IWC「パイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイア」をレビューする

FEATUREWatchTime
2020.09.30

IWCが展開するパイロットウォッチの「スピットファイア」シリーズ。今回は、その中より2019年の「パイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイア」についてIWCパイロットウォッチの歴史とともに紹介する。

Originally published on watchtime.com
Text by Martina Richter
Photographs by Olaf Köster
2020年9月30日掲載記事

IWC「パイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイア」

パイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイア

Ref.IW326801。自動巻き(Cal.32110)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径39.0mm、厚さ10.8mm)。6気圧防水。布製ストラップ。54万円(税別)。

「パイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイア」を初めて見た時に、既視感を覚える人もいるかもしれない。それは間違いではない、なぜならデザインのインスピレーションは1948年の伝説的な「マークXI(マーク11)」から来ているからだ。
 
 1940年代後半、IWCは英国政府の求めに応じて、英国王立空軍のための特別な時計の開発に取り掛かった。最初のモデルは48年より製作され、翌年11月に隊員たちに支給され、81年まで使用された。搭載するのは89系の手巻きキャリバーで、磁気からムーブメントを保護する軟鉄性のインナーケースに収められていた。

 軍用として生まれたこの時計は94年、デイト表示付き自動巻きムーブメント搭載の「マークXII(マーク12)」として市販化され、愛好家たちが手にできるようになった。

エレガントなパイロットウォッチ

「スピットファイア」の名前は、2000年への変わり目の頃に発表された1000本の限定モデルで初めて登場した。そして2003年よりコレクションとして定番化した。この頃のスピットファイアは、「マーク・シリーズをエレガントにしたパイロットウォッチ」と見なされていた。しかし、例えば16年に発表された「マークXVIII(マーク18)」は、シャツの下にすっきりと収まる薄型3針モデルであったように、どちらも系譜を重ねるごとに時代に適して進化を遂げている。

「パイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイア」には2モデル展開がある。ひとつは今回ピックアップしているステンレススティール製ケースに、ブラック文字盤とグリーンの布製ストラップが合わせられたもの。もうひとつはブロンズ製ケースに、グリーン文字盤とダークブラウンのカーフストラップが合わせられたものである。この2モデルは「スピットファイア」コレクションのベースモデルとなっているだけでなく、IWCのエントリークラスにも位置付けられている。

Cal.32110

ムーブメントはインナーケースによって磁場の影響から守られている。

 マット仕上げのステンレススティール製ケースは、マークXVIIIより1mm小型化した直径39mmサイズだ。傾斜のついたベゼルとねじ込み式のケースバックが備えられている。厚さは10.8mmと薄型で、スポーティーな外観でありながら、クラシカルなパイロットウォッチとしての佇まいを感じさせる。これに貢献しているのが、直径28.2mm、厚さがわずか4.2mmの自社製キャリバー32110だ。このムーブメントは耐磁性を上げるために軟鉄性インナーケースに包まれている。これはマーク11から継承される仕様だ。

 文字盤には、パイロットウォッチ然とした要素が採用されている。伝統的なパイロットウォッチをデザインの観点から語るならば、航空機器由来のデザイン、ブラックとホワイトの強いコントラスト、整然と引かれたミニッツスケール、視認性の高いアワーインデックス、槍型の針、12時のアワーインデックス位置に配された三角形が挙げられる。

パイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイア

「パイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイア」の特徴は、マーク11に由来する。

 12時位置にあるふたつのドットを伴った三角形は、パイロットウォッチの歴史に由来する。これは暗いコックピット内でも時計の針の位置を特定しやすくしたものだ。この三角形がベージュカラーで塗られていることで、ノスタルジックなタッチを文字盤に与えている。加えて、時分針と15分、30分、45分の3カ所にあるインデックスにもベージュのカラーリングが採用されている。これらには暗所で明るく光る蓄光塗料が塗布されている。これもIWCのパイロットウォッチの特性であり、マーク11以来受け継がれているものだ。

 搭載されるムーブメントは、従来のセリタ製ムーブメントから自社製のキャリバー32110へと移行している。IWCの32000系は、堅牢性と信頼性を誇るものだ。価格に影響を与えることなく自社製に置き換えられたことは特筆したい。32000系のムーブメントは、IWC独自の開発であるペラトン自動巻き機構と同様に、ローターをどちらの方向に回転させても主ゼンマイが巻き上げられるものである。巻き上げ効率が高く、シングルバレルで約72時間、つまり約3日間のパワーリザーブを実現している。

キャリバー32110

キャリバー32110はガンギ車とアンクルにシリコンパーツを採用している。


 キャリバー32110は、脱進機を構成するガンギ車とアンクルにシリコンパーツを採用している。32000系はIWCが自社で初めてシリコンパーツを採用したムーブメントだ。しかしヒゲゼンマイはシリコン製ではないため、耐磁性向上のため軟鉄製インナーケースの採用を継続している。またムーブメントには新しく開発された潤滑油が差され、パーツの耐用年数を高めている。

 ムーブメントは二重構造のクローズドケースバックのため眺めることができないが、IWCの流儀にのっとった仕上げがなされている。サーキュラーグレインで装飾された堅牢なブリッジや、IWCのロゴが刻まれたオープンワークのローターなどだ。これらが施されたムーブメントの精度は日差約+5秒と高い。IWCの時計師たちは、日常使いできるモダンなムーブメントをタイムレスな時計に搭載してスピットファイアを完成させたのである。

 2019年8月、ロンドンを起点としたスピットファイアの世界一周フライトをIWCがサポートした。1943年に作られた機体は数カ月をかけて約4万3000kmを飛行し、30カ国を訪れた。パイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイアの布製ストラップのカラーは、この成功に経緯を表している。古い戦闘機のカラーコードを踏襲したストラップは、高い信頼性とともに、スタイリッシュにその意味を伝えつつ、手首に時計を留めつけているのである。

パイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイア

スピットファイアのテキスタイルとレザーが合わせられたストラップのカラーは、時計の名前の由来となった戦闘機から着想を得ている。

技術仕様

リファレンスナンバー: IW326801
機能: 時、分、センターセコンド、デイト表示、耐磁性を高める軟鉄製インナーケース
ムーブメント: 自社製自動巻きキャリバー32110、2万8800振動/時、21石、ニヴァロックス製ヒゲゼンマイ、グルシデュール製テンワ、パワーリザーブ約72時間、直径28.2mm、厚さ4.2mm
ケース: ステンレススティール製ケース、ドーム型サファイアクリスタル製風防、6気圧防水
ストラップ&バックル: ステンレススティール製ピンバックル付属の布製ストラップ
サイズ: 直径39.0mm、厚さ10.8mm、重量80.5g
価格: 54万円(税別)

精度安定試験

(日差秒単位、フル巻き上げ時/24時間後)
着用時: +5.3
文字盤上: +8.5/+9.8
文字盤下: +8.3/+4.8
3時上: +5.5/+5.7
3時下: +1.3/+1.2
3時左: +1.9/+3.4
最大姿勢差: 7.2/8.6
平均日差: +5.1/+5.0
平均振り角
水平姿勢: 334゜/320゜
垂直姿勢: 287°/ 277°

※この記事はクロノスドイツ版の翻訳記事です。



Contact info: IWC Tel.0120-05-1868

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