注目時計の〝中身〟を問う。新型ムーブメント深掘り鑑定術⑧チューダー「Cal.MT5450-U」

2026.07.27

クロノス日本版編集部が大絶賛したのが、2024年に発表されたチューダー「ブラックベイ 58 GMT」である。正直言うと、筆者が本特集を企画した大きな理由は、このモデルを取り上げたいがためだった。高耐磁性能と時差単独修正機能に、日付の瞬時送りを併せた本作は、現時点では最強のGMTウォッチである。

ブラックベイ 58 GMT

ブラックベイ 58 GMT
2024年の新作。瞬時送りの日付表示に、時差単独修正機能を併せ持つほか、なんとマスター クロノメーター規格もクリアする。小型のCal.5400系をベースとすることで、時計自体の厚みも12.8mm に抑えられた。自動巻き(Cal.MT5450-U)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SSケース(直径39mm、厚さ12.8mm)。200m防水。

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奥山栄一:写真
Photographs by Eiichi Okuyama
広田雅将(本誌)、鈴木幸也(本誌):取材・文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Text & Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
Edited by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2025年1月号掲載記事]


チューダーの作り上げた最強のGMTウォッチ

 チューダーの「ブラックベイ 58 GMT」はふたつの点で、極めて画期的なGMTウォッチである。ひとつは1万5000ガウスの高耐磁性能を要求されるマスター クロノメーター規格をクリアしたこと、そしてもうひとつが、時差単独修正機能と日付の瞬時切り替えを両立したこと。どちらかひとつを持つモデルはあるが、高耐磁性能と使い勝手の良さを併せ持つものはこれしかない。ブラックベイ 58 GMTは唯一無二のGMTウォッチなのである。

 以下、推測を交えて見解を述べてみたい。チューダーは、真の挑戦はこのムーブメントがMETASのマスター クロノメーター認定を取得する必要があったときに訪れたと説明する。「ムーブメントをマスター クロノメーター認定の厳格な基準に適合させるには、5400シリーズのムーブメント、特にこのキャリバーをより厳しい基準で再設計する必要があった」。具体的にどう再設計したか、詳細は不明だが、天真にセラミックスを採用したと推測できる。

ブラックベイ 58 GMT

こちらはストラップ版。裏蓋がフラットなチューダーの腕時計はそもそも装着感に優れる。加えて本作は、ラバーストラップと微調整可能なT-fitクイックアジャストクラスプにより、着け心地はいっそう軽快になった。レトロ風のデザインと小さなサイズが評価される本作だが、むしろ見るべきは抜けのないディテールである。

 GMT機構も優れている。搭載するキャリバーMT5450-Uは、リュウズを一段引き出して回すと、時針を1時間ごとに進めたり、戻したりできる時差単独修正機能が付いている。そして、その動きに連動して日付も切り替わる。ロレックスが開発したこの機構は、今や多くのGMTウォッチが採用するものとなった。加えて、ブラックベイ 58 GMTは、日付が瞬時に切り替わる点も新しい。もっとも、時針を単独で進めても瞬時切り替えにはならず、針を普通に回した際にのみ、瞬時に切り替わる。あえて日付のみのクイックチェンジを設けなかった理由は、日付を操作する禁止時間帯を設けないため。「なぜなら、すべてのユーザーが使用上の指示に従うとは限らないから」(チューダー)。

Cal.MT5450-U

Cal.MT5450-U
2018年に発表されたCal.MT5400系は、直径26mmというサイズながらも、約70時間という十分に実用的な長さのパワーリザーブを持つ次世代機。チューダーが小ぶりなモデルをリリースできるようになった理由だ。このムーブメントにGMT機構を加えたのが本作である。写真が示す通り、GMT機構はかなり大きいが、チューダーの言葉に従うなら、既存のものとは異なるという。実用機らしく仕上げは控えめだ。

 時差単独修正機能に連動して、日付を先送りしたり、逆戻ししたりするには、例えば、12時間で1回転する筒車を減速させ、24時間で1回転する歯車に突起を付け、日付表示をひっかけて回すだけだ。設計はさほど難しくない。一方の瞬時日送りは、筒車の回転でバネをチャージし、その解放する力で日付表示を瞬時に動かす。短時間で先送り・逆戻しする時差単独修正機能の日付表示と、時間をかけて切り替える瞬時日送りは、設計が別物であり、その両立はかなり困難だ。しかしチューダーは、「ブラックベイ GMT」が搭載するMT5652とブラックベイ 58 GMTのMT5450-Uでそれを実現した。チューダーの説明によると、日付の瞬時送り機構の正常動作のためには、約20時間分のパワーリザーブ残量が必要だという。

 しかし、チューダーは5652のGMT機構を、そのまま移したわけではなかった。

ブラックベイ 58 GMT

側面を裁ち落としたチューダーのケース。ラグの上面に施した強めのサテンも、そういった印象を強調する。風防はレトロなドーム状だが、中心だけを膨らませるのではなく、上面をできるだけフラットに成形し、角を丸めることで、レトロ感と視認性を両立している。リベット風のブレスレットも、高級ではないが十分上質だ。

「同じシステムと構造をこの小型ムーブメントに適応させるため、多くの工夫が求められた。小型ムーブメントにこのモジュールを適応させる過程では苦労もあったが、最終的には元のシステムを縮小したかたちが最適解であることが明らかになった」。あくまで想像だが、これはロレックスの3200系に同じく、筒カナから動力を取るタイプのGMT機構であるはずだ。

 満を持してリリースされたブラックベイ 58 GMT。そのレトロなルックスは時計愛好家に受けるだろう。しかし本当にこの時計を使ってほしいのは、世界を股にかけて飛び回るビジネスパーソンだ。使い勝手の良いGMTウォッチに高い耐磁性を盛り込んだ本作は、本当の意味で、使い勝手の良い時計なのである。



Contact info:日本ロレックス/チューダー Tel.0120-929-570


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【2024年を象徴する腕時計】チューダー「ブラックベイ 58 GMT」に決定! と思いきや⋯⋯

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