに磨き分けられた立体的な仕上げや、一般的なチタンに比べて白みの強い輝きは、ステンレススティールと遜色ないレベルの審美性を備える。スペックシートを確認するか実際に手に持たない限り、一目でチタン製であると見抜くことは難しいだろう。

ケースの直径は40.0mm。現代のメンズウォッチとしてはポピュラーなサイズだ。デザインのベースはシンプルだが、3時側にリュウズガードを配し、ラグに面取りを加えることによって、シャープでスポーティーな雰囲気を漂わせている。ダイアルカラーも相まって、若々しさを感じさせる要素だ。ケースサイド2時位置に配されたコレクターは、パーペチュアルカレンダーを調整するためのものだが、十分に発電できていれば使用する機会はないだろう。
3連タイプのブレスレットは、細く2列にポリッシュを加えることで、上品な印象に仕上げている。プッシュボタンによって開閉する三つ折れ式のバックルが備わっており、必要十分な使い勝手だ。

染料探しから職人の手による染色まで、作り手の情熱が詰まった限定モデル
本作は、少し個性を利かせたビジネスウォッチとして、これ以上ないほどの“正解”と言えるのではないだろうか。定期的な電池交換が不要なエコ・ドライブならではの利便性に加え、軽量で手首に負担を生じさせないスーパーチタニウム™製の外装、天候を気にせず着用可能な10気圧防水など、基礎的なスペックを高い次元で備え、そこに個性的なグリーンダイアルを組み合わせている。
それもただのグリーンではない。不変の象徴として親しまれてきた千歳緑を度重なる試行によって生み出し、日本の伝統工芸である和紙の上に表現しているのだ。本作を着用するということは、そのまま日本の伝統や職人へのリスペクトへとつながる。
光をエネルギーに変えて動き続けるエコ・ドライブ。人生に永く寄り添うブランドでありたいと願うザ・シチズン。常に緑をまとう松の葉のように、不変の思いを込めた千歳緑は、本作を手にしたオーナーにも末永く愛用されていくことだろう。



