カシオの「エディフィス」の機械式モデルがひっそりとアップデートを遂げた。一見すると前モデルの「EFK-100」と、ほとんど同じように新作の「EFK-110」は見えるかもしれない。だがムーブメントを新しくし、さらにはケースサイズも直径38mm、厚さ11.8mmとより小さく進化した。エントリークラスの機械式ウォッチ激戦区へと切り込みをかけるカシオの次の一手を、『ウォッチタイム』ドイツ版編集長、ダニエラ・プッシュがひもといていこう。

[2026年4月22日掲載記事]
カシオ、エディフィスの新型機械式をドイツ版編集長が実機レビュー! その実力はいかに?
クォーツウォッチの王者であるカシオ。そのうちのひとつのブランドであるエディフィスから、カシオ初の機械式ウォッチである「EFK-100」が登場した。そして2026年4月に登場した「EFK-110」はそのモディファイ版だ。デビュー作が抱えていたいくつかの弱点を克服したモデルである。
ムーブメントは前モデルよりやや長いパワーリザーブを備えた日本製自動巻きムーブメント、ミヨタのCal.8215を採用。ケースの直径は38mmとよりスリムになった。これは明確な意図の上でのアップグレードと言えるのではないだろうか?
2025年にカシオがエディフィス・ブランドから初の機械式時計、EFK-100を発表した際、それはひとつの戦略的メッセージであった。何十年にもわたりクォーツとデジタル電子時計の代名詞であったブランドが、セイコー、シチズン、オリエントの領域に足を踏み入れたのである。このステップは勇敢であり、多くのファンが待ち望んでいたもので、その仕上がりも堅実であったが、批判がまったくなかったわけではない。

自動巻き(MIYOTA Cal.8215)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径38mm、厚さ11.8mm)。10気圧防水。4万9500円(税込み)
TMI(セイコーインスツル)製NH35Aをベースにした搭載ムーブメントのパワーリザーブは約40時間。機能的ではあったものの、39mm(カーボンモデルは40mm)のケース径と12.5mmの厚さは、スポーティー・エレガントなモデルとしてはやや大きすぎるサイズ感だったのではないだろうか? EFK-110はこの点に答えた。革命的ではないものの、的確なモディファイをカシオは成しとげたのだ。
ミヨタ Cal.8215
EFK-110の心臓部には、ミヨタ(シチズングループ)製の自動巻きムーブメント、Cal.8215が搭載されている。この価格帯において、世界で数多く採用され、実績のあるムーブメントのひとつだ。21石、毎時2万1600振動で駆動し、前モデルよりも約2時間長い約42時間のパワーリザーブを備えている。

本モデルに搭載されたCal.8215は片方向巻き上げを採用したものだ。つまり、ローターが一方向に回転した時のみ主ゼンマイが巻き上げられる仕組みだ。EFK-100の双方向ローターは、両方向の回転をエネルギー伝達に利用するため、理論上は手首の動きが少なくても効率的に巻き上げが行われる。ミヨタのこのアプローチは機械的にシンプルで製造コストも抑えられるため、この価格帯としては許容できる妥協点ではあるが、進歩とは言えない。
ねじ込み式のシースルーバックからは、ムーブメントの動きを鑑賞できる。Cal.8215の装飾は機能重視であり、過度な仕上げは施されていないが、これは市場のセグメントを考えれば妥当なところだ。
ケースとサイズ
直径38mm、厚さ11.8mm、金属製ブレスレットと組み合わせたときの実測値で重量141gだ。EFK-100と比較すると、EFK-110は明らかにコンパクトになり、薄型化されている。手首への収まりもそれに伴って向上し、野暮ったさが軽減された。シャツの袖口に収まるサイズ感を求めるユーザーが多いスポーティー・エレガントの分野において、これは大きなメリットだ。
重厚なステンレススティールケースは、サテン仕上げとポリッシュ仕上げが組み合わされており、この価格帯の標準レベルをクリアする丁寧な作りとなっている。リュウズは操作しやすく、時刻合わせ時の回転トルクも適切である。10気圧防水を備えており、日常使いはもちろん、水辺でのアクティビティにも十分対応可能だ。
ダイアルと視認性
カラーバリエーションは前モデルとほぼ同様の色味の、ホワイト、ブルー、ブラックの3色での展開となる。ダイアル表面はカーボン調のデザインを採用。光の当たり具合によって見え方が変化する表面パターンだが、構造的には本物のカーボンではない。そこに3本の針と、蓄光塗料が塗布されたバーインデックスが配されている。視認性は良好だ。

自動巻き(MIYOTA Cal.8215)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径38mm、厚さ11.8mm)。10気圧防水。4万9500円(税込み)
これを支えているのが両面無反射コーティングを施したサファイアクリスタル製風防であり、カシオは5万円弱という価格から期待される以上のスペックを提供している。日付窓は6時位置から3時位置へと変更された。これはムーブメントの変更に伴う構造上の理由によるものだが、ダイアルのレイアウトに顕著な影響を与えている。日付表示ディスクはEFK-100と同様に白色であるため、ブルーやブラックのダイアルを選ぶ際はこの点に留意したい。
装着感と操作性
フルステンレススティールの腕時計で141g(実測値)という重量は、適度な数値である。サテン仕上げとポリッシュ仕上げのコマを組み合わせたブレスレットの着け心地は良く、フォールディングバックルが腕を圧迫することもない。11.8mmに抑えられたケース厚は、時計がシャツの袖口にスムーズに収まる上で大きく貢献している。
5万円弱で日常使いでフルに活躍する相棒
税込みで4万9500円という価格設定により、EFK-110はセイコーのSNXモデル、オリエント「バンビーノ」コレクション、そしてティソのエントリー向け自動巻きモデルと直接競合することになる。

この価格帯においてミヨタのCal.8215は、信頼性が高く、メンテナンス性に優れ、交換部品も豊富に揃う、極めて適切なムーブメントだ。カシオはEFK-110を通じて、機械式時計への参入が単なる「一度きりの試み」ではないことを明確に示した。シリーズの拡充を見据え、ケース設計という重要な課題をしっかりとクリアしてきたのだ。
EFK-110は、論理的かつ必然的な進化であり、完全な再発明ではない。より小さく、より薄くなったケースは、装着感を劇的に向上させた。
初めての自動巻き時計を探している人や、日常使いの気取らない相棒に4万9500円を投資しようと考えている人にとって、EFK-110はクリーンなデザインと堅実な作りを兼ね備えた、有力な選択肢となるだろう。



