【87点】ブライトリング/ ナビタイマー ラトラパンテ

FEATUREスペックテスト
2018.05.04

特筆すべき点は、スプリットセコンド用のプッシュボタンをリュウズと同軸に配したこと。これによりプッシュボタンがすべてリュウズ側にそろい、操作性が向上した。


ふたつの特許を取得

 ラトラパンテを自社で開発するということは、時計製作の分野において最大級の挑戦のひとつだ。それゆえにラトラパンテは貴重で、たいていの場合は少数生産品でしかお目に掛かれない。しかしブライトリングはクロノグラフのスペシャリストとして、すでに手中にしていた自社開発クロノグラフムーブメントを生産するシステムを構築した。そこに至るまでに、何年にもわたる研究とテストが必要だったことは言うまでもない。その技術的基盤の上にさらに開発されたのが、ふたつの特許を取得した革新的な機構である。特許のうちのひとつは、スプリットセコンド針が一時停止する際にクロノグラフランナーとの連結が切り離されるアイソレーターだ。ブライトリングは従来使用していた製造が容易ではない円柱形のピンを、プレス成型による一体型のパーツに変更している。プレス成型を導入することでブライトリングは、より製造を簡略化することに成功した。また、ハートカムなどの機構部品を肉抜きしたため、より少ないエネルギーでクロノグラフを作動させられるようになった。

 ふたつ目の特許は、スプリットセコンド針の停止メカニズムに関するものだ。従来は縁がなだらかな歯車か、もしくはごく細かい歯を付けた歯車を使用して、それを両側から挟み込むように別のパーツが働いて動きを止めていた。しかし、ナビタイマー ラトラパンテでは自転車のブレーキから着想を得たラバー製のOリングをまとった歯車を採用している。このメカニズムも前述のものと同様に製造が簡単で、細かいタイミングでの停止が可能になった。リセットの際は、ふたつの針は素早く飛び跳ねて後退する。その様子はもちろん肉眼でも確認できる。

 こうしたクロノグラフの動作に頼もしく応えてくれるムーブメントがキャリバーB03だ。このラトラパンテのメカニズムは28個のパーツからモジュールとして構成され、文字盤側の地板と日付表示の制御メカニズムの間に組み込まれる。この構造のおかげでモジュールやムーブメントの組み立てのみならず、メンテナンスをも簡略化できた。キャリバーB03は、よく練られた構造を持つキャリバー01を基に手を加えたものだ。精度に関しては、ゼンマイがフルに巻き上がっている状態でテストを行ったが、詳細に関しては精度安定試験のデータを参照していただきたい。

 技術者の息吹を感じさせるこのモデルのムーブメントは、限定品の18Kローズゴールドケースの裏側からのみサファイアクリスタル越しに見ることができる。今回のテスト用に借りたステンレススティールケースモデルはトランスパレントバック仕様ではなく、ブライトリングの典型的な裏蓋を使用している。この裏蓋はねじ込み式ではあるが、防水性能は3気圧にとどまるため、最新式のスポーツウォッチとしては、やや物足りないと感じてしまう。ちなみに裏蓋には、クロノグラフとは特に関連がないが、温度の摂氏と華氏の換算表があるのも特徴のひとつだ。

着用感は上々

 今回取り上げたナビタイマー ラトラパンテのストラップはクロコダイル製だ。片折れ式のフォールディングバックルが付いており、ストラップの長さを細かく調節できる。柔らかくしなやかな革のおかげで、着けているのが気にならないほど自然な感触だ。

 時計業界では、クロノメーター級に迫る精度と新しいコンセプトを持った独創的なムーブメント搭載モデルとなると、ゴールドケースのみの少数限定品で価格も相当なものであるのが普通だ。しかしこのナビタイマー ラトラパンテの価格はステンレススティールタイプで124万円から。ブライトリングの長年のファンのみならず、クロノグラフの愛好者は、大いにそそられるのではないだろうか。