創業時より、高い審美性を備えた時計を製作し続けているオーデマ ピゲ。その一方では、顧客に寄り添うポリシーを掲げてカスタマーサービスにも注力し、ユーザーの満足度を高めてきた。こうした“顧客第一主義”の理念を支えているのは、メゾンのクラフツマンシップと、自社のタイムピースに対する全スタッフの深い愛情。それは、カスタマーサービス部門に所属する技術者たちの言葉からも、しっかりと感じ取ることができる。

Photographs by Yu Mitamura
竹石祐三:文
Text by Yuzo Takeishi
ブランド愛が築くカスタマーサービスの真摯な姿勢
オーデマ ピゲが2026年に掲げたブランドテーマは“CRAFTING TIME(時を紡ぐ)”。それは、クラフツマンシップの限界に挑み続けるという、創業してから今日まで受け継がれてきた、職人技の精神に根差したものだ。しかも、このポリシーは時計製作の現場だけではなく、オーバーホールや修理など、アフターサービスを担当する技術者にもしっかりと根付いている。もちろんそれは、日本とて例外ではない。
日本のワークショップでは現在、フライングトゥールビヨンまでの複雑機構であれば国内でも対応できるようになった。また外装においても、傷を取り除くラップ研磨やバフを用いたポリッシュ仕上げ、ヘアライン仕上げが手作業で行われており、丁寧な職人技で時計本来の美しさを最大限再現する。アフターサービスにも長年継承されてきたクラフツマンシップが浸透していることがわかるだろう。

「まず、お預かりした時計を自分のものとして扱うことが大切だと考えています」と話すのは、日本のワークショップに勤めるひとりの時計師だ。冒頭で述べたように、オーデマ ピゲでは優れた製造技術によって審美性の高い時計を提供するのみならず、顧客に寄り添う姿勢を大切にすることで、カスタマーサービスの内容も充実させてきた。
2023年に導入された「AP カバレッジサービス」もそのひとつで、5年間の国際保証とは別に、全世界のオーデマ ピゲ ブティック、APハウス、または正規販売店で時計をご購入いただいたお客様を対象にした2年間の補完サービス(任意加入)。突発的に発生した故障や破損に対応することはもちろんのこと、とりわけ画期的なのが、盗難や強奪に遭ってしまった場合でも、要件を満たせば払い戻しや代替機が提供される保証内容だ。これほどの手厚いサービスを用意する理由は「不安要素を取り払うことで、ご購入いただいた時計を存分にご愛用いただきたい」というメゾンの思いがあるから。つまり、製品の完成度はもちろん、サービスの隅々にまでブランドが掲げる“顧客第一主義”の理念が徹底されているのである。

「もちろん、5年間の保証が終了した後も時計が止まってよいということではありません。その後、何十年も時計を繋いでいくという意識を持って、オーバーホールや修理に向き合っています」とは前出の時計師。また別の時計師は「知人から譲ってもらった時計の修理が、オーデマ ピゲに関わるきっかけという方も多くいらっしゃいます。こうしたお客さまにとっては、オーデマ ピゲの魅力を知っていただく入り口がアフターサービスになります。だからこそ、長く愛用していただけるような修理を心がけています」と続ける。

オーデマ ピゲのフライングトゥールビヨン搭載モデルは、2019年に「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」コレクションでデビュー。本新作は優美なシグネチャーパターンが施され、18Kホワイトゴールド製ケースとブラックセラミック製ミドルケースとのコンビネーションによって洗練された佇まいに。自動巻き(Cal.2950)。27石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KWG×ブラックセラミックケース(直径41mm、厚さ11.8mm)。30m防水。要価格問い合わせ。
また、コンプリケーションウォッチの修理を受け持つ時計師は、次のように説明する。「オーデマ ピゲの時計はムーブメントの仕上げが非常に丁寧なので、修理への取り組みにやりがいを感じさせてくれます。昨今は職人がひとつの部品のみを修理するケースも多くなりましたが、コンプリートウォッチメーカーでは修理工程の最初から最後までを、ひとりの時計師が責任を持って行います。これが、私たち時計職人にとって、大きな満足感をもたらしてくれるのです」。

さらに、ワークショップのマネジャーが「概して、上質な時計はすぐに直せてしまうので作業として満足するのが早いのですが、オーデマ ピゲの時計は全然飽きない。それは修理が難しいという意味であり、つまり私たちも成長し続けられるということ。そこに“満足度の高さ”があるのだと思います」と魅力を語れば、別の時計師からは「お客さまにとってオーデマ ピゲは憧れの存在だと思いますが、私個人にとっても時計のデザインはもちろん、歴史も好きなブランド。いちファンとして仕事をさせてもらっている感じがあります」といった声も。こうした、オーデマ ピゲの時計に対する技術者一人ひとりの強い思い入れが、アフターサービスにおける真摯な姿勢につながっているのだ。

搭載されるのは、新開発の自動巻きクロノグラフムーブメントCal.6401。インダイアルを対称性と視認性を重視したレイアウトに変更するほか、30分と12時間積算計の位置も入れ替え。さらにカレンダーの位置も4-5時の中間に配置するなど、これまで以上に均整の取れたデザインに仕上げている。自動巻き(Cal.6401)。44石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径38mm、厚さ11.1mm)。50m防水。594万円(税込み)。
顧客への想いによって設置されたレセプション
もちろん、顧客第一主義の理念が反映されているのは、技術者の手が介在するオーバーホールや修理といったものに限らず、さまざまなカスタマーサービスに確認できる。例えば、ユーザーにとっての重要なタッチポイントとなる、カスタマーサービスのレセプション。ここはオーデマ ピゲ ブティック 銀座の2階に、時計のメンテナンスを受け付ける場所として2018年に開設された。
他の国ではブティックで修理を受け付けるが、世界でも上位のマーケットシェアを誇る日本では、必然的に修理に持ち込まれる本数も多くなる。つまり、ブティックのスタッフがアフターサービスにも対応すると販売に集中できなくなることから、日本ではレセプションを設置したという。スタッフへの配慮が伺えるのはもちろんのこと、レセプション専任のスタッフを配置することで丁寧な対応が可能となり、ユーザーの満足度向上にもつながっているというわけだ。

レセプションの奥にはストラップサロンも併設。各コレクションの交換用ストラップが選べるほか、2025年12月よりCODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ コレクションについては、ストラップの素材や色に加え、ステッチや遊革のカスタマイズが行えるサービスもスタートした。現在、ストラップサロンが設置されているのは、銀座店のみだが、東京から離れた直営店舗でもストラップのカスタマイズが行えるよう、サンプルを持ち込んでオーダーを受け付ける取り組みも行なっている。これもまた、顧客のニーズを的確に捉えたサービスと言えよう。


ブランドと時計師の熱量で向上し続けるカスタマーサービス
これ以外にもオーデマ ピゲ ジャパンでは近年、「ウェブピックアップサービス」や「ウォッチメーカーレポート」といったサービスも開始。前者は遠方のユーザーが腕時計をカスタマーサービスセンターまで送付できる顧客サポート。時計の送付に必要な梱包キット一式が送られ、信頼性の高い宅配業者によって安全に送ることができる。一方の後者は、オーバーホールが完了した時計をユーザーに戻す際、修理内容の報告とともに時計師のアドバイスを添えるサービスだ。
「基本的に修理品は、時計をお預かりして、修理を終えたら請求書をお渡しして時計をお返しするだけのやりとりになってしまいます。ですが、中には修理内容に興味があるお客さまもいらっしゃいます。そこで、修理の内容、そしてウォッチメーカーからのアドバイス──使用されるときに気をつけていただきたい点などをレポートにしてお渡しするようにしました」

しかも、このウォッチメーカーレポートは修理前と修理後の外装の写真やムーブメントパーツの写真も掲載するなど、ユーザーが見て、納得感が得られる内容になっている。「こうした写真を載せると、修理に長い日数がかかってしまうことにもご納得いただけます。そういった意味でも、このレポートは必要なのです」と技術者が説明する通り、オーデマ ピゲのカスタマーサービスは至るところに、顧客に対する細やかな配慮が感じ取れる。
「時計を良くするためには、人間を大切にしなければいけないことを、何よりも理解しているのがオーデマ ピゲ。それは顧客だけではなく時計師に対しても同様で、私たちに対する信頼を強く感じます」と、時計師のひとりが説明する通り、オーデマ ピゲではあらゆる環境において技術者の声が反映されている。

実際、「現場で得た知見を本社にシェアできる体制が整っていて、時計師の意見をよく汲み上げてくれるので、私たちも色々と考えながら修理することが多い」といった声や、「ワークショップの施設自体が素晴らしく、作業スペースも十分に確保されています。また、常に新しい研修を受けられるので、この仕事で長くキャリアを積めば、さまざまな種類の時計を修理できるようになります。私たちは時間をかけて、可能な限り最善の方法で時計を修理できる。これは大きな強みだと思います」といったコメントを聞くことができた。
こうした声が次々と上がるのは、本社の手厚いサポートがあることはもちろん、何よりも時計師一人ひとりがオーデマ ピゲの時計に対して愛情を持っているから。「預かった時計を我が子のように扱って、むしろ巣立っていくのが寂しいような感情がある」とひとりが話せば、別の時計師は「キレイに直ってよかったと感情移入してしまうくらい、細部まで丁寧に仕上げている時計ばかりなので、修理している私たちも楽しいし、お客さまのためだと思って仕事ができる」とも。
卓越したクラフツマンシップによって製品のクォリティが向上しているのは、もはや明白。顧客はもちろん、スタッフも大切にするブランドの姿勢や、自社の時計に愛情を注ぐ時計師たちの人間力が合わさることによって、カスタマーサービスの質もまた、さらなる高みにいこうとしている。
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