【84点】パネライ/ラジオミール エイトデイズ チェラミカ -45mm

FEATUREスペックテスト
2013.04.03

セラミックス製ケースを採用することで、ラジオミール特有の外観とはまた趣きの異なる印象に仕上がっている。マットブラックは歴史的なフォルムによく似合う。水平スライド式パワーリザーブインジケーターにより、実用計器を思わせる意匠がより強化されている。

マニュファクチュールとしての地位を確立

いずれにしても、全歯車の軸が両側からしっかりと支持されている現在の設計は、非常に堅牢である。文字盤と針とともにムーブメントをケースから取り出すと、バランスコックに取り付けられた2個のローレットネジがよく見える。軸方向のアガキは、これらのネジで極めて精確に調整することができる。ロレックスで長年、信頼性の高さを証明してきた秀逸な設計である。微調整は緩急針ではなく、テンワに取り付けられた4個のバランスウェイトで行われる。緩急針を廃することで、ヒゲ棒によってヒゲゼンマイが規制されることなく、自由に抵抗も少なく振動することができるフリースプラング方式を採用することで、ヒゲゼンマイの耐久性が向上し、かつ、強い衝撃を受けてもヒゲゼンマイがヒゲ棒から外れることもなくなり、結果、長期にわたって高い精度が得やすくなった。

ムーブメントが堅牢性を重視して設計されていることは、バランスコックのほかにも、高いトルクで締め付けられたネジや、歯車の軸のホゾが太く設計されていることを見ればよく分かる。約8日間のパワーリザーブを備えたムーブメントでは、パワーリザーブが約2日間のムーブメントよりもはるかに大きな負荷がムーブメント全体にかかってくるから、その設計は理にかなっている。

文字盤側に目を移すと、文字盤の下にはもうひとつ、マットブラックのブリッジがあり、その下に水平スライド式パワーリザーブインジケーターが装備されている。パワーリザーブインジケーターのポインターは通常の針と同じように取り付けられており、文字盤を外す前に、他の針と一緒に取り外しておく必要がある。ポインターは、小さなブリッジの上にある1本のピンの上に取り付けられている。この小さなブリッジはラックにネジ留めされており、ラックはさらに下にあるフルフォーマットのブリッジに切削された溝とマットブラックのブリッジの間を移動するようになっている。ラックを支持する受け石はなく、動くと金属部品の接触部に摩擦が生じる。だが、ラックの動きは1日でわずか1mmという、ゆっくりとしたものなので、過度の摩耗が生じる心配はない。

手巻きキャリバーP.2002を完成させることで、パネライは2006年にマニュファクチュールとしての地位を確立した。キャリバーP.2002は、自動巻きムーブメントからトゥールビヨンまで、数多くのバリエーションのベースムーブメントとして貢献しており、開発時からセカンドタイムゾーンが搭載できるように設計されていた。このことは、リュウズの機能によく表れている。リュウズを1段引き出したポジションでは、時針のみを1時間刻みで前後に動かすことができる。日付もこの方法で調整する。日付早送り機能は搭載されていないが、日付を前後両方向に切り換えられるため、日付調整にはそれほど時間はかからない。リュウズを2段引き出すと、分を合わせることができる。8日間のロングパワーリザーブを備えたムーブメントでは、完全に巻き上げるまでに時間がかかるのは当然で、巨大なパワーを100%蓄えるにはリュウズを約200回、回さなければならない。その点、リュウズが扱いやすい形状に設計されているのはありがたい。

日付早送り調整機能よりも、是非、搭載して欲しかったのは、ストップセコンド機能である。キャリバーP.2002の別バージョンではストップセコンド機能が搭載されているばかりか、“ゼロリセットセコンド”仕様にさえなっているのだ。ゼロリセットセコンド機能では、リュウズを引き出すとスモールセコンドがゼロにジャンプし、リュウズを押し込むと秒針が再び動き出す。クロノグラフと同じ仕組みで、レバーが秒針車のハートカムを叩くことができるように地板に開口部が用意されているにもかかわらず、時刻を秒単位で正確に合わせるのに役立つこの有益なメカニズムは、残念ながらラジオミール エイトデイズ チェラミカ︲45mmには搭載されていない。
日付が瞬時に切り換わらないのも残念な点である。具体的には、22時15分に切り換わり動作が始まり、午前零時10分になってやっと、次の日の日付に完全に切り換わる。それほど大きな弊害となるわけではないが、新しく設計されたムーブメントでは必ずしも見たい現象ではなかった。

これとは異なり、8日間のパワーリザーブは極めて実用的である。この機能のおかげで、数日間、ゼンマイを巻き上げるのを忘れたとしても、時計がすぐに止まる心配はないし、巻き上げるタイミングも、水平スライド式パワーリザーブインジケーターでいつでも確認することができる。

ロングパワーリザーブが精度の向上に貢献する機能でないことは、周知の通りである。エネルギーが放出されるにしたがってトルクも次第に減衰するからだ。完全に巻き上げた状態では十分なパワーを供給できるが、時間が経つにつれてムーブメントに提供できるエネルギーは徐々に低下する。パネライは、3つの香箱を直列に接続することでこの問題の改善に取り組み、フル巻き上げ時と7日後のトルク差を小さくすることに成功した。さらに、時計師によって独自のテスト方法が開発され、フル巻き上げ時と7日後の精度がすべての姿勢で点検されている。振り角の許容範囲は170度から330度で、最大姿勢差はフル巻き上げ時と7日後の測定時にCTMP値(Contrôle Technique des Montres Panerai)で算出される。