クォーツ式腕時計の電池交換、適切なタイミングは?

2023.02.10

電池で駆動するクォーツ式の腕時計は、電池が劣化する数年おきに電池交換が必要である。普通は動かなくなってから交換、と思われがちだが、実は電池が切れる前に交換するのが理想だ。今回はその理由を解説する。

広田雅将

2021年9月2日公開記事
2023年2月10日更新


クォーツ時計を長持ちさせるために重要な電池交換のタイミング

 時計愛好家でも意外と忘れがちなのが、クォーツ時計の電池交換である。特に電池が切れた後、長期間放っておくと電池が破裂したり液漏れを起こしたりして、時計本体がダメになる場合があることは、ユーザーとして必ず心得ておきたいものだ。

 クォーツ時計の電池は、どのタイミングで交換するのが適切だろうか。電池が切れて、時計が完全に動作を停止したら交換する、というのが常識だろう。パーペチュアルカレンダーや特殊なクロノグラフなど、動かす針が多い複雑なものを除くと、ほとんどのクォーツ時計は電池交換後に3〜4年は動作する。

電池交換

クォーツ時計で使用されるボタン電池が液漏れする原因は、主に「過放電」によるもの。過放電とは、電池の容量が0%の状態からさらにエネルギーを取り出そうとして放電することを言い、電池内部で大量のガスが発生して破裂する危険な状態になる。電池には破裂を防ぐために、規定の圧力を超えると作動する弁が設けられており、ガスを外部に放出する。その際に電解液も一緒に外部に放出され、これが液漏れとなるのだ。漏れた電解液は、クォーツムーブメントの故障の原因となってしまう。


交換時期は時計が教えてくれる

 しかしここで重要なのは、電池が切れる前に交換する方が理想だということ。電池が切れて一定の時間が経過すると過放電が始まり、いつ液漏れしてもおかしくない状態になるからだ。

 では“電池が切れる前”のタイミングは、どうやったらわかるのか。ポイントは時計の秒針の動きを観察することだ。多くのクォーツ時計の秒針は1秒ごとにステップ運針を行うが、これが1秒ごとではなく3〜4秒刻みで動作していたら「電池交換時期のサイン」だと判断してよい。

 時計用のボタン電池は数年間電圧を一定の値に保ち、切れる直前に電圧が低下する性質を持つ。クォーツムーブメント内部のICがこの性質を利用し、一定の電圧から低下したことを検知すると、ローターへ電気信号を送るリズムを変えるのだ。その動きはムーブメントの種類によって異なるが、「いつもの動きではなくなる」ことは共通である。

クォーツムーブメント

(左)ティソ(ETA製)のクォーツムーブメントは、3秒もしくは4秒ごとに秒針が動くようになる。ETAではこの機能を「EOL(END OF LIFE)」と呼ぶ。
(中)セイコーのクォーツムーブメントは、2秒ごとに秒針が動き、「電池寿命切れ予告機能」と呼んでいる。
(右)G-SHOCKなどのデジタル表示を持つ時計は、液晶が点滅するなどの機能で知らせる。


電池交換と同時にパッキンの交換も

 単に電池だけの交換もありだが、ケース内部のパッキンの状態も見ておくと良いだろう。タイミングは時計によってさまざまだが、2年から4年に1回程度が望ましい。ゴムや樹脂系のパッキンは劣化するものであるため、時計の防水性を保つには定期的な交換が必要なのだ。

パッキン交換

電池交換では当然ながら裏蓋を開けるが、その際もともとの防水性能を低下させることになる。可能であれば、電池交換と同時にパッキンも交換し、メーカーで防水試験を行うのが望ましい。

 また時計修理に精通していない限り、自分で電池交換を行うことは推奨されない。多くのクォーツ時計の電池交換は、裏蓋開閉工具やピンセット、ドライバーなどがあればできてしまうが、電池交換後の防水性の低下や、保証の対象外になってしまうなどのことを考えると、メーカーや専門店に頼む方が安心だろう。


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