タグ・ホイヤーがウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2026で発表した新作をまとめて紹介する。すでにLVMH ウォッチ ウィークで注目作をリリースしていたが、さらに驚かされるモデルが隠されていた。カムもコラムホイールも持たない、新開発クロノグラフムーブメントCal.TH80-00を搭載した「タグ・ホイヤー モナコ エバーグラフ」である。

Text by Shin-ichi Sato
[2026年4月14日公開記事]
「タグ・ホイヤー モナコ エバーグラフ」
クロノグラフの歴史と深い関わりがあり、技術革新にも大きく貢献してきたタグ・ホイヤー。このクロノグラフを再解釈し、新たな構造を持つ「タグ・ホイヤー モナコ エバーグラフ」を発表した。搭載する新開発のCal.TH80-00は、コンプライアント クロノグラフなる機構を有している。

この機構は、これまでスタート、ストップ、リセットといった各機能にとって不可欠であるレバーやバネのほぼ全てを排除している点が最大の特徴である。これらの代わりに、タグ・ホイヤーはLIGAテクノロジーによる「双安定部品」を開発。Cal.TH80-00ではスタートとストップのためにひとつ、リセットのためにひとつの、計ふたつの双安定部品を搭載することで、従来同様の機能を実現した。この双安定部品により、ボタン操作時に素早く、歯切れよくスタートやストップ、リセットを行うことができることのほか、経年変化や誤差の発生を抑え、1万回の操作を行っても製造直後の操作感と高い精度を維持できるのだ。

Cal.TH80-00の開発の中核を担ったのが、ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエ社である。同社はこれまでにもCal.81-00とCal.TH81-01の製作に携わってきた。また、ムーブメントの外観は、これまでのタグ・ホイヤーラボが生み出してきたものを踏襲。香箱や輪列、テンプと脱進機といった機構を文字盤側に配する反転構造と、各機構を鑑賞しやすいオープンワークを採用する。また、自動巻きローターは、タグ・ホイヤーのアイコンである盾をかたどったものであり、その背景のプレートには、多くのモデルで取り入れられているチェッカーフラッグ仕上げが施される。

また、ムーブメントの正確な作動を司るヒゲゼンマイには、カーボン製の「TH-カーボンスプリング オシレーター」が使われている。このカーボン製のヒゲゼンマイにより、本作は優れた耐磁性能とCOSC(スイス公式クロノメーター検定協会)認定の精度、毎秒10振動のハイビート作動、そして約70時間のパワーリザーブを実現している。
ブルーとブラックのふたつのバリエーション
用意されるのはふたつのバリエーションで、いずれのモデルもモナコのアイコニックなスクエア型ケースを持ち、チタン製となる。一方はブラックDLCコーティングと、ブラックのファブリックストラップの組み合わせで、もう一方はチタンカラーにブルーのファブリックストラップの組み合わせだ。

自動巻き(Cal.TH80-00)。3万6000振動/時。パワーリザーブ約70時間。Tiケース(直径40mm)。100m防水。465万3000円(税込み)。

自動巻き(Cal.TH80-00)。3万6000振動/時。パワーリザーブ約70時間。Tiケース(直径40mm)。100m防水。465万3000円(税込み)。
「モナコ クロノグラフ」
タグ・ホイヤーは、新型ムーブメントの開発とともに「モナコ クロノグラフ」を刷新した。最大の特徴は、オリジナルモデルのアイコニックな9時側のリュウズと、3時と9時位置にカウンターを備えたバイコンパックスのレイアウトを備える点である。

モナコをはじめとしたクロノグラフモデルは、タグ・ホイヤーのアイコンとして長きにわたって人気を集めてきた。そんな同ブランドのクロノグラフモデルの大きな転換点となったのは、1969年のことである。各社から自動巻きクロノグラフムーブメントの量産が開始され、そのうちのひとつが、当時のホイヤーが複数の時計メーカーと提携して立ち上げた「プロジェクト99」による、Cal.11であった。このCal.11の開発が、モナコの発売へとつながっていったのであった。
Cal.11はベースムーブメントにモジュールを統合する構成であったため、9時位置にリュウズ、2時位置と4時位置にプッシャーを配するデザインとなった。モナコのオリジナルモデルも同様の操作系となり、スクエアケースと、それと呼応したスクエア型のカウンターが、モナコのアイコンとなっていった。
今般発表された最新世代のモナコ クロノグラフには、新開発のCal.TH20-11が搭載されている。これは、現在のタグ・ホイヤーの基幹ムーブメントのひとつと言えるCal.TH20-00をベースとしたものだ。特徴は、モナコのデザインコードである9時位置のリュウズをはじめとした操作系と、3時位置の30分積算計、9時位置のスモールセコンドの表示である。また、パワーリザーブは約80時間を備え、5年間の保証の対象となるなど、実用性や安心感の高い仕上がりである。

モナコ クロノグラフのデザインも、デザインコードを守りながら刷新されており、スクエア形状を際立たせるようにケースのエッジは強調され、サファイアクリスタル製の風防は正方形に近いフォルムへと進化した。ケースはグレード5のチタン製で、手首にフィットするように緩やかにカーブを描くフォルムとなっている。
今般のデビューに合わせて発表されたのは3つのバリエーションである。モナコの知名度を高めるきっかけとなった1971年の映画『栄光のル・マン』の中でスティーブ・マックイーンが着用したモデルを引き継ぐブルーのRef.CDW2181.FC8360と、ブリティッシュレーシンググリーンから着想を得たグリーンのRef.CDW2180.FC8360、ブラック文字盤に18Kローズゴールド製ベゼルやリュウズ、プッシュボタンを採用したRef.CDW2150.FC8360である。

自動巻き(Cal.TH20-11)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約80時間。Tiケース(直径39mm)。100m防水。134万7500円/134万7500円/188万6500円(いずれも税込み)。



