ベゼルロック機能を備えるチューダー「ブラックベイ P01」、その精度を検証する

FEATUREWatchTime
2020.11.11

復刻を得意とするチューダーが、1960年代後半のプロトタイプをベースに2019年にリリースした「ブラックベイ P01」は、まだ世に知られていなかったチューダーの歴史的側面を明らかにするものだった。今回はこの実機のレビューを、クロノスドイツ版編集部のマルティーナ・リヒターが精度テストと合わせてお伝えする。

ブラックベイ P01

2019年に発表された「ブラックベイ P01」(右)と、モデルとなった1960年代のプロトタイプ、通称「コマンドー」(左)。
Originally published on watchtime.com
Text by Martina Richter
(2020年11月11日掲載記事)

チューダー「ブラックベイ P01」の歴史

 1950年代後半からアメリカ海軍へダイバーズウォッチを供給していたチューダー。その歴史をさかのぼると、100mの防水性能を備えた1954年の「オイスター プリンス サブマリーナー」Ref.7922へとたどりつく。細かな改良が加え続けられ、このシルエットと技術的特徴が確立されたのは、Ref.7928へと進化した64年のことであった。

「コマンドー」は特別なベゼルシステムのコードネームだった

 オイスター プリンス サブマリーナーRef.7928がアメリカ海軍の装備品として定着した頃、チューダーはより高機能な次世代型への開発へと乗り出す。その開発段階で、ある斬新な機能を持った試作品が生まれ、1968年に特許申請を行った。コードネーム「コマンドー」を冠したこの野心的なプロジェクトは実現することはなかったが、設計図は同社のアーカイブに大切に保存されていた。この設計こそが、ケースに設けられたヒンジ式の機構で、ロックを解除するとベゼルがリセットされ、ロックするとベゼルが固定されるものだった。これにはメンテナンスを容易にするものでもあった。

 2019年に発表された「ブラックベイ P01」(P01はPrototype No.1の意)には「エンドリンク」と名付けられたこのヒンジ仕様が組み込まれたが、その全機能を盛り込まず、主にロック機能のみが採用された。12時位置のラグの間に設けられ、これを使って両方向回転式ベゼルを固定することができるものだ。回転ベゼルはこの目的のために設計されたものではないが、理論的にダイバーズベゼルとして使用することが可能だ。30分単位の刻みを備えた12時間の目盛りは60段階になっている。1段階カチッと動かすと、1分ごとに設定される。経過時間を確認したい場合は、5分間隔のインターバルを考慮せねばならない。

ブラックベイ P01

回転ベゼルの目盛りは5分刻みだが、設定は1分ごとに可能である。

 ダイビング以外でのブラックベイ P01のベゼルの活用例を提示しよう。公園でジョギングをするなど短い時間を計測したい場合、ベゼルを回転させ、三角形のマーカーを分針の先端位置に合わせる。こうすれば5分単位での経過時間の読み取りが可能だ。サイクリングや、山でのハイキングなどより長時間となる場合には、時針の先端に向き合うように三角形のマーカーを合わせる。同様に三角形のマーカーと時針を合わせて、第2時間帯を表示させることも可能だ。

 これらの操作を行うには、12時位置のラグの間を押し下げてヒンジ機構を持ち上げる。これによりベゼルが解放され、両回転させることができる。押さえる箇所は、ヒンジ上にある小さな溝によって示されている。閉じるとベゼルと噛み合い、不意にベゼルが回転せぬようストッパーの役目を果たす。

ケース縦方向はラグ部分が特殊構造のために56mmほどの長さ(筆者計測値)がある。

12時位置の取り外し可能なエンドリンクによってベゼルの回転を防止する。


レトロな外観に秘められたモダンなムーブメント

 反射防止のために、ステンレススティール製ケースは完全なサテン仕上げとなっている。そのスポーティーな角ばったデザインは、リュウズプロテクターの近くにシャープなエッジが施されており、時計を手巻きする際にこのシャープさを感じることができる。巻き上げる際には、まず刻み付きのリュウズのネジを押し込まれた位置からほどいて巻き上げる。リュウズをミドルポジションに引き出して回転させると、デイト表示を調整できる。搭載される自社製キャリバーMT5612は、通常の腕時計で禁止時間帯とされる真夜中の日付送りも問題ない。

 キャリバーMT5612は、2015年に登場したチューダー初の自社製ムーブメントである。堅牢性、耐久性、信頼性を考慮して設計された大ぶりなテンプを採用する。

キャリバーMT5612

毎時2万8800振動の振動数と、約70時間パワーリザーブを備えるキャリバーMT5612がソリッドケースバック内に収まる。

 テンプに組み合わせられているのはシリコン製ヒゲゼンマイで、金属製のヒゲゼンマイよりも気温や気圧の変化、重力や磁場の影響を受けにくい。歩度調整は4カ所に取り付けられた慣性調整ネジで行われ、結果としてクロノメーターにふさわしい精度で稼働する。今回、数週間にわたる着用テストによりその精度は確認できた。主ゼンマイがほどけるにつれ、計時上はわずかに「マイナス」の傾向が見られたものの、完全巻き上げ時にはほとんど偏差なく時を刻んだ。

 キャリバーMT5612には、チューダーの典型的なスタイルで装飾されている。オープンワークが施されたローターや、その内側のブリッジはサテン仕上げだ。地板とその他のブリッジはポリッシュとサンドブラスト仕上げが施され、レーザーによるエッチングで仕上げられている。


歴史的な外観と現代の時計作りの組み合わせ

1960年代の「コマンドー」と同様に、リュウズは4時位置のケースサイドに設けられた。

 キャリバーMT5612は、センターで時・分・秒を表示し、文字盤はドーム型だ。ブラックベイのその他のモデル同様に、P01は1969年に初めてカタログに掲載された特徴的な角度を持つ「スノーフレイク」の針を備える。インデックスと針はその形状に蓄光塗料の塗布されたことが相まって、視認性は抜群だ。

 ストラップは、表面にレザーを貼り付けたラバーとのハイブリッドストラップだ。白色のステッチがヴィンテージ感を高めている。


日常使いに最適なコレクターズアイテム

 歴史に経緯を払って作られたブラックベイ P01に最終的な判断を下すと、これはもともとのプロトタイプがダイバーのために設計されたものであったとしても、現代ではダイバーズウォッチに位置付けるものではないだろう。ベゼルの要素や、モダンなムーブメントから、スポーツやアウトドアシーンに向く時計と言えそうだ。ヴィンテージウォッチの愛好家のデイリーウォッチとしても魅力的である。

ブラックベイ P01

ブラックベイ P01は、チューダーの歴史を堪能しながらデイリーに使いたい。