機械式ダイバーズウォッチが備える特徴的な機能を、豊富な現行モデルとともにご紹介

FEATUREWatchTime
2022.09.07

魅惑的な水面下の世界と神秘的な深海は、プロアマ問わず世界中のダイバーたちを魅了し続けている。温暖なビーチが好きな人もいれば、ひんやりとした山間の湖を好む人、そして氷の下の水中を愛する人さえいる。時代やニーズに応じてダイバーズウォッチも多種多様に進化を遂げている。今回はダイバーズウォッチが備える特徴的な機能を、現行モデルの数々と合わせて紹介する。

ダイバーズウォッチ

Originally published on WATCHTIME.NET
Text by Roger Rüegger
(2022年9月7日掲載記事)

気圧表示

 バール(bar)は、圧力の単位のひとつである。1気圧は1平方センチメートルに対して1kgの圧力が垂直に掛かかっている状態だ。10mの高さの水柱から生じる程度と同等であり、水はほとんど圧縮できないことから、10mの水圧は1気圧となる。

 1気圧の違いは取るに足らないように思えるかもしれないが、この表示は防水テストで加えられた試験数値であることを知っておいてほしい。プロフェッショナル向けのダイバーズウォッチは、少なくとも20気圧の水圧に耐える必要がある。

シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ

オメガの「シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ」は驚くべき600気圧の防水性能を誇る。理論的には、ダイバーはこのグレード5チタン製ウォッチを6000mの水深で使用できるのだ。逆回転防止機能付きベゼルはセラミックス製で、メタル合金製のスケールを備えている。METAS認定のマスター クロノメーターで、1万5000ガウス以上の耐磁性能と、シリコン“Si14”製のフリースプラングテンプを備える。自動巻き(Cal.8912)。パワーリザーブ約60時間。チタン(直径45.5mm)。600気圧防水。ポリアミド製NATOストラップ。169万4000円(税込み)。(問)オメガお客様センター Tel.03-5952-4400


逆回転防止機能付きベゼル

 ダイバーズウォッチには、事前に時間設定が可能なタイムプリセレクティング装置が求められる。もっとも一般的なのが、1方向にのみ回転する逆回転防止機能付きベゼルだ。これは潜水経過時間を表示する役割を果たすものだ。針同様にベゼルのマーカーも暗所で25cmの距離からの判読が求められ、特に12時位置のマーカーの視認性は重要となる。このベゼル位置は潜水直前、または水中で合わせられるため、ネオプレングローブの着用中でも操作しやすいように、つかみやすいものでなければならない。ダイバーズウォッチの中にはベゼルの取り外し可能なモデルもあり、これは毎回の潜水終了後に真水で洗う際に快適さをもたらすだろう。

 多くのベゼルが、最初の15分間分の目盛りを備える。減圧停止を要さない水深33mまでの一般的なダイビングにおいて、15分が最大潜水時間の目安とされるという説明がこれに当てはまるだろう。15分の目盛りによりダイバーは自身の潜水時間がどれぐらい残されているか正確に知ることができるのだ。

ポラリス・デイト・グリーン

ジャガー・ルクルト「ポラリス・デイト・グリーン」にはリュウズが2カ所にある。2時位置のリュウズはインナーベゼルを操作するためのもの、4時位置のものは時刻合わせ用だ。自動巻き(Cal.899AB)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径42mm)。20気圧防水。124万800円(税込み)。(問)ジャガー・ルクルト Tel.0120-79-1833

ロンジン レジェンドダイバー

ロンジンの「ロンジン レジェンドダイバー」もまた内蔵型の回転ベゼルを備え、追加されたリュウズによって操作できる。2022年にはカラーバリエーションが拡充し、アッシュグレーモデルなどが追加された。自動巻き(Cal.L888.5)。21石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径42mm)。30気圧防水。ファブリックストラップ。31万4600円(税込み)。(問)ロンジン Tel.03-6254-7350


耐浸漬性の確保

 高い防水性能にも関わらず、湿気がケースに入り込むことはある。水に飛び込んだり、泳いだりすると、想定よりも高い水圧が短時間にかかるあるのだ。特に危ないのが長時間の日光浴のあと、水に飛び込んで時計が急激に冷却される場合だ。水面にぶつかったときの圧力と、冷却による負圧が重なると、より早く水分が時計に浸透してしまうのである。時計内部に湿気が確認された場合、すぐに時計修理職人に見てもらう必要がある。

BR 03-92 ダイバー ホワイト

アビエーションモデルの印象の強いベル&ロスであるが、オリジナルモデルの提供を本格化し始めた1997年からダイバーズウォッチの提供を続けている。「BR 03-92 ダイバー ホワイト」はアイコニックなスクエアケースの形状をそのままに300mの防水性能を確保し、ISO 6425に準拠している。自動巻き(Cal.BR-CAL 302)。25石。パワーリザーブ約40時間。2万8800振動/時。SSケース(直径42mm)。300m防水。49万5000円(税込み)。(問)ベル&ロス 銀座ブティック Tel.03-6264-3989


視認性の確保

 堅牢性や防水性に加え、水中での視認性の良さは、趣味のダイバーからプロフェッショナルダイバーまで非常に重要なポイントとなる。何しろ水深10mでも非常に暗い環境となるのためだ。そのため、針や回転ベゼルの目盛りには蓄光素材の塗布が欠かせない。

 特にダイバーズウォッチのベゼルは深海でも容易に視認、操作ができなければならない。風防下にある空気の反射により水中下での視認性は低下もしくは視認不能となるため、基本的にダイバーズウォッチの風防には無反射加工が施してある。

エンジニア Ⅲ マーベライト クロノメーター

ボール ウォッチは内側に蛍光塗料を塗布したガラス管にトリチウムを充填して自発光させる「マイクロ・ガスライト」システムを採用。「エンジニア Ⅲ マーベライト クロノメーター」は針・文字盤に合計15個のマイクロ・ガスライトを採用する。また5000Gsの耐衝撃性や、8万A/mの耐磁性能を備える。自動巻き(Cal.BALL RR1103-C)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS(直径40mm)。100m防水。25万3000円(税込み)。(問)ボール ウォッチ・ジャパン Tel.03-3221-7807


ダイバーズウォッチ向けブレスレット

 ダイバーズウォッチにステンレススティール製ブレスレットは最も多い組み合わせだろう。通常ブレスレットには、ウェットスーツの上から長さを調節できるエクステンションが付属している。しかし傷の付きやすさも気になるところだ。そこで代替案としてラグ部分の折りたたまれたラバーストラップもある。このストラップは、必要な長さに調節できるだけでなく、水中の水圧の変化により適応性がある。ダイバーがより深く潜水すると、ウェットスーツは増加する水圧によって薄くなり、時計が滑り落ちる危険性がある。上昇の際にはそれと反対の現象が起きる。

1965 メカニカルダイバーズ 現代デザイン Save the Oceanモデル

セイコー プロスペックスの「1965 メカニカルダイバーズ 現代デザイン Save the Oceanモデル」は、ケースからセーフティフォールディングクラスプやエクステンション付属のブレスレットにまで硬質コーティングが施されている。自動巻き(Cal.6R35)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径40.5mm)。200m空気潜水用防水。14万8500円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012


耐塩性の高い素材

 塩水の作用は強く、時計の素材をだんだんと腐食させていく。そのためケース素材は耐塩水のものである必要がある。ステンレススティールの場合、耐孔食指数(PRE)でそれが分かる。高ければ高いほど、塩水に対する時計の耐性が高くなるのだ。その数値が32であれば、海水に耐えるものとなる。腕時計に多く用いられる「316L」は最大26のPREとなり、「904L」では35程度となる。それを上回る塩水への耐性を持つのがチタンで、ステンレススティールのわずか60%程度の重さで同じボリュームと高い耐腐食性を備えている。

 いずれも海水で着用した後のケースは真水で洗い流してほしい。

シチズン プロマスター メカニカル ダイバー 200m(NB6021-17E)

「シチズン プロマスター メカニカル ダイバー 200m(NB6021-17E)」は、ケース素材に軽量でキズに強いスーパーチタニウム™を採⽤。また第2種耐磁性能と平均⽇差−10〜+20秒の精度を備えたムーブメントを搭載する。自動巻き(cal.9051)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。スーパーチタニウム(直径41mm)。200m潜水用防水。9万6800円(税込み)。(問)シチズンお客様時計相談室 フリーダイヤル Tel.0120-78-4807


近年人気のブロンズケース

 探検家が活躍していた時代には、船具や航海用の道具は錫青銅で作られていた。2016年くらいを境に、ブロンズは腕時計のケース素材としての人気を高めている。海水に強いチタンとは対照的に、ブロンズには経年変化が現れる。この経年変化は内在する素材を腐食から守る銅が酸化した層である。ブロンズ製の時計ファンが好むのはまさに素材のこの特徴だ。時間の経過につれて、この経年変化により時計は唯一無二のものになっていく。ブロンズの特徴的な特性は、海水に対する耐性でもある。その他、耐磁性があり、摩耗しにくく、弾性があり、ステンレススティールに比べややもろく、約10%ほど重いという特性がある。

 銅と錫の混合物は、人類が最初に作った合金と言われている。合金には鍛造と鋳造の区別がある。鍛造合金は銅のほかに最大9%のスズを含み、鋳造合金は通常9~12%のスズを含んでいる。錫の含有量が20%の青銅はベルブロンズと呼ばれている。しかし青銅はこれ以外にも含有させることでその特性を変化させることができる。

スーパーオーシャン オートマチック 42

300mの防水性能を備えるブライトリングの「スーパーオーシャン オートマチック 42」にはブロンズケースが採用されている。逆回転防止機能付きベゼルはセラミックス製だ。フォールディングクラスプ付属のグリーンラバーストラップが組み合わせられ、15mmまでの微調整が可能である。自動巻き(Cal.Breitling 17)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。ブロンズ(直径42mm)。300m防水。68万2000円(税込み)。(問)ブライトリング・ジャパン Tel.0120-105-707

ダイバーズウォッチ用リュウズ

 3時位置のリュウズの配置は、潜水時に違いが顕著に出る。ダイバーズウォッチのねじ込み式リュウズまたはリュウズガードは、水中でのトラブル回避のほか、防水性を高めて浸水からムーブメントを保護する利点もある。

カーキ ネイビー オープンウォーター オート

特徴的なリュウズガードカバーを備えたハミルトン「カーキ ネイビー オープンウォーター オート」。ムーブメントにはニヴァクロン製ヒゲゼンマイを採用し、優れた耐衝撃性、耐温度変化、耐磁性を備える。自動巻き(Cal.H-10)。パワーリザーブ約80時間。SSケース(直径46.0mm)。30気圧防水。15万6200円(税込み)。(問)ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン Tel.03-6254-7371

RM 032オートマティック フライバッククロノグラフ

リシャール・ミルの「RM 032 オートマティック フライバッククロノグラフ セントバーツ」は、ケースにカリビアンブルークオーツTPT®とホワイトクオーツTPT®を採用。また防水性と耐久性を追及し、ミドルケースにはグレード5チタン、ラグと裏蓋にはカーボンTPT®が採用されている。さらにクロノグラフを操作し、回転ベゼルをロックするためのグレード5チタン製のプッシャーが備えられ、複雑な構造を成している。リュウズとプッシュボタンは、リュウズのリングを回転させるだけで簡単にロックできる。自動巻き(Cal.RMAC2)。62石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。直径50.85mm。300m防水。ラバーストラップ。3190万円(税込み予価)。世界限定120本。(問)リシャールミルジャパン Tel.03-5511-1555

サブマーシブル クアランタ クアトロ eスティール™

リサイクルベースの素材から成るステンレススティール合金をケースや裏蓋、リュウズプロテクター、ダイアルに用いたパネライ「サブマーシブル クアランタ クアトロ eスティール™」。自動巻き(Cal.P.900)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約3日間。サテンeスティール™ケース(直径44mm)。300m防水。134万2000円(税込み)。(問)オフィチーネ パネライ Tel.0120-18-7110


定期的な防水チェック

 防水性の証明は、検査時の一時のものでしかない。経年、摩耗、ダメージに伴い、状況はいつでも変化し、時間経過につれて、密封性は損なわれていく。熱、冷気、ほこり、塩水、溶剤がその速度を速める。そのため防水性は永続的なものではなく、定期的にチェックをせねばならない。特に高い防水性が求められる機能時計の場合はその必要がある。

 時計修理工房には、圧力を加圧または減圧し、高感度差圧センサーで漏れを検出するリークテスターで時計をチェックするところもある。時計を装置の中に入れ、蓋を締めて密封状態にする。すると装置が真空状態を作りだし、時計の入っている容器から空気を吸い出すと、センサーが時計のケースが陰圧の中で広がったかどうかを検知。時計が完全に密封状態であれば、変形に一定時間耐えられる。ケースがこの空気によるテストをパスすれば、より大きな水の分子にも耐えられるのだ。

ウィッチ プルーフマスター M

「ウィッチ プルーフマスター M」は防水性能を乾燥状態で検査できるテスターだ。

 また、メーカーは納品前に、指定された圧力に25%の安全率を加えた圧力でダイバーズウォッチをテストする。また、長期的に湿気が入らないことを担保するために、いわゆるフォグ・テストを行うところもある。まず時計を温めてから風防に水滴を付け、風防を冷やすものだ。水滴を拭き取った際にその内部に水の結露が確認されると、時計は完全に密閉されておらず、空気中の水分がケース内に侵入していることが分かる。このように一見シンプルに見える防水性の問題は、意外と重要性が高いものである。

モンブラン 1858 アイスシー オートマティック デイト

モンブランの「モンブラン 1858 アイスシー オートマティック デイト」はISO 6425に準拠した300mの防水性能を持つ。セラミックインサートが施された逆回転防止機能付回転ベゼルが備わり、ブレスレットには一体型の7段階エクステンションが付属し、9.65mmまで伸ばすことができる。自動巻き(Cal.MB 24.17/SW200ベース)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS(直径41mm)。300m防水。38万7200円(税込み)。(問)モンブラン コンタクトセンター Tel.0800-333-0102


ヘリウムエスケープバルブ

 ヘリウムエスケープバルブがその重要性を発揮するのは、プロフェッショナルダイバーによる飽和潜水時のみである。こういったダイバーは、水深150から300mへダイビングベルと共に行き、作業を行う。一定の潜水深度を超えると、人体はガスを吸収できなくなる。

 一定時間水中にいる、つまり高い水圧にさらされている場合、潜水時間を長くすれば減圧時間が長くなるわけではない。例えば、200mまで潜った場合の減圧時間は1週間かかるという。しかしそんなに長く水に浸かっていられない。そのため再圧タンクが使用されるのだ。潜水後ダイバーは船にある再圧タンクで生活するのである。タンク内の圧力は、作業をするためダイバーが潜った水深と同じものとなっている。

 圧縮空気内の窒素は30mくらいから影響を与えるので、再圧タンク内はヘリウムと酸素の混合で満たされている。小さなヘリウム原子が防水ケースの中に時計内の陰圧が周辺環境の気圧に適合するまで入り込んでいく。水面に出た時、時計内部の圧力はまだ周辺環境より高いが、ヘリウムエスケープバルブが過度な圧力を逃がしてくれるのだ。プロフェッショナルダイバーの類に属さないダイバーにとって、ヘリウムエスケープバルブは漏れを引き起こす可能性がある更なる開口部に過ぎない。

シースター 2000 プロフェッショナル

60気圧防水を備えるティソ「シースター 2000 プロフェッショナル」は、9時位置にヘリウムエスケープバルブを搭載している。ムーブメントには非磁性合金Nivachron™を用いたひげゼンマイが磁気の影響を受けない、パワーマティック 80を搭載する。自動巻き(cal.パワーティック 80)。SS(直径46mm、厚さ16.25mm)。パワーリザーブ約80時間。60気圧防水。12万9800円(税込み)(問)ティソ Tel.03-6427-0366



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