MEMBERS SALON

オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク オフショア ダイバー(1/1) 2012年03月号(No.39)

AUDEMARS PIGUET ROYAL OAK OFFSHORE DIVER

ロイヤル オーク オフショア ダイバーを身に着けてヨットで旅に出たとしても、ダイビングにまでこの高級時計を使いたいとは思わないだろう。だが、この時計ならそれが可能なのだ。1972年に生まれたアイコン的タイムピース、ロイヤル オークの最もスポーティーなバリエーションは、その39回目の誕生日にテストに提供された。

アレクサンダー・クルプ: 文 Text by Alexander Krupp
OK-PHOTOGRAPHY: 写真 Photographs by OK-PHOTOGRAPHY
岡本美枝: 翻訳 Translation by Yoshie Okamoto

point
・名高いロイヤル オークの魅力的な派生種
・全部品の加工品質が極めて高い
・美しく機能的な自社製キャリバー

point
・潜水時間計測用インナーベゼルが合わせづらい
・SSモデルにしては高額

機能と贅の両立

の中には、本物のダイバーズウォッチと、ダイバーズウォッチに似せてデザインされた時計がある。前者は、ダイビングに必要なあらゆる機能を装備した上、水中でも損傷しないように設計されている。後者は一見、本物のダイバーズウォッチであるかのような印象を与えるものの、湿気に弱いレザーストラップが装着されていたり、防水性に不足があったりと、ダイビングで実際に求められる条件を満たしていない。

2010年にリリースされたロイヤル オーク オフショア ダイバーは、ダイバーズウォッチとしては常軌を逸した価格でありながらも、正真正銘のダイバーズウォッチである。ダイバーは往々にして2000ユーロ未満のモデルを使いたがるが、これは、ぶつけるなどして傷を付けてしまったとしても、あまり大きな物的損害が発生しないためである。その点、テストウォッチのように1万5100ユーロ(162万7500円)もする時計では、多少の損傷でも重みが違ってくる。それにもかかわらず、オーデマ ピゲは、スポーツとして潜水を楽しむダイバーに同行するのを少しも厭わないダイバーズウォッチを作り上げた。唯一の制約は、ダイビングスーツを着たままストラップの長さを調節できるエクステンションが装備されていないことである。そのため、ロイヤル オーク オフショア ダイバーのユーザーには、温暖な地域でダイビングを楽しむことをお勧めしたい。

だが、この点を除けば、オフショア ダイバーは、本物のダイバーズウォッチに求められるあらゆる条件を難なくクリアしており、20気圧どころか、水深300mの水圧に相当する30気圧の防水性を備え、潜水開始時刻を示すゼロポイントが発光する潜水時間計測用のダイビングスケールが装備されている。表示要素は暗所でも発光が持続し、時・分・秒の夜光針は、それぞれのフォルムの違いから明確に区別することができる。
回転式ダイビングスケールには、15分まで分目盛りが配されている。実際にダイビングで使用するとしても、ほぼ十分だろう。ダイバーベゼルは伝統的な形ではなく、回転式のインナーベゼルになっており、10時位置に設置された第2リュウズで操作する。テストウォッチのすべての構成部品が備える高い加工品質は、1分刻みでしっかりと噛み合う回転式インナーベゼルからもうかがうことができる。インナーベゼル用の第2リュウズは解除しやすく、回すのも快適だが、グローブを着用したまま操作するのは困難である。この点からも、テストウォッチが温暖な地域でのウォータースポーツに適していることが分かる。

第2リュウズはねじ込み式になっているので、ダイビングスケールの設定が知らぬ間にずれてしまう心配はない。せっかくねじ込み式を採用しているのだから、インナーベゼルは逆回転防止式ではなく、両方向に回せるように設計してもよかったのではないだろうか。両方向回転式であれば、ユーザーは、潜水セッションの開始時刻を示すゼロポイントを、より素早く楽に設定することができただろう。特に、この時計を左手首に着用すると、インナーベゼル用の第2リュウズは操作しにくい位置にあるので、なおさらである。

spec130128ap67b.jpg

堅牢なケースは湿気から磁気まで確実にシャットアウト。その中に、美しく、設計の秀逸な自動巻きキャリバー3120が収まる。

陸上でのメリット

これまで述べたように、オフショア ダイバーは潜水に適した時計である。だが、これほど美しく、高級で高額な時計を、潜水装備でこすって傷付けたり、水中から甲板に上がる時にぶつけたりしたいユーザーが実際にいるだろうか。どちらかと言うと、オフショア ダイバーは船上で午後のカクテルを楽しむ時や、港の高級レストランへディナーに出かける際に身に着けたい時計ではないだろうか。ラバーストラップを備えたスポーツウォッチであっても、ロイヤル オークはそのスタイリッシュな外観を損なわないため、オフショア ダイバーにはむしろ、こうしたシーンがふさわしい。スタイリッシュな外観には、“メガ タペストリー"と呼ばれるロイヤル オーク オフショア独自の格子パターンを備えた加工の完璧な文字盤が寄与している。今回の文字盤では、オレンジカラーの分針など、カラフルな要素は意図的に排されており、その代わり、時針と分針にはホワイトゴールドが使用されている。

一方で、オフショア ダイバーの持つ特別な魅力には、極めてファセット豊かな非の打ち所のない作り込みのケースも大きく貢献している。八角形のベゼルに取り付けられた六角形のステンレススチール製のビスや、サテンとポリッシュの美しいコンビ仕上げの面は、ロイヤル オークの他のモデルでも知られている要素である。ベゼルの下に挿入されたブラックラバー製の防水ガスケットは、すべてのオフショアモデルと同様に極めて厚く、オフショア ダイバーではさらに、ふたつのリュウズにラバークラッドが取り付けられている。同じく手の込んだ作りのケースバックは、トランスパレントバックではなく、粒状の模様彫りが施されたクローズドバックである。中央部には“Royal Oak OffShore"と浮き彫りされ、文字の表面にはポリッシュがかけられている。特にこだわりを感じるディテールは、ラグの上面と側面の境目だ。時計本体に向かって細くなった面にはポリッシュ仕上げが施されている。また、リュウズガードの面取りも、それ以上に繊細な仕上がりである。そもそも、オフショア ダイバーのケースは世界で最も優れたケースのひとつに数えられるのだが、そのエッジの効いた設計が故に、ワイシャツやセーターを着る場合には、長い袖の下に押し込まなければならないのが難点である。というわけで、オフショア ダイバーは、イブニングシーンで着用する際にも、やはり暖かい場所がふさわしいということになる。

ラグにはふたつの可動部があり、表と裏に入念なサテン仕上げが施されている。ストラップは、これらの可動部の恩恵により、ケースと継ぎ目なくつながっている。ストラップはシンプルなデザインながらも、しっかりとした作りと、表面に施された粒状の模様が説得力を与えている。粒状の模様には、ストラップの表側を埃から守り、裏側では汗の発生を抑える効果がある。ピンバックルの出来映えは素晴らしく、サイズが大きいことからストラップやケースとの相性も完璧で、堅牢なツク棒は幅の広い穴にしっかりと留まる。すべての部品が頑丈に設計されていることには、たったひとつだがデメリットがある。大きく、重たいスポーツウォッチは、控えめなタイムピースよりも必然的に着用時の快適さがやや劣ってしまう点である。
装着感に比べ、メインのリュウズの操作はずっと快適である。大きなリュウズは、特にラバークラッドの恩恵により緩めるのが簡単で、希望するポジションに引き出して、そこで回すことができる。巻き上げも、一段引き出したポジションで行う日付合わせと同様にスムーズである。リュウズを完全に引き出した状態で時刻合わせを行う際は、針の遊びがやや大きすぎる感があるものの、分針を合わせる時に、合わせたい時刻よりも少し先に進めてから希望する分まで戻すという、時刻合わせの基本的な約束事を必ず遵守すれば、深刻な事態に陥ることはない。

文字盤外周とインナーベゼルに備えられたインデックスが多いことや、夜光塗料が3分割された時針に加え、文字盤の構成がいささか込み入っているため、時計を見た時に一瞬、混乱を来す感が否めないとは言え、視認性は総じて良好である。暗所では、互いに主張し合う要素が少し静まるので、文字盤を明確に認識できるようになり、水中や夜間の船室内では潜水時間や時刻を簡単に読み取ることができる。

spec130128ap67d.jpg

堅実なムーブメントとフェアプライスは、ほかにはない逸品。ケースのディテールには今後の改善を期待。10時位置のケースサイドには日付修正用のプッシュピースがある。修正には付属品の専用スティックが必要。

隠された贅

自社製の手巻きキャリバー3090をベースとした自動巻きキャリバー3120を搭載したロイヤル オーク オフショア ダイバーには、たったひとつだけ残念な点がある。ムーブメントが見えないことである。ムーブメントをひと目でも見たいのなら、長期間保証された防水性や、軟鉄製インナーケースで確保された耐磁性を犠牲にして、ケースバックを留める8本のネジを外す必要がある。ケースバックのネジは、ネジ山がベゼルのビスと連結している。オーデマ ピゲが、ベゼルの上にあるビスの溝を、すべて文字盤の中心に対して同じ角度になるようにセットできるのはそのためだ。

ケースバックを外すと、278点もの部品で構成された、オーデマ ピゲ自社製ムーブメントにおける珠玉の逸品を堪能することができる。その考え抜かれた構造は、望むべき点がこれ以上、見つからないほど素晴らしい。腕の動きは、ボールベアリングで支持された両方向巻き上げ式のローターによって巻き上げエネルギーに変換され、香箱に伝えられる。香箱内の主ゼンマイによって確保されるパワーリザーブは約60時間と、平均を大きく上回っている。数日間、時計が停止した状態が続き、手で巻き上げなければならない場合は、賢い設計の巻き上げ機構によって抵抗が緩和され、過度な摩耗や損傷が発生しないように解除機構が装備され、守られている。調速機には、自由振動ヒゲと8個の調整錘を使ったエレガントな機構が採用されている。8個の調整錘のうち、6個は歩度を進めたり、遅らせたりするために、残りの2個は微調整のために使用される。テンプは、片持ちのテンプ受けではなく、両側からブリッジで支持されているので、衝撃に対しても極めて高い耐性を示す。

ムーブメントの装飾は数知れない。その大部分が手作業で行われており、ブリッジや地板だけでなく、ルビーの受け石やネジのための窪みにも面取りとポリッシュが施されている。また、ネジ頭やネジの溝にもポリッシュがかけられており、コート・ド・ジュネーブやサンブラッシュ仕上げ、また大小さまざまのペルラージュ模様も見ることができる。ハイライトはやはり、22Kローズゴールドでできたローターで、ブランド名とブランドロゴだけでなく、オーデマ家とピゲ家の家紋も刻印されている。

spec130128ap67c.jpg

徹頭徹尾、堅牢に。ケース、ストラップ、バックルは、調和が完璧。

潜水すべきか、せざるべきか

こうした数々の素晴らしいディテールにもかかわらず、テストウォッチでは精度にばらつきがあったのは驚きである。全6姿勢の平均日差はプラス3・3秒/日と小さかったものの、“文字盤上"と“3時上"の姿勢差は16秒もあった。ほとんどのユーザーは歩度測定機を所有していないので、普通は平均日差にのみ目が向けられるが、この姿勢差は気になるところだ。だが、着用テストでは平均日差がプラス1秒/日だったことから、頻繁に着用することを前提とすれば、この時計の精度は良好である。テスト中、リュウズを上にして動かさずに置いておくことがしばしばあったが、その場合は最大で2・5秒/日のマイナス値が観察された。

テストウォッチを詳細に観察した後で、スポーツウォッチの愛好家が購入を迷う点はふたつしかない。ひとつは、かなりの出費を覚悟しなければならない点である。作り込みが秀逸で、自社製ムーブメントを搭載しているとは言え、1万5100ユーロという価格は、スティールモデルの時計にしてはやはり高額だからである。ふたつ目の点は、“潜水すべきか、せざるべきか"という問題だ。だが、この疑問は、購入後に決めても差し支えないだろう。オフショア ダイバーは陸上でも水中でもスタイリッシュに身に着けられる時計なのだから。

技術仕様
オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク オフショア ダイバー

製造者: マニュファクチュール・ドルロジュリ・オーデマ ピゲ
Ref.: 15703ST.OO.A002CA.01
機能: 時、分、秒(ストップセコンド仕様)、日付、潜水時間計測用インナーベゼル
ムーブメント: 自社製キャリバー3120、自動巻き、2万1600振動/時、40石、耐震軸受け(キフ使用)、8個の調整錘を備えたグリュシデュール製フリースプラングテンプ、パワーリザーブ約60時間、直径26.6mm、厚さ4.25mm
ケース: SS製、フラットサファイアクリスタル風防(内側のみ無反射コーティング)、8カ所ネジ留めされたSS製ケースバック、ラバークラッド付きねじ込み式リュウズ(2個)、磁気の影響からムーブメントを守る軟鉄製インナーケース、300m防水
ストラップとバックル: ラバーストラップおよびSS製ピンバックル
サイズ: 直径42mm(ベゼル)、厚さ13.75mm、総重量168g
バリエーション:
価格: 162万7500円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

文字盤上 +12
文字盤下 +5
3時上 -4
3時下 +5
3時左 -1
3時右 +3
最大姿勢差: 16
平均日差: +3.3
平均振り角:
水平姿勢 296°
垂直姿勢 250°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 8pt.
操作性(5pt.) 3pt.
ケース(10pt.) 10pt.
デザイン(15pt.) 15pt.
視認性(5pt.) 4pt.
装着性(10pt.) 8pt.
ムーブメント(20pt.) 18pt.
精度安定性(10pt.) 6pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 11pt.
合計 83pt.

>>オーデマ ピゲのモデル一覧はこちら

前の記事

ロレックス/オイスター パーペチュアル エクスプローラーII

次の記事

オメガ/スピードマスター コーアクシャル クロノグラフ vs. プロフェッショナル

おすすめ記事

pick up MODEL

正規時計販売店

正規時計販売店

高級時計を取り扱う全国の正規時計販売店をご紹介。各店が行うフェア情報やニュースもお届けします!

時計ランキング

時計ランキング

その年の新作モデルや、機構、仕上げの完成度など、毎回決められたテーマの中から、優れた10本を時計ジャーナリストたちが選出します。

スペックテスト

スペックテスト

クロノスドイツ版の人気連載「TEST」の翻訳記事。腕時計のデザイン、機能などをポイント性によって評価します!

基礎からの時計用語辞典

基礎からの時計用語辞典

時計の部品、機構、ブランド名など、基礎から専門用語まで、広範囲にわたって解説します。時計の知識を深めるための用語辞典です。

PAGE TOP