腕時計のレトロ復刻ブームが盛り上がる中、オリスが放った新作は別格の魅力を放っている。1966年製のオリジナルモデルが持つ、ドレッシーでラグが一体化した直径35mmケースやプレキシ製風防の質感を徹底して再現。ブランドの歴史を大きく動かした記念碑的モデルという「語れる背景」を持ちながらも、それを抜きにしても純粋に欲しくなるヴィンテージウォッチとして、私たちの所有欲を強く刺激する秀作だ。

[2026年7月1日掲載記事]
レトロ復刻の波は、まだ終わっていない
腕時計のレトロ復刻の波は、すでに頂点を迎えたのかもしれない。だが、まだ退潮しているわけではない。1960年代からそのままタイムワープしてきたような、ドレッシーな直径35mmの腕時計に、人々は今なお心を動かされるのだろうか。新しい「オリス スター エディション」ほど魅力的であれば、答えは「イエス」だろう。
ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2026で発表されたこの新作は、現代の腕時計ではなかなか見つけにくい、見る者を引きつけるヴィンテージのたたずまいを備えたものだ。同時に、オリスの歴史の一章に光を当てるという点でも、復刻するだけの理由を持つモデルである。

自動巻き(Cal.Oris 733)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約41時間。SSケース(直径35.0mm、厚さ11.1mm)。5気圧防水。36万3000円(税込み)。
どこかで見たようで、やはりオリスらしい
こうしたレトロな雰囲気の復刻腕時計を、どこかできっと見たことがあるだろう。おそらく、それはオリスのアーカイブモデルだけではない。「オリス スター エディション」のオリジナルが発表された同時代には、似た雰囲気を持つ腕時計がほかにも存在していた。数年前、タイメックスも「Q TIMEX」で同種のモデルを復刻している。
ただ、あのようなシンプルで手頃な仕立ては、むしろオリジナルが欲しい、という気持ちを強めただけだったのではないか? 少なくとも私はそうだった。オリス スター エディションは、まさにその役目を果たす時計である。率直に言って美しいそのルックスを、より洗練され、より堅牢なパッケージで実現しているのだ。

復刻に必要な「理由」
オリスは当然、今日こうしたスタイルへの需要があることを理解していたはずだ。ただし、クールなヴィンテージウォッチを数多く持つブランドであっても、復刻に値するには、たいて、いもうひとつの要素が必要になる。それが「理由」だ。
本作のベースとなったモデルは、1966年に登場した。そしてそれは、オリスでピンレバー式脱進機ではなく、初めてレバー式脱進機を搭載した腕時計だった。それはどれほど大きな出来事だったのか? 一見すると、単なる技術的な特徴のようにも聞こえる。時計技術の発展に昔からつきものだった、単なる「ひとつの仕様」に過ぎないようにも思える。
オリスを縛ったスイス時計法
しかしその重要性は、精度技術の漸進的な進化というよりも、ブランドと業界にとっての意味にあった。オリスはほかの企業と同じく、1930年代のスイスの法律によって、新技術の導入を制限されていた。
10年にわたるロビー活動の末、同社はついにその法律を覆すことに成功する。そしてスターに、自社製のレバー式脱進機を備えた自動巻きムーブメント、Cal.645を搭載したのだ。この出来事は、オリスが業界内でより高い階層へと上がる助けとなった。そして幸運なことに、その節目を示す腕時計は、非常に美しい外観を持っていたのである。
現代版はCal.733を搭載
現代のオリス スター エディションにも、レバー式脱進機が入っている。ただし、それはセリタのCal.SW200をベースとする自動巻きムーブメントで、オリスではCal.733と呼ばれるものだ。
オリスのこうしたムーブメントには、印象的な赤いローターが備わることが多い。しかしこのモデルでは、ケースバックがヴィンテージらしくソリッドバックのままであるため、それを見ることはできない。本作は、ヴィンテージの特徴を保つという点で、多くの現代的な復刻モデルよりもさらに徹底した特徴がみられる。

直径35mmケースは小さいのか、ちょうどいいのか
既存のオリスのどのコレクションにも属さないケース形状とデザインを持つこのモデルは、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブにおいて新鮮で、うれしい驚きでもある。
実機を見る際には、サイズ感などの要素にしてほしい。直径35mm、縦方向の長さ41.5mm、厚さ11.1mmという寸法は、近年の嗜好にぴたりとはまる可能性がある。一方で、装着すると小さく感じられる可能性も想像できるだろう。判断するには、実際に腕に載せる必要がある。もし、試着できた際には、その写真もお届けするつもりだ。
あえてのプレキシ製風防
告白すると、スペック表の「風防:プレキシ」という記載にたどり着いたとき、少しだけ落胆した。私は古臭い考えの持ち主なのかもしれない。この素材選択は、かつてはコスト削減と結びつけられるものだった。
だが現在では、もっと手頃な価格帯の腕時計でさえサファイアクリスタルを備えることができる。しかも、高く盛り上がったドーム型形状などによって、昔のプラスチック風防の雰囲気を再現するさえも可能な時代だ。
したがって、この選択は意図的なものと見るべきだ。とりわけオリスのようなブランドであればなおさらだ。これは、より本物らしいヴィンテージの特徴として採用されたものであり、実際に一部のコレクターが好む要素としても知られている。
価格は36万3000円(税込み)
個人的には、最も良い点は、このモデルがオリスのベーシックなエントリーポイントに位置付けられていることだ。日本での価格は36万3000円(税込み)である。



