【80点】ヴァシュロン・コンスタンタン/ケ・ド・リル・ デイ/デイト&パワーリザーブ・オートマティック

FEATUREスペックテスト
2011.11.29

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モジュール構造のケース。ベゼル、ケースサイド、ラグ(アタッチメントも含む)、ホルダープレートおよび裏蓋は、無限ではないにしても、多様な組み合わせが可能。

美しい自動巻き

リュウズを引き出すとテンプが板バネによって停止するストップセコンド機能は、マニュファクチュールキャリバー2475 SC/1が備える多くの利点のひとつであり、ケ・ド・リルを初めて手にしたユーザーは、これをサファイアクリスタルのトランスパレントバックから観察することができる。美しい自動巻きキャリバーは、グリュシデュール製テンワを備え、分割された受けによるクラシカルな構造を持つ。ムーブメントにはロジウムプレートが施され、受けのエッジは面取りされ、さらにポリッシュされている。コート・ド・ジュネーブやペルラージュ仕上げ、そして、ゴールドカラーのエングレービングなどの装飾も、伝統的な印象を与えている。また、巻き上げ機構や、ストップセコンド機能の板バネとレバーを見渡せる視界が確保されていることは、メカ好きな愛好家にとってはたまらないハイライトだろう。設計と装飾のクォリティが特に高い証として、ムーブメントにはジュネーブ・シールが刻印されている。品質を保証するこの刻印は、ゴールドカラーではなく、テンプの横に控えめに彫り込まれている。

自動巻きキャリバー2475 SC/1でモダンな印象を与えるのは、22Kゴールド製ローターである。このローターは、ルテニウムコーティングされていることから色調が一段と暗く、半円状の5本のリブと台形の開口部を持つ。ローターは、相反する要素の入り交じる魅力的な特性をムーブメントに与えている。これと共通する対照性は、クラシカルな文字盤に対するテクニカルな印象を与えるモジュール構造のケースという、この時計のほかの部分にも表現されている。トランスパレントバックから見ることができる開口部付きのローターは、片方向巻き上げ式だが、巻き上げ効率は高い。毎朝、数分間、手首に着けるだけで、最大約40時間のパワーリザーブがフルチャージされるのだ。
ケ・ド・リルを手にしたユーザーは、ムーブメントを観賞した後で、そろそろ時計を着けてみたくなっている頃ではないだろうか。ただし、着用するためにはもう少し辛抱が必要である。まず、クラスプの内側にある頭の大きな固定用ネジをドライバーで開け、手首のサイズに合う穴を見つけ、その後でもう一度ネジを固定しなければならないからだ。この安全対策は、非常に堅牢な作りのダブルフォールディングクラスプの他の部分と同様に、ユーザーとの強い連帯感を保証してくれる。ただ、工具を使わないとストラップの長さを変えられず、その結果、扱いづらくなっていることが、この安全対策の残念な点である。

ゴールド製のダブルフォールディングクラスプが少し特別に感じられるのは、堅牢な構造と外側のロックにあしらわれた大きな半マルタ十字に起因するだけではない。ロックとプッシュボタンのある側が反対側よりも長く作られており、構造が左右非対称であることにも原因がある。プッシュボタン自体は安全に機能するのだが、長い側しか開かない構造は残念である。プッシュボタンのないフォールディングバックルと同じように、開ける際には短い方を強く引っ張らなければならないのだ。ヴァシュロン・コンスタンタンは、盗難防止対策の向上を期すためにこの構造を採用したとしており、ボタンを押すだけで両側が開く構造では、着用者に気付かれずに時計を手首から引き抜くことができてしまうことを理由に挙げている。
ヴァシュロン・コンスタンタンがケ・ド・リルに装備したストラップも、クラスプ同様に品質が高い。残念ながら、テストウォッチは実際の商品とは異なり、型押しのカーフレザーストラップで提供され、掲載写真も同ストラップで撮影されている。純正ストラップは、後になってからクロノスドイツ版編集部に届いた。全面的に接着された手縫いのストラップは、ツヤ出し塗料が表面に薄く塗布されている。欲を言えば、縁を表革で包み込んで裏側から縫う縁返し仕立てにすべきだったかもしれない。だが、切断面の塗装も高級感があり、デザイン的にも技術的にも、十分な出来である。