非常に硬いため傷に強く、耐退色性にも優れたセラミックス。かつてはその製造・加工の難しさから、色や仕上げのバリエーションは極めて限定的であった。しかし近年、鮮やかな原色から繊細なニュアンスカラー、さらには高級時計特有の美しい表面仕上げまでもが実現されている。これらは、ブランドが数多の困難を超えて到達した、ひとつの技術的な到達点だ。ブランドの誇りとも言うべき素材の限界に挑戦した腕時計を、時計有識者が厳選した。

[クロノス日本版 2026年3月号掲載記事]


色彩表現と表面仕上げに挑戦するセラミックス製モデル

10位 IWC/ビッグ・パイロット・ウォッチ・トップガン “モハーヴェ・デザート”

23point / 2persons

ビッグ・パイロット・ウォッチ・トップガン “モハーヴェ・デザート”

IWC「ビッグ・パイロット・ウォッチ・トップガン “モハーヴェ・デザート”」
自動巻き。セラミックケース。267万800円(税込み)。(問)IWC Tel.0120-05-1868

IWCはかなり以前からセラミックス製ケースの研究を積み重ねてきたメーカーだ。最近はこの「ビッグ・パイロット・ウォッチ・トップガン “モハーヴェ・デザート”」のようなアースカラーのセラミックスに注力しているようだ。他社がどちらかというとビビッドなカラーを追求している中、IWCのこの方向性を引き続き注視していきたい。(名畑)

9位 ブルガリ/オクト フィニッシモ

25point / 2persons

オクト フィニッシモ

ブルガリ「オクト フィニッシモ」
自動巻き。セラミックケース。288万2000円(税込み)。(問)ブルガリ・ジャパン Tel.0120-030-142

極薄のセラミックス製ケースというだけでも珍しいが、マットな表面はサンドブラスト加工によると言う。硬度が高いセラミックスをマットにするための研磨剤は、より硬度の高いセラミックスが使われているに違いないが、これもまた取材したいところである。(名畑)

8位 リシャール・ミル/RM 07-01 オートマティック カラーセラミックス

28point / 2persons

RM 07-01 オートマティック カラー セラミックス

リシャール・ミル「RM 07-01 オートマティック カラー セラミックス」
自動巻き。パウダーブルーTZPセラミックケース。要価格問い合わせ。(問)リシャールミルジャパン Tel.03-5511-1555

カラーセラミックスの遊び心に特化したモデル。それゆえTZPセラミックスをケースばかりにではなく、文字盤の装飾にも用いているという趣向が実に心憎い。(野上)

7位 IWC/パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41 トップガン・ミラマー

32point / 2persons

パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41 トップガン・ミラマー

IWC「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41 トップガン・ミラマー」
自動巻き。セラミックケース。215万500円(税込み)。(問)IWC Tel.0120-05-1868

現代の腕時計においてキーワードともいえる「中間色」。文字盤ではパルミジャーニ・フルリエがうまいが、セラミックケースではパントーン社と色の独自開発を進めるIWCの躍進が目を引く。独自のカラーパレットは他にないセンスがあり、なんとも言えない色味を実現している。(安藤)

6位 オメガ/スピードマスター全般

33point / 5persons

スピードマスター グレー サイド オブ ザ ムーン

オメガ「スピードマスター グレー サイド オブ ザ ムーン」
自動巻き。セラミックケース。232万1000円(税込み)。(問)オメガ Tel.0570-000087

アポロ8号の司令船操縦士であったジム・ラヴェル船長の「月は本質的にグレーだ」という言葉になぞらえた、物語性豊かなグレーのセラミックス使いに心が弾む、グレー文字盤の「スピードマスター グレー サイド オブ ザ ムーン」。(野上)

5位 オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク全般

34point / 2persons

ロイヤル オーク オートマティック

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク オートマティック」
自動巻き。セラミックケース。858万円(税込み)。(問)オーデマ ピゲ ジャパン Tel.03-6830-0000

外装を既存モデルからセラミックスに置き換えただけの腕時計だが、かなり難しいことをやっている。セラミックスに変更する場合、普通は外装の設計ごと改める。しかし、オーデマ ピゲは通常モデルと全く同じ外装設計と仕上げを、セラミックモデルに与えてみせた。コストはかかるだろうが、あえて変えなかったのは意地だろう。(広田)

4位 ゼニス/クロノマスター スポーツ 160th エディション

35point / 3persons

クロノマスター スポーツ 160th エディション

ゼニス「クロノマスター スポーツ 160th エディション」
自動巻き。セラミックケース。完売。(問)ゼニス ブティック銀座 Tel.03-3575-5861

しばしば星空を眺めていたという創業者ジョルジュ・ファーブル=ジャコのストーリーにも絡めた物語性あふれる色彩が秀逸な「クロノマスター スポーツ 160th エディション」。明るめの発色だが、マイクロブラスト加工で落ち着いた風情を見せている点が見逃せない。(野上)

3位 オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ全般

48point / 3persons

ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ」
自動巻き。セラミックケース。要価格問い合わせ。(問)オーデマ ピゲ ジャパン Tel.03-6830-0000

Ref. 26238CD.OO.1300CD.01は、「ナイトブルー、クラウド50」を表現した絶妙な色彩のモデル。艶消しとポリッシュの手作業による仕上げが豊かな表情を導き出す。自らのアイデンティティーを表現する実力を感じさせてくれた1本。(野上)

2位 ウブロ/ビッグ・バン全般

91point / 6persons

ビッグ・バン ウニコ イエローマジック

ウブロ「ビッグ・バン ウニコ イエローマジック」
自動巻き。セラミックケース。世界限定250本。418万円(税込み)。(問)LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン ウブロ Tel.03-5635-7055

カラーセラミックスの第一人者といえば、間違いなくウブロだ。「ビッグ・バン ウニコ イエローマジック」は鮮烈なイエローとブラックのコンビネーションが圧倒的な存在感を誇示する傑作。(名畑)

セラミックスのポップ表現の枠を広げた快作「ビッグ・バン ウニコ イエローマジック」。(篠田)

1位 シャネル/J12全般

95point / 6persons

J12 キャリバー 12.1

シャネル「J12 キャリバー 12.1」
自動巻き。セラミックケース。138万6000円(税込み)。(問)シャネル カスタマー ケア センター Tel.0120-525-519

ハイテク素材なのに形状はスタンダードという潮流を作った歴史的名機。しかし、その透明感あふれる美しい表面仕上げからは「ただ者じゃない」感があふれ出していく。(名畑)

時代を変革させたマイルストーン的傑作。(篠田)


選考委員による選定モデルの詳細

野上亜紀 時計・宝飾ジャーナリスト
「素材に絡めた物語性も興味深い」

近年高騰する金に変わり、注目されているセラミックス。最近では鮮やかな色彩に加え、難しいとされる中間色のパステル系も増えてきた。豊かな色彩や丹念な仕上げが織りなす絶妙なニュアンスカラーを、ブランドのレガシーと重ねる表現方法も多く見受けられる。そんな在り方は、今後定番の素材として確立されることを予感させる。

  1. シャネル/J12 BLEU キャリバー 12.1
  2. リシャール・ミル/RM 07-01 オートマティック カラーセラミックス
  3. ゼニス/クロノマスター スポーツ 160th エディション
  4. IWC/インヂュニア・オートマティック 42 Ref.IW338903
  5. オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ Ref. 26238CD.OO.1300CD.01
  6. ウブロ/ビッグ・バン ワンクリック ミントグリーンセラミック ダイヤモンド
  7. パネライ/パネライ ルミノール GMT チェラミカ PAM01460
  8. オメガ/スピードマスター グレー サイド オブ ザ ムーン
  9. ウブロ/ビッグ・バン 20th アニバーサリー レッドマジック

篠田哲生(50歳) ウォッチディレクター
「表現力を楽しむ現代のセラミックス」

硬くて耐傷性に優れた実用素材から、表現力を楽しむ素材へと進化するセラミックス。その展開の速さと広がりには驚く。セラミックモデルの魅力は実用性と審美性にある。この両要素の比重で変化する個性も魅力的。3年ほど前にセラミックモデルを購入した。軽量であり、摩擦や衝撃を受けても、傷が付きづらいため、満足度は高い。

  1. ウブロ/クラシック・フュージョン オーリンスキー ブラックマジック
  2. オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ
  3. シャネル/J12
  4. ラドー/トゥルー シンライン
  5. ウブロ/ビッグ・バン ウニコ ミントグリーンセラミック
  6. リシャール・ミル/RM 07-01 オートマティック カラーセラミックス
  7. IWC/インヂュニア・オートマティック 42 Ref.IW338903
  8. チューダー/ブラックベイ セラミック
  9. オメガ/スピードマスター ダーク サイド オブ ザ ムーン
  10. ウブロ/ビッグ・バン ウニコ イエローマジック

安藤夏樹(50歳) 時計ジャーナリスト
「カラーセラミックスはネクストステージへ」

強い発色が難しかったセラミックスは、技術革新でより明るくポップな色味が可能となった。他方で、派手さから玩具的な印象を与えてしまったのも事実だ。中間色の文字盤が人気を集める中、それがケースへ波及するのは当然の流れだろう。中間色ではより絶妙な色彩センスが問われるだけに、各ブランドの実力が試される。

  1. シャネル/J12 BLEU
  2. オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ ナイトブルー、クラウド50採用モデル
  3. IWC/パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41 トップガン・ミラマー
  4. ウブロ/ビッグ・バン ワンクリック ミントグリーンセラミック ダイヤモンド
  5. ゼニス/パイロット ビッグデイト フライバック 160th エディション

髙木教雄(63歳) ライター
「独創性が光るセラミックウォッチ」

ラドーとIWCが先駆けたセラミックウォッチの製造技術は、40年ほどで劇的に進化。金型成形や切削加工の向上はこの素材での複雑な加工を可能とした。また、ある色見本の全色を再現できるそうだ。レーザーによる加工、ヘアライン的なマットなど仕上げも目を見張る。セラミックスが一般化した今、独自性に着目して10作を選んだ。

  1. ウブロ/ビッグ・バン ウニコ マジックセラミック
  2. ラドー/プラズマ ハイテクセラミックス 採用モデル全般
  3. シャネル/J12 BLEU キャリバー 12.1
  4. オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク ダブル バランスホイール オープンワーク
  5. IWC/ビッグ・パイロット・ウォッチ・トップガン “モハーヴェ・デザート”
  6. ブランパン/フィフティ ファゾムス バチスカーフ コンプリートカレンダー
  7. ゼニス/クロノマスター スポーツ 160th エディション
  8. チューダー/ブラックベイ セラミック“ブルー”
  9. ルイ・ヴィトン/タンブール オトマティック セラミック
  10. オメガ/スピードマスター グレー サイド オブ ザ ムーン

名畑政治(66歳) 時計ライター
「派手なカラーこそセンスが問われます」

今回のテーマを聞いて調べたが、カラーや表面処理に挑戦しているモデルはまだまだ少なく、大半がマットなブラックであることに、ちょっと驚いた。とはいえ派手であれば良いというわけではなく、逆にそれを身に着ける人のセンスが問われるな、と自分の好きなビビッドなカラーのモデルを紹介しつつ思った。例によってすべて同列、順位なし。

  • シャネル/J12
  • ラドー/トゥルー スクエア スケルトン
  • ウブロ/ビッグ・バン ウニコ イエローマジック
  • オメガ/スピードマスター ムーンフェイズ ブルー サイド オブ ザ ムーン
  • ゼニス/クロノマスター スポーツ 160th エディション
  • ブルガリ/オクト フィニッシモ
  • IWC/ビッグ・パイロット・ウォッチ・トップガン “モハーヴェ・デザート”

広田雅将(51歳)『クロノス日本版』編集長兼アートソルジャー
「意外な伏兵はIWCだった」

今や、多彩な色を実現できるようになったセラミックス。素材の特性上、ねじ込み式の裏蓋を採用できないが、I WCはケース設計に工夫を凝らし、それを実現した。しかもケースの直径は41mmしかない。裏蓋までを一体化させて気密性を上げた新しい「J12」も魅力的だ。

  1. オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク Ref.26240CE.OO.1225CE.01
  2. ウブロ/ビッグ・バン インテグレーテッド スカイブルーセラミック
  3. IWC/パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41 トップガン・ミラマー
  4. ブルガリ/オクト フィニッシモ
  5. シャネル/J12
  6. オメガ/スピードマスター ダーク サイド オブ ザ ムーン
  7. ベル&ロス/BR-05 ブラックセラミック
  8. ラドー/トゥルー スクエア シンライン
  9. グランドセイコー/GMT SBGC253
  10. パネライ/ルミノール ディエチ ジョルニ GMT チェラミカ


ランキングの集計ルール
●選考委員は、各号のテーマに沿った腕時計を10本選び、順位をつける。
●選考委員ひとりあたりの所持ポイントを110点とし、これを1位20点、2位18点……10位2点として選考モデルに振り分ける。
●選考された時計が順位なしの場合は、所持ポイントを10等分して、各モデルに11点を与える
(選考本数が10本に満たない場合でも、1モデルあたり11点とする)。
●獲得点数が同点となった場合は、選考者数の多いモデル、その中で選考順位の高いモデル、プライス設定の低いモデルの順で優位とする。
●最低有効得票数を2票とする。


シャネル/J12

ウブロCEOのリカルド・グアダルーペに聞く、新素材開発に示す時計哲学

FEATURES

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク オフショア」先進のマテリアルを駆使し、よりモダンで精悍なコレクションへ

FEATURES