元々はロレックスの廉価版として登場し、今では人気ブランドとしての地位を確立したチューダー。チューダーの魅力や歴史を知ることで、自分にぴったりな1本を選ぶきっかけにしてほしい。
チューダーとは
チューダーは、かつて「チュードル」とも呼ばれ、ロレックスの真髄が詰め込まれた時計がリーズナブルな価格で買えるとして注目を集めた。しかし近年では「ロレックスの弟分」というイメージは薄れ、独自のブランドとしても人気が高まっている。
チューダーの歴史と魅力を紐解いてみよう。
チューダーの歴史
チューダーは、1926年にロレックスの創始者ハンス・ウイルスドルフ氏が設立した、ロレックスのディフュージョンブランドだ。
ロレックスはその当時から最高水準の時計技術を持っていたが、いかんせん製造コストが高く、一般層への認知度が低いことを課題としていた。そこでロレックスの知名度向上や販路拡大のためにロレックスのディフュージョンブランドとしてチューダーを設立したというわけだ。
ブランド名は、イギリス王家のチューダー家にちなんで名付けられている。誰もが知っている名前をブランド名にすることで、イギリス庶民に親しまれるブランドとして定着させることを狙いとしていた。
ロレックスの時計製造技術を持ちながら、一般層でも手に取りやすい価格のチューダーはすぐさまイギリスで人気を博し、ロレックスの地位や認知度も飛躍的に向上した。
その後チューダーは、ロレックスの発展とともに進化を続け、次第にチューダー独自のファンを獲得し始める。1960年代以降はデザインの差別化が進み、2015年には待望のチューダー初の自社製ムーブメント、キャリバーMT5602が誕生した。
チューダーの魅力
チューダーの最大の強みはやはり、ロレックスより低価格でありながら文字盤やリュウズ、裏蓋など、大半部分にロレックス同様のパーツが使用されている点だろう。特に、世界初の腕時計用防水ケース、オイスターケースがチューダーにも採用されているのは大きな魅力のひとつだ。
サイズやカラーのバリエーションも豊富で、高貴なイメージを持つロレックスに対して、一般に庶民に寄り添う印象が強く、幅広い層から愛されている。
とはいえ、ロレックスの「オイスター パーペチュアル サブマリーナ」とチューダーの「チューダー オイスター サブマリーナ」のように、一見するとロレックスとほぼそっくりというモデルも存在し、ロレックスを尊重しつつ、チューダー独自のブランドもどんどん発展させている点が非常に好印象だ。
チューダーとロレックスの違い
チューダーを購入するうえで気になるのは、やはりロレックスとの違いだろう。
ロレックスとチューダーの違いで最も大きな点は価格だが、それ以外に素材やムーブメントも違うので紹介する。
素材の違い
チューダーに使用されているステンレススティールは316L系と呼ばれる素材だ。これはいわゆるサージカルステンレスのことで、医療用器具やアクセサリーにもよく使用されるものだ。
一方、ロレックスに使用されているのはオイスタースチールというロレックス独自の素材だ。これは904L系のステンレス素材に属し、航空宇宙やハイテク産業で使用される素材と同等の耐蝕性や耐久性を持っている。
ムーブメントの違い
チューダーは、2015年に自社製ムーブメントを開発するまではETA製の汎用ムーブメントを使用し、大幅なコストの削減を図ってきた。
汎用ムーブメントではあるが、オメガやパネライ、タグ・ホイヤーなどの高級時計ブランドでも使用されているため、性能面に関しては申し分ない。
しかし15年以降のチューダーは、価格を抑えつつ精度を大幅に向上させた自社製ムーブメントを搭載している。高精度であるクロノメーターも取得しており、ロレックスのムーブメントに匹敵する性能を持っている。
一方ロレックスのムーブメントは、チューダーのさらに上をいく高い精度と堅牢製が自慢だ。ロレックスの時計に使用される自社製ムーブメントは、ほとんどのパーツにロジウムメッキが施され、サビや腐食を防ぐ工夫をしている。
また、時計の精度を左右するヒゲゼンマイも、チューダーはシリコン製だが、ロレックスはパラクロム製だ。シリコン製のヒゲゼンマイでも十分な精度を誇るが、やはり比べるとパラクロム製のヒゲゼンマイの方が精度は上だ。
チューダーの魅力が詰まった人気モデル6選
次に、チューダーの魅力がぎっしり詰まった人気のモデルを6つ紹介する。
ペラゴス39
ペゴラス39は、チューダーの中でも機能性を前面に打ち出したダイバー向けの1本だ。直径39mmとケースを小さく、薄くしたことで、どこでも使えるツール時計のイメージも強い。ペゴラス39の防水性は200mで、飽和潜水には対応しないものの、水遊びで使うには十分なスペックだ。
質の良い「酷使できる時計」を探している人にはピッタリだ。仕上げやステータスを自慢するような時計ではないが、長く使えて愛着が湧く1本となっている。
自動巻き(Cal.MT5400)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。Tiケース(直径39mm、厚さ11.8mm)。200m防水。53万7900円(税込み)。
レンジャー
レンジャーは、イギリス海軍による北グリーンランド遠征探検70周年を記念して製作されたモデルだ。「堅牢で実用的、そして手の届く存在のツール時計」をテーマに、勇敢な冒険の精神を体現する1本だ。
搭載するキャリバーMT5402は、ケニッシとの共同開発によるマニュファクチュールムーブメントで、クロノメーター認定を取得している。約70時間のパワーリザーブを備え、実用性と信頼性を併せ持っている。
自動巻き(Cal.MT5402)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm)。100m防水。37万1800円(税込み)。
ブラックベイ プロ
ブラックベイ プロは、ブラックベイのハイスペック版で、よりツール的な仕上がりをしている。直径39mmという小振りなケースと、程よいレトロ風デザインが魅力的な一本だ。
このモデルの大きな特徴は、レトロ風なデザインでありつつも、インデックスにセラミックスとルミノバを混ぜた夜行塗料を用いている点だ。ユニークさ×実用性を両立したブラックの文字盤は、チューダーの「らしさ」を表している。
自動巻き(Cal.MT5652)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm)。200m防水。48万6200円(税込み)。
ブラックベイ GMT
ブラックベイ GMTには、時計を単独調整できる使い勝手の良いGMT機構が搭載されている。
8つの丸型と6時・9時の長方形、そして12時位置の三角形で構成される、はっきりとしたアプライドインデックスは、文字盤のブラックに浮かび上がって非常に見やすく、夜光塗料が塗布されるため、昼夜を問わず高い視認性を持つ。
自動巻き(Cal.MT5652)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm)。200m防水。50万6000円(税込み)。
チューダーロイヤル
チューダー ロイヤルは、ケースからブレスレットまで流れるようなラインで構成された美しいフォルムを持ち、ロレックスには存在しないチューダー独自のデザインを採用したモデルだ。
2022年現在において54もの多彩なバリエーションがあり、メンズサ41mm・38mm、レディースは34mm・28mmからそれぞれ選択可能だが、曜日・日付表示は41mmのみで38mm以下は日付表示のみ搭載されている。
自動巻き(Cal.T603)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径41mm)。100m防水。36万5200円(税込み)。
チューダー 1926
チューダー 1926は、男女問わずクラシカルな時計を好む人々へ作られ、チューダーのブランドを創設した年にちなんで名付けられた1本だ。
チューダーが長年培ってきた技術を継承して作られた堅牢性と柔軟性を併せ持つブレスレットは、心地良い装着感と品質を考慮しつつも洗練されたデザインで、手首のカーブにピッタリと沿うように製造されている。
自動巻き(Cal.T201)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径41mm)。100m防水。22万4400円(税込み)。
チューダーにしかない魅力を堪能しよう
チューダーは、ロレックスの卓越した時計製造技術とリーズナブルな価格を両立させた、コストパフォーマンスが魅力のブランドだ。
しかし、チューダーがロレックスの弟分といわれたのはもう昔の話。チューダーは、独自の実用性と信頼性を築き上げてきた。
チューダーにしかない魅力に触れ、あなた好みの1本を選び抜いてほしい。
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