2025年末にモリッツ・グロスマンから発表された「パーペチュアルカレンダー」。調整用のレバーを援用した瞬転式のカレンダー送り機構は、機構の簡便さと操作性を突き詰めたものだ。

モリッツ・グロスマンとしては珍しい、2トーンダイアルを備えたプラチナモデル。ランス型の針は、視認性を考慮してか、通常のブルースティール色に焼き上げられる。インダイアルとは別に、中央部を1段落としたダイアルは、立体感を際立たせる造形だ。手巻き(Cal.101.13)。Ptケース(直径41mm、厚さ13.9mm)。予価1980万円(税込み)。
Edited & Text by Hiroyuki Suzuki
[クロノス日本版 2026年3月号掲載記事]
操作性を突き詰めた新型永久カレンダー
ブランド設立17周年を飾る新作として、モリッツ・グロスマンが2025年末に発表した「パーペチュアルカレンダー」。2017年に発表された「デイト」と同様、ダイアル外周部にブラケット型マーカーの日付表示を配しつつ、同社初となる3インダイアルを設けたコンプリケーションだ。すでにインターネット上には画像が多く出回っているが、実機に触れてみると、想像以上の立体感に驚く。特に2トーンダイアルを採用したプラチナモデルではそれが顕著だ。

第2世代の手巻きムーブメントとなるグロスマン・ワインダー付きのベースムーブメント(Cal.100系)に、新規開発の永久カレンダーモジュールを重ねたモデル。付加機構を一体型とせず、モジュール構造を好むのも、2代目設計主任のイェルン・ハイゼらしい流儀だろう。手巻き(Cal.101.13)。37石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約42時間。
搭載される「Cal.101.13」は、外形的な特徴からデイト(=Cal.100.3)の発展型と思いきや、完全なる新設計モジュールだ。12時位置にムーンフェイズを置き、3時と9時は共に指針と小窓を併せた同軸表示となっている。3時の指針が月表示、小窓が閏年。9時の指針が曜日表時で、小窓が24時間表示のデイ&ナイト。永久カレンダー機構を構成する輪列は極めてシンプルだが、実際のカレンダー送りにはシフトレバー(送りと調整を兼ねる)を介することで、輪列全体を簡潔にまとめ上げている。古典的なカム&レバーほど複雑な印象はないものの、これもいわゆる “非連続型” に分類される機構であり、カレンダー送りの瞬間にのみレバーの補助を得ることで、瞬間的な振り落ちを最小限(最大でも15度程度)に留めている。シフトレバーが、ロレックスで言うところのカム&ヨーク、ETA式でのジャンパースプリングの役割を果たすため、永久カレンダーを構成する全表示が、デイトと同じ瞬転式となる。

2. センシングポイント
3. 月表示カム
4. 2年車
5. 月表示軸/閏年表示軸
6. 月表示切り替え車
7. スネイルカム付き31日車(日付車)
8. スイッチチップ
9. シフトレバー
10. 曜日表示軸/デイ&ナイト表示軸
11. ムーンフェイズ表示切り替え車
実際のカレンダー送りは、シフトレバーの下端(6時側)にあるスイッチチップを介して行われる。この噛み合いをコントロールしているのが、シフトレバー上端にあるセンシングポイントで、月表示カムへの落ち込み量で、日付車を送る距離が変わる。最小で1歯(=1日分)、最大で4歯だ。さらに閏年をカウントするために48カ月車を用いず、2年車(=24カ月車)と月表示カム、さらに閏年表示との間に、それぞれ増速比1対2の中間車を介することで、省パーツ設計を完成させている(つまり閏年の表示ディスクは4年に1周ではなく、8年で1周となる)。ムーブメント自体を頑丈に仕上げるのは、創業時からの伝統だが、設計段階でパーツ数を絞るという点は、2代目となる現開発主任のイェルン・ハイゼらしい配慮だろう。

こうした機構の簡便さは、実際の使い勝手にも反映されている。すべてのカレンダー表示に連動する大元のシフトレバーは、スネイルカム付きの日付車を介して駆動されるが(先端をスネイルカムに押さえつけているバネの補助で、カレンダー送り時の振り落ちを抑える)、日付表示以外の先端部分は分割されており、個別調整に対応させている。カレンダー調整をする際はまず、8時位置にあるコレクターで日付を合わせてから、2時位置で月、10時位置で曜日、10時半の位置でムーンフェイズを合わせる。一度調整してしまえば、後は日付を送るだけですべてのカレンダーが連動する。

時刻合わせ用の針回し機構と、カレンダーの調整機構が完全にセパレートされている点も、操作上のアドバンテージだろう。永久カレンダーの場合、深夜0時を跨ぐような逆戻しには注意を要するが(禁忌となる場合もある)、本機の場合はそれほど気を使うこともないだろう。
省パーツ化による頑丈さと、簡便な操作性を両立させた非連続型永久カレンダー。まったく派手さはないが、時計史を彩るひとつのマイルストーンに違いない。



