最高峰G-SHOCKとしての矜恃 ブランドカラーを纏ったふたつのMR-G

FEATUREその他
2022.12.15
PR:CASIO

2023年に誕生から40周年の節目を迎えるG-SHOCK。その歴史において、G-SHOCK最大の特徴である耐衝撃性能を踏襲しつつ、外装をフルメタル化して1996年にデビューしたのがMR-Gだ。なかでも、2022年に発売されて話題を呼んだ「MRG-B5000B」と「MRG-B2000B」は、最高峰シリーズにふさわしい構造や先進素材、仕上げを取り入れるのみならず、ブランドカラーであるブラック×レッドを纏い、G-SHOCKのアイデンティティーをしっかりと明示している。

G-SHOCK

三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura
竹石祐三:取材・文 Edited & Text by Yuzo Takeishi


分割構造によって実現した、最高峰にふさわしい“極”の艶

 1983年に発売され、現在に至るG-SHOCKの礎を築いたファーストモデル「DW-5000C」。その特徴的なフォルムを継承する「ORIGIN」をさらに発展させ、G-SHOCKのなかでも最高峰シリーズに位置付けられるMR-Gにふさわしいクオリティで作り上げたのが、2022年3月に発売された「MRG-B5000B」だ。そのコンセプトは“極”。外装パーツを細かく分割して隅々まで研磨することで、“ORIGINを極め”ようという意図から製作されたモデルだ。

G-SHOCK MR-G

MRG-B5000B-1JR
外装パーツを25個に分割しながらも耐衝撃性能を確保した新構造、マルチガードストラクチャーを採用したMR-Gであり、フルメタルORIGINの最高峰とも位置付けられる傑作。初代G-SHOCKのDW-5000Cの角型フォルムを踏襲しながらも、Bluetooth®を用いてスマートフォンと連携できるモバイルリンク機能を備えるなど、実用性を向上させている。タフソーラー。フル充電時約22カ月(パワーセーブ時)。64Ti×コバリオン(縦49.4×横43.2mm)。20気圧防水。46万2000円(税込み)。

 そもそも初号機のDW-5000Cは、樹脂製のケースとバンドを用いており、以降のORIGINもこれをスタンダードとしてきた。こうした樹脂モデルの場合は、通常、金型を作成し、そこに液体の樹脂を流し込む射出成形で製作されるが、外装にステンレススティールを採用した2018年発表の「GMW-B5000」では、加工のしやすさから、射出成形ではなくプレスによる成形を選択。とはいえ、1回のプレスでORIGINの複雑な形状は再現できないため、10回以上ものプレスや焼鈍し、研磨などの工程を組み合わせて“フルメタルORIGIN”を完成させるのだという。

1983年に発売された初号機DW-5000C(左)と、そのフォルムを踏襲しながら外装にステンレススティールを採用した、2018年発表のGMW-B5000(右)。フルメタル化にあたっては、複雑なケース形状を再現するために試行錯誤が重ねられたというが、MRG-B5000Bでは細部にまで研磨を施すため、構造そのものを見直さなければならなかった。

 ORIGINのフォルムを再現するのみならず、鏡面とヘアライン仕上げを組み合わせ、ステンレススティールモデルならではの高級感を生み出すことにも成功したGMW-B5000B。しかしながら、このモデルでは一体成形のケースを採用しているため、ケース四隅の凹凸部、さらにはブレスレットに施されたディンプル模様など、細かな凹面にまで研磨を施すことはできなかった。

 この問題を解消してORIGINを極めるべく、新たに考案された構造が、ケースカバーを25個のパーツに細分化するマルチガードストラクチャーだ。この構造を取り入れることにより、パーツの一つひとつに平面がもたらされることとなり、GMW-B5000では磨けなかった細かな凹面にまで、しっかりと研磨を施せるようにした。

 だが一方で、パーツを細分化する構造は弊害ももたらした。GMW-B5000は、時計の心臓部であるモジュールを保護するセンターケースとトップベゼルとの間に緩衝材を挟み、これによって耐衝撃性能を確保しているのだが、ケースカバーを分割してしまうと同様の構造が使えなくなってしまうのだ。

GMW-B5000では成し得なかった細かな凹部にまで研磨を施すべく、MRG-B5000Bではケースカバーを25個のパーツに細分化。各パーツの平面部分が確保できたことで研磨は容易になったが、一方では従来の耐衝撃構造が流用できず、ケースカバーの四隅に緩衝効果をもたらすT字型パーツを設置。そのうえでトップベゼルの上下や両サイドにも緩衝材をセットする構造、マルチガードストラクチャーを新たに考案した。

 そこでMRG-B5000Bでは、板状のバネを挟み込んだT字型のパーツを新たに開発し、ケースカバーの四隅に配置。このパーツがバネの作用で上下に摺動してバンパーのような役割を果たし、さらにはトップベゼルの上下や両サイドにも緩衝材を設置することで、あらゆる方向から加わる衝撃に耐えるようにした。つまりマルチガードストラクチャーは、G-SHOCKの中核である高度な耐衝撃性能を備えながらも、徹底した研磨で“極みの艶”も表現できるようにした、実に画期的な構造なのだ。

 

外装の上質感をいつまでも保つ、日本発の先進素材

 ORIGINを極めるにあたり、当然、カシオでは外装素材の選定にも注力した。MRG-B5000Bでは、これまでにもG-SHOCKの他モデルで使われてきた64チタンをセンターケースとカバーパーツに、トップベゼルにはコバリオン、ブレスレットのコマにはDAT55Gを採用。優れた耐傷性を備え、最高峰シリーズの上質感をいつまでも愉しめるようにするのみならず、日本で開発された先進素材を主要なパーツに用いることで、MR-Gが日本発の時計であると強くアピールできる、コンセプチュアルな要素も加えられた。

トップベゼルに採用されたコバリオンは、純チタンの約4倍の硬度を持ち、しかも研磨するとプラチナに匹敵する輝きを放つ日本発のマテリアル。硬質ゆえに微細な加工が行えないため、ディスプレイを確実に保護しつつ、その艶をしっかりと見せられるトップベゼルのみに用いられることとなった。

 そのひとつであるコバリオンを開発したのは、東北大学の千葉明彦教授。もとは、コバルトクロムモリブデン合金を医療用金属として国産化するべく、研究が進められた素材だ。主に人工関節などへの使用を想定していたため、素材によってアレルギー反応を引き起こさないことはもちろん、優れた加工性や耐久性も求められたが、その研究過程で新たに発見されたのが、この合金に窒素を加えると純チタンの約4倍もの硬度が備わり、しかも高温にすると加工が行いやすくなる点。そればかりか、表面を研磨するとプレシャスメタルに比肩する輝きを放つことも判明した。

 こうした素材特性を持ったコバリオンは医療用に限らず、アクセサリーなどにも用途を拡大していくのだが、難点はステンレススティールとほぼ同じ重さであること。時計の外装素材としては実に理想的な特性をいくつも併せ持っているのだが、かねてより装着感も重視してきたカシオだけに、すべての外装パーツをコバリオンにして重量を犠牲にすることはできない。そこでMRG-B5000Bではディスプレイを守りつつ、表情を艶やかに見せるうえで重要なエレメントとなるトップベゼルに、コバリオンを採用することとなった。

ブレスレットのコマに用いているのは、大同特殊鋼が開発したチタン合金DAT55G。コバリオンとは異なり、熱処理を加える前は比較的に軟らかいため、コマを繋ぐためのピン穴を空ける加工も行いやすかったという。また、MRG-B5000Bではブレスレットのディンプルもビスに変更され、ここにもしっかりと研磨が施されている。

 ブレスレットのコマに用いられたDAT55Gも、開発したのは日本の特殊鋼メーカーである大同特殊鋼。当初はゴルフクラブのヘッド用に開発されたチタン合金だ。ゴルフクラブと時計とでは用途が全く異なるが、カシオが着目したのはやはり、その素材特性。加工しているときはそれほど硬くないのだが、加工後に熱処理を加えると純チタンの約3倍の硬さになるというものだ。

 MRG-B5000Bの開発当初、カシオではブレスレットに64チタンを使用する予定だったが、それを阻んだのが64チタンの性質。熱処理によって硬質にはなるものの、硬すぎるため、コマ同士を繋ぐために必要なピン穴を空けることができなかったのだ。しかも高温になりすぎると素性が変わってしまうため、硬さが維持できなくなるのも、ブレスレットに使うには不向きとなった。

最も耐傷性が高いコバリオンをトップベゼル(上段左)に、センターケース(上段中)やケースバック(上段右)、バックル(下段右)には64チタン、そして加工性に優れたDAT55Gはブレスレットのコマ(下段左)にそれぞれ用いるなど、その特性が最大限に生かせるパーツに素材を振り分けている。

 結果としてコマの素材に選ばれたのがDAT55G。耐久性を備えつつ、研磨によって艶やかな表情を見せるコバリオンはトップベゼルに、一方の64チタンは細かな加工を必要としないセンターケースやカバーパーツに用いるなど、それぞれの素材特性を踏まえた最適な構成で設計。これに加え、前述のように、細部に至るまで徹底した磨き上げを行っているのだから、MRG-B5000Bはぜひ実物を手に取り、完成度の高さをじっくりと観察する価値がある。